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真冬がいなくなって、屋上に絵里は一人ぼっちになる。
さっきまで真冬がいた、今は空っぽになった空間を見つめて、それから、さっき見た、柊木真冬の、ずっと絵里が憧れていた背中を思い出して、絵里は思う。
……柊木真冬くん。結局私はこの三年間、ううん、中学のころを合わせれば四年と半年くらいの時間。ずっとあなたに本当のことを言えないままに、学校生活を過ごしてきました。
私はあなたにずっと嘘をついてきました。
でも、今日は本当のことを言おうと思いました。あなたのことが好きだって。早乙女芽衣と同じくらい、芽衣に負けないくらい、私も、あなたのことが好きだって、あなたに伝えようと思いました。
……でも、やっぱりなにも言えませんでした。
沈黙、が私の出した答えでした。
私はあなたのことを、過去の私と一緒に忘れようと思います。
これから私は、新しい私になって、新しい恋をして、まっすぐな道を、歩いていこうと思います。
そんな私のことを、真冬くん。
……仲の良い友達として、応援してくださいね。
山吹絵里は用意していた真冬への恋文を取り出すと、それをびりびりに破いて、冬の風の中にそっと、新しい年のために種を蒔くように自分の手から解き放った。
「ばいばい」
透明な青色の、透き通るように綺麗で清潔な冬の空を見上げて、絵里はつぶやく。
それから山吹絵里は学校の屋上の上にうずくまり、たった一人で、号泣した。
山吹 終わり
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