Page50:カチコミ騒乱
バミューダシティの教会に人は少ない。
基本的に業務のほぼ全てをガミジン司祭がやっているが、不思議とそれを疑問に思う者はいなかった。
当然だろう。ガミジンが仕込んだ幻覚魔法で、皆認識をかき乱されているのだ。
御守りの頒布を終え、今日もガミジンは人気のない教会の中へと帰っていく。
「ガミジンおじ様も阿漕だよね〜。あんな御守りで大儲けしちゃうんだから」
「人は嘘をついても金は嘘をつかんからな。それよりパイモン、お前はまだ居たのか」
「そろそろ帰るもーん。でもその前におじ様とお話ししようかと思って」
教会の椅子に座って足をブラつかせるパイモン。
気まぐれな子猫のようにガミジンに問いかけた。
「おじ様ってさぁ、
「質問の意図が読めないな」
「言葉通りだよ。おじ様は何を欲してるのかなーって」
「……大したものではない、自分の幸せのためだ」
ガミジンは狂喜に顔を歪ませて語り始める。
「美味い飯、良い身体の女、使いきれん程の金と権力。陛下についていけば、その全てが手に入る。その為なら私は悪魔になる事も躊躇わんかったよ」
夢の光景を想像し興奮したのか、微かに前屈みになるガミジン。
普通の若い女なら嫌悪の表情を一つでもするだろうが、パイモンはニコニコと変わらない笑みを浮かべていた。
「流石は司祭様、欲深くってステキですね〜」
「で、も」と言ってパイモンは立ち上がり、ガミジンを見上げる。
「私これでも色んな人を食べて来たからわかるんですけど〜、おじ様みたいなタイプの人って最後の最後でポカやらかしちゃうんですよ」
「……私がヘマをするとでも?」
「警告ですよ〜け・い・こ・く。変なところでしくじる前に、さっさと船を完成させちゃった方がいいよ〜って言う、パイモンちゃんの優しさ」
ケラケラ笑いながら言い放つパイモンに、不快感を隠せないガミジン。
自分を侮られた事が癪に障りすぎたのだ。
「で、おじ様は一人でやれそう?」
「侮るなパイモン。私とてゲーティアの悪魔、任務は完遂して陛下の元に戻って見せるわ」
「それは良いお返事。じゃあパイモンちゃんは裏に戻るね〜」
そう言うとパイモンはダークドライバーを一振りし、空間に裂け目を作り上げた。ヒラヒラと手を振りながら「お仕事サボらないでね〜」と言って、彼女は裂け目の中へと姿を消していった。
残されたガミジンは、ただただ忌々しげに虚空を睨みつける。
「小娘が私を侮りおって……見ていろ、この御守りと牢獄を使えば義体なんぞ……」
「その御守りについて色々聞きたいんだけど良いよな? 生臭坊主」
乱暴に扉を開ける音と突然の声に、慌てて振り返るガミジン。
教会の入り口に立っていたのは赤髪の少年とその一行。チーム:レッドフレアの面々だった。
特に中央で仁王立ちするレイは、怒りに満ちた様子でガミジンを睨みつけている。
「な、何の御用でしょうか?」
「しらばっくれるな。アンタが街の人達に売りつけてた御守りについてだ」
「教会の御守りを売る事がいつから違法になったのかな……」
「別に、合法だぞ……中身のブツに目をつぶればの話だけどな」
中身の話をされた瞬間、ガミジンの顔から余裕が消し飛んだ。
だが構うこと無く追及は続く。
レイは先程ルドルフから回収した巾着袋の破片と、中に入っていた小瓶の破片を突きつけた。
「なるほどな、考えたもんだ。気化しやすいように細工した魔僕呪を隠す為に、巾着袋の内側に臭いを消す術式を仕込んでおいたとはな」
「そして司祭という立場を利用すれば、御守りの中に入れた魔僕呪をばら蒔く事も容易……本当に、とんでもない聖職者ですわ」
「マリー、アレはもう聖職者とは呼べない」
「ではただの卑劣勘ですわね」
アリスの一言で容赦ない毒を吐くマリー。
だが誰も咎めるつもりは無い。
「わ、私がそれを――」
「言っとくけど、無関係だなんて言い訳が通じると思うなよ。昨日ルドルフ爺さんにコレ渡してるところを直接見てた奴もいるんだからな」
「更に付け加えると、たとえ知らなかったとしても魔僕呪の頒布はれっきとした違法行為。どの道僕たちはあなたを捕まえて憲兵に引き渡す必要がある」
「ま、そういう事だ……」
レイは腰に携えていたコンパスブラスターを引き抜き、切っ先を向ける。
「幽霊船と関係があろうが無かろうが、今からアンタを捕まえる。できれば大人しくしてて欲しいんだけど、どうする?」
レイの問いかけに、ガミジンはただ下を向いてブツブツと呟き続ける。
気味の悪い光景であった。抵抗される前にさっさと捕まえようと、レイが近づいたその時だった。
「シャァァァァ!!!」
「っ!?」
何かが大口を開けて飛んできたので、レイは咄嗟にコンパスブラスターで受け止めた。
ガキンと金属と牙がぶつかる音が教会に鳴り響く。
「レイ君!」
「危っねー、危うく噛まれるかと思った」
「どいつも……こいつも……」
レイがコンパスブラスターを振ると、噛みついて来た蛇型魔獣、アナンタはスルスルとガミジンに近寄っていった。
「おい、それアンタの契約魔獣かよ!」
「あの、抵抗はやめて貰えると嬉しいんですけ――」
「どいつもこいつも、私を侮りおってぇぇぇぇぇ!!!」
破裂したように怒声を上げるガミジンに、一同は身構える。
「もうよい、どの道中身を知られたのだ。貴様ら全員生きては帰さん!」
そう叫ぶとガミジンは、懐から一本の黒い円柱状の魔武具を取り出した。
「なッ、それダークドライバー」
「えっ、てことは……あの司祭が蛇悪魔の正体っスか!?」
『どうやらそうらしいな』
「来い、アナンタ!」
ガミジンがダークドライバーを掲げて叫ぶと、アナンタの身体は光の粒子へと変化した。肉体と霊体を膨大な
「トランス・モーフィング!」
ダークドライバーから黒炎が放たれる。
邪悪な炎に包まれたガミジンは、その身体を瞬時に異形のものへと変質させていった。
炎が消え、中から悪魔が姿を見せる。
それはレイ達がよく知る異形。バミューダに幽霊を徘徊させた蛇の悪魔であった。
「うわぁ、マジっスか……」
「何が聖職者だよ、ただのバケモンじゃねーか」
「よくも私の使命を邪魔しおってぇぇぇ! 許さん、皆殺しにしてくれる!」
「なんて言ってるけど、どうするリーダー?」
放たれる殺気に怯むことなく、ジャックがフレイアに聞く。
だが全員、出てくる答えなど分かりきっていた。
「決まってるでしょ。あの坊主が蛇野郎の正体、で蛇野郎は幽霊船事件の犯人。だったら――」
「全力でアイツをぶっ飛ばす。だろ?」
「ちょッ、レイ! アタシの台詞取らないで」
「ヌォォォォォォォォォ!!!」
咆哮を上げて、黒炎を撃ち込んでくるガミジン。
レイ達は咄嗟に横に逸れて、それを回避する。
「まぁなんだ。諸々の話はアイツぶっ飛ばしてからにしようぜ」
「それもそうね……それじゃあ皆、いくよ!」
「「「応ッッッ!!!」」」
「Code:レッド!」「ブルー!」「イエロー!」「ブラック!」「ホワイト!」「シルバー!」「ミント」
「「「一斉解放!!!」」」
Code解放を宣言して、一斉に獣魂栞を魔本に挿入する。
「「「クロス・モーフィング!!!」」」
魔装、一斉変身。
七色の魔力が解き放たれ、次々にレイ達の魔装へと形作られていく。
「どりゃァァァァァァァァァ!!!」
右手の籠手に火炎を溜めて、正面から殴り掛かるフレイア。
だが飛んで火にいる夏の虫と言わんばかりに、ガミジンはダークドライバーの先端を向ける……しかし。
――弾ッッッ!――
黒炎を放つ直前、フレイアの背後から変則的な軌道を描いて複数の魔力弾が飛来。
ダークドライバーを握ったガミジンの手を何度も攻撃した。
「ヌゥゥゥ!」
止む終えず後退してフレイアの攻撃を躱すガミジン。
見渡してみれば、魔武具の銃口を向けたレイとマリーが立っていた。
「バーカ、これで三回目だぜ。いい加減対策も練れてるっての」
「その黒炎は厄介極まりないですからね。使わせるわけにはいきませんわ」
「小癪なぁ……」
「勿論だけど」
「それだけで終わりじゃないっス!」
上からの声に驚いたガミジンが顔を上げると、魔法発動の準備を終えたジャックとライラが構えていた。
「グレイプニール!」
「雷手裏剣!」
ジャックが放つのは無数の鉄鎖。それの隙間を埋めるように、ライラが雷の手裏剣を投擲する。
猛スピードで地上へと降り注ぐ攻撃。だがガミジンは臆する事なく、自身の巨大な尾を振るって攻撃を弾き返した。それでもついた傷は鱗に少しのみ。
僅かにでも傷をつけられた事がプライドに障ったのか、ガミジンは強くこちらを睨みつける。
「よくも私の身体に傷をォ!」
「気になるか? じゃあ気にならなくなるくらいズタズタにしてやる」
そう言うとレイはコンパスブラスターを変形させた。
「
武闘王波で強化された身体を使って、ガミジンに斬りかかる。
ガミジンはダークドライバーから黒炎を放って抵抗しようとするも、マリーの銃撃、ジャックの鎖、ライラの雷に妨害されてしまう。
その間隙を突くようにフレイアの炎拳、レイの斬撃が繰り出される。
「ヌゥゥ! これしきの事ォォォ!」
尻尾を大きく薙ぎ払ってレイ達から距離を取るガミジン。
だがそれだけ大きな隙ができれば、後ろに控えていた彼女も派手に動けるというもの。
「そーれっ!」
オリーブの振り下ろした大槌を受け止めたガミジン。
しかし瞬間、ドゴォォンという轟音と共に足元が十数センチ陥没してしまった。
「グゥッ、なんだこの重さは」
現在十トン近くにまで重さを変えているイレイザーパウンドの一撃。
流石のガミジンも少し怯んだ。が、腕を大きく振るい何とかオリーブを跳ね返す。
その時気が付いた。レイ達の姿が見えなくなっている事に。
辺りを見回して混乱するガミジン。
「どこだ、童共はどこにいる!?」
「「正面だよ!」」
瞬間、レイとフレイアは同時にガミジンに斬りかかった。
防御態勢をとれずモロに受けてしまうガミジン。
「グゥァァ!? 何故だ、何故気づけなかった!?」
「目には目をってやつよ」
「幻覚使うバケモンには、幻覚魔法のプロだ。なーアリス」
「コンフュージョン・カーテン。教会全体に幻覚魔法の霧を撒いた」
よく見れば教会内部に薄っすらとミントグリーンの霧が舞っている。
戦闘開始と同時にアリスが撒いておいたのだ。これの効能によって認識が阻害されていたと気が付いたガミジンは、ますます怒りを増大させていった。
「ならば……これでどうだァァァァ!!!」
どこからかカンテラを取り出し、絶叫を上げながらダークドライバーから大量の黒煙を吐き出させるガミジン。
瞬く間に教会内部は煙に包まれ、日光さえ入らない暗闇と化してしまった。
「何だこれ、前が見えねぇ」
『日光の遮断。即ち疑似的な夜を作り出したのだろう』
「疑似的な夜って、嫌な予感……」
心の発する警告に従って、レイは周囲の気配を探る。
武闘王波で強化された感覚神経が、迫り来る四つの気配を感知した。
「そこ!」
魔力刃を展開させたコンパスブラスターで振り払う。
四つ分、何かを切り裂いた感覚はつかめた。
レイは武闘王波で視力を強化し、可能な限り黒煙の中を視認する。
見えて来たのは大量の幽霊と応戦する仲間達。
「幽霊出す為に夜を作るなんてそんなのアリ!?」
文句を叫びつつ剣を振るフレイア。
だがその背後に大鎌を構えた幽霊が近づいてくる。
「まずは貴様だ赤いの!」
「うわぁぁぁ……って思うじゃん」
ガミジンの命令で大鎌を振り下ろす幽霊。
このまま魂を狩りとってしまおうとする……が。
ガキンッという衝突音を鳴らして、フレイアの魔装は大鎌を防いでしまった。
「何だと!?」
「残念だけど、レイにグリモリーダーをチューニングして貰ったのよ!」
籠手から火炎放射し、襲い掛かる幽霊を焼き払うフレイア。
昨晩の戦闘で幽霊の原理を理解したレイは、全員のグリモリーダーをチューニングし、魔装に霊体攻撃への耐性を持たせたのだ(代わりに物理防御は少し落ちたが)。
雷鳴が響き、水の牙が飛ぶ。鉄鎖と大槌が幽霊の身体を食い破り、幻覚の霧がその動きを止める。
他のメンバーも攻撃を悉く防ぎつつ、次々に幽霊を撃破していった。
撃破された端から補給する様に、ガミジンは手にしたカンテラから幽霊を召喚する。
だがその表情に余裕はない。幽霊の大鎌による攻撃を防がれてしまっては、負けはしなくとも勝つ事もできない。かと言ってこのまま体力勝負に持ち込むのはプライドが許さなかった。
ガミジンは懐から一つの小樽を取り出す。
陛下からの賜り物という触れ込みでフルカスから渡された樽だ。
霊体攻撃が効かないなら物理攻撃で追い込むしかない。しかしこれを有効活用するにはガミジン自身も相応のリソースを割く必要がある。
自身のプライドとぶつかり合い、ギリギリまで葛藤する。
「已むを得ぬかッ……」
苦々しい表所を浮かべ、ガミジンは黒煙の噴出を途切れさせる。
そして間髪入れずに小樽の蓋を空け、その中身を床に落とした。
床に落ちた粘液は鈍色に染まり、コポコポと音を立て形を形成していく。
「「ボッツ、ボッツ、ボッツ」」
「ちょ、なんでボーツがいるんスか!?」
「俺に聞くな!」
突然召喚された灰色の人型、ボーツの大群に驚くレイ達。
だが事態はそれで終わらなかった。
黒煙が消え、日光が教会に入り、消えかかっていた幽霊達。
ガミジンの号令で、幽霊達は召喚されたボーツに次々と憑依していった。
「やれ!」
ガミジンの命令を受けて、ボーツの大群は一斉にレイ達に襲いかかる。
鎌や槍の形状をとった腕が容赦なく振り下ろされていく。
「きゃっ!」
「マリーちゃん、大丈夫!?」
「気をつけろよ、霊体攻撃に強くなった代わりに物理防御は落ちてるんだからな」
攻撃をコンパスブラスターで受け流しつつ、レイは全員に忠告する。
煙が晴れたお陰で視界も元に戻った。レイは応戦をしながら、ボーツとガミジンを観察していた。
「(成る程な。普通は完全操作できないボーツでも、操作可能な幽霊を取り憑かせたら支配できるって寸法か)」
敵ながらその発想力には素直に関心するレイ。だが今はそれどころでは無い。
息の合った連携で攻撃を繰り出してくるボーツ達。何時ぞやの強化ボーツに勝るとも劣らない厄介さだ。
「これは中々ッ、面倒だねッ!」
「ねーレイ! もう面倒くさいからまとめて一掃しちゃダメー!?」
「……いいかもな」
まさかの無茶振りへの了承に驚くジャックとフレイア。
だが実際問題、チマチマと倒していては切りがない状態でもあった。
「街への被害は最小限にしたかったけど、流石にこの状況じゃあ無理だな」
レイはコンパスブラスターに獣魂栞を挿入する。
「多少教会ぶっ壊してでも、ボーツを一掃する!」
「じゃあレイが言い出しっぺって事で、マリー!」
「レイさんが責任を負ってくれるのでしたら、遠慮なくいかせて頂きますわ」
少し早まった事を言ったかもしれないと、レイは仮面も下で汗を流す。
そうとは知らずにフレイアとマリーは手持ちの魔武具に獣魂栞を挿入した。
「「「インクチャージ!」」」
魔力が魔武具に充填され、各々の攻撃エネルギーへと変換されていく。
三人は問答無用で襲いかかろうとするボーツをギリギリまで引きつける。
他のメンバーはボーツが三人の射程圏内に入るように、サポート攻撃を繰り出していく。
心静かに、待って、待って……今だ。
「
「バイオレント・プロミネンス!」
「シュトゥルーム・ゲヴリュール!」
巨大魔力刃、爆炎の刃、そして螺旋水流の超砲撃。
三人の必殺技が容赦なくボーツ達に襲いかかる。
射程圏内にいたボーツは「ボッ」と短い断末魔を上げて絶命。その向こうにいたガミジンは咄嗟に防御態勢をとった。
そして戦場と化している教会は三人の必殺技の余波で壁という壁にヒビが入り、硝子は砕け散り、天井は完全に吹き飛んでしまった。
砂煙が視界を悪くする。
ボーツの気配は完全になく、先程までガミジンがいた場所には瓦礫の山ができていた。
「やったんでしょうか?」
オリーブが心配そうな声を出す。
あれだけの攻撃を撃ち込んだのだから、決着もついていて欲しい所ではあるが。
砂煙が薄まるのと同時に、外から人の声が聞こえてくる。
先の爆音で集まって来た野次馬達だ。
どうやらアリスが事前に仕込んでおいた人払いの魔法まで吹き飛ばしてしまったらしい。
「不味いね、結構集まって来てるよ」
「まだまだ危ないんだけどな。ジャック、アリスと一緒に人払いしてきてくれ」
レイの指示で二人は野次馬の方へと向かう。
集まった野次馬をよく見れば、見覚えのある小さなシルエットも居た。
金髪の三つ編み、メアリーだ。
危ない所には行くなと後で小言を言ってやろうと、レイが心の中で決めたその時だった。
ガラガラと瓦礫の山が崩れ、中からガミジンが飛び出て来た。
「終わらせんぞ、こんな場面で終わらせんぞ!」
突然姿を現した蛇の異形に、野次馬達は悲鳴を上げて逃げ始める。
それと同時に、再び地面からボーツの大群が召喚され始めた。
「ジャック、マリー、アリスは民間人を避難させて! 残りはアタシと一緒にボーツを倒す!」
「「「了解!」」」
フレイアの指示で動き始める面々。
見境なく攻撃を始めるボーツが届かないように、レイ達は魔武具を構えて立ち向かう。
案の定ボーツは先程と同じ幽霊憑依型。連携の取れた攻撃に苦戦、防戦一方になってしまう。
大規模出力の技は余波で民間人まで巻き込みかねないので使えない。やむ無くレイ達は出力を抑えた技で戦闘を行った。
「ブレイズ・ファング!」
「
フレイアの炎の牙が、レイの魔力弾がボーツの身体を貫く。
だがまだボーツの数は多い。
「ふん、貴様らはソレと戯れていろ」
レイ達がボーツの相手をしている隙に、ガミジンはその場を後にしようとする。
「また逃げられるっス」
「そう何度も逃がすか!」
「っ!? レイ君後ろ!」
オリーブの叫びで振り向いてみると、一体のボーツがレイの頭に向けて大鎌の手を振り下ろそうとしていた。
この距離と速度では回避が間に合わない。
レイが覚悟をした次の瞬間。
「やめてっ!」
ピタリとボーツの腕が止まった。
眼前で停止している大鎌の先に冷や汗を流しつつ、レイは声の主の方へと視線を寄越す。怯えた表情でこちらを見るメアリーの姿があった。
驚きつつも、眼の前のボーツを斬り伏せて撃破するレイ。
その一方で、ガミジンは数秒呆然となった後、みるみるその顔に狂喜を浮かべていった。
「そうか……あの小娘が……」
宝物を見つけた子供の様に歓喜を隠せないガミジン。
だが今は間が悪い。
ガミジンはダークドライバーを一振りし、空間に裂け目を作った。
「覚えておれ、次は必ず殺してやる」
「待ちやがれ!」
空間の裂け目に姿を消すガミジン。
だがレイが追いつくよりも早く、裂け目は閉じてしまった。
「クソっ、逃げられたか」
全員静止状態だったので、ボーツの残党もすぐに壊滅。
民間人の負傷者は出なかったが、真犯人には逃げられてしまった。
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