将樹の告白(1)


 飛行機の窓から夏の沖縄の空が見えた。

 

 シェードを下ろし、來夢はシートに体を預けると目を閉じる。


 どうやって自然に将樹に触れるか。


 できれば将樹に気づかれないようにそっと。


 東京に着くまでそのことばかりずっと考えた。





 初めて行く将樹のマンションは駅から歩いて5分ほどのところにあった。


 疲れているから外ではなく将樹の家でゆっくり食事がしたいと言うと、将樹は喜んで來夢の申し出を受け入れた。


「來夢、大丈夫だったか?」


玄関の扉を開けるなり将樹は來夢を抱きしめた。


「沖縄に1人残してきてしまって本当にごめん、心配だった」


 将樹はまっすぐに來夢を見つめた。


 その目に一点の曇りもない。


 ずっとこんな目をして将樹は來夢を見ていた。


 出会った最初の時からずっと。


 将樹の家は生活感のないモデルルームみたいな部屋で、広いリビングには1人暮らしには大きすぎるテーブルが置かれていた。


「なんか用意しておこうと思ったんだけどさ、俺もさっき帰ってきたばかりで」


「大丈夫だよ、わたしがなんか作ろうか」


 來夢はキッチンを見渡した。


「え、それは悪いよ、なんか頼もう」


 ナイフスタンドに刺さった包丁に來夢は手を伸ばしかけ、その手を将樹に掴まれる。


「中華、イタリアン、タイ、インド料理とかもあるよ」


「じゃあ、タイがいい」


 電話でオーダーする将樹の背中を來夢は後ろから抱きしめた。


 厚い胸板にゆっくり撫でるように指を這わせる。


「はい、じゃあそれでお願いします」


 将樹は電話を切るなり身を反転させた。


 そのまま來夢の首筋に唇を這わせる。


「どしたの今日は」


 すでにうわずった熱い息が來夢の首筋にかかる。


 将樹の中のスイッチが鳴ったのが分かった。


 そのまま激しく抱擁されながら暗い部屋に引き込まれ押し倒されたところはベッドの上だった。

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