來夢の決意(6)


 将樹と別れたあと來夢はひとりカフェに残って人々を観察した。

 

  犯人を探すといってもどうやって探すか。


 たくさんの人間、特に男性に触れるにはどうしたらいいか。


 果たして犯人はこの街にまだいるのだろうか?


 もともとこの街の人間ではなくたまたまあの夜ここにいただけだったらどうする?


 日本中の男たちに触れて回るのは無理だ。


 男について分かっていることはほとんどない。


 でも待てよ、雪也のポケットに入れられていたけばけばしい化粧を施した少女たちの写真。


 あれは犯人のものに間違いない。


 とするとその路線で探せばそんなに無謀なことではないのではないだろうか?


 ああ、警察が協力してくれれば、あの写真の出元を調べれば犯人を見つけることはそんなに難しいことではないかもしれないのに。


 來夢は口惜しかった。


 でもそんなことをいつまでも思っていても仕方がない、とにかく今自分ができることを考えるのだ。


 來夢は自分の両手を見つめた。


 わたしにはこの手がある。


 この手は、やはり真実だけを語っている。


 雪也。


 來夢は祈るように胸の前で指を絡ませた。


 どうかわたしを導いて。


 あなたを殺した男を必ず見つけ出すから。




 まず來夢が最初に始めたことは少女趣味の男たちが集まる街でのビラ配りのバイトだった。


 仕事が休みの土日をまるまる返上してビラを配った。


 ビラはもちろん男性向けの内容のものだ。


 絶対に知っている人間に会いたくないような格好をさせられることもあった。


 ビラを手渡す時わざと相手の手に触れた。


 中には向こうから触ってくる人もいた。


 こんなに1度に多くの人に触れたのは初めてだった。


 それも不特定多数の男性の。


 街の性質もあるのかも知れないが、女の來夢が目を背けたくなるような映像をたくさん見せられた。


 男性不信になりそうだった。

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