來夢の手(4)
最初のうちは触れる相手の強い念のようなものが見えていたが、——特に不意にまたは強制的に見せられる時の場合——だんだん見ることに集中すれば來夢が見たいものが見れるようにもなってきた。
それはまるで相手の記憶から來夢の知りたい情報を探し出すような行為で、最初は面白がっていろんな人に触れていたが、すぐに止めてしまった。
人の心をのぞいて楽しいことなど何もなかった。
人間の表と裏の感情に恐怖を感じたがそれが止めた理由ではなかった。
底なしの湖のような哀しみを抱えながら微笑んでいる人に触れた時來夢は自分のやっていることを心底恥じた。
誰も來夢がそんなことをしていると知らなくとも、來夢自身が自分を許せなかった。
世界中で自分が1番最低な人間に思えた。
それから來夢は手袋をはめるようになった。
不意に他人の感情を見せられたくないのもあったが、自分への戒めでもあった。
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