來夢の手(2)
來夢は日記を閉じると机の引き出しに閉まった。
新しく買った手袋がまだ紙袋に入ったままなのを思い出し、クローゼットの中からマネキンの手を取り出す。
菜の花色の手袋をそれにかぶせると雪也に買ってもらったレースの手袋の横に並べた。
しばらくゆらゆら椅子——ロッキングチェアのことを來夢はこう呼ぶ——に座って手袋たちを眺める。
全部で20対はあるだろうか、手袋は実際に使うだけではなくときどきこうして眺めて楽しむ。
別に1人で家にいるときは手袋をする必要もないのだが、いつからか手袋をしていないとまるで下着をつけていないかのようにすかすかで落ち着かない体になってしまった。
來夢は人に触れると映像のようなものが見える。
手の平で触れたとき限定の感覚で、見えた後はしばらく手の平が痺れる。
映像は触れた人の過去だったり感情だったりさまざまで、意識を集中させないと見えない時もあれば不意にまたは強制的に映像を見せられることもある。
映像が見えるようになったのは20歳を過ぎてからだった。
こういう特殊能力は子ども頃の方が強くて大人になるにつれだんだんなくなることが多いと聞くが來夢の場合は違った。
來夢の母方の先祖にユタがいたというからもしかしたらその血筋かも知れない。
おかげでというか、來夢は普通の子ども時代を送ることができ明るくまっすぐに成長した。
さすがにその能力が現れ出した当初は混乱し悩みもしたが、本来の明るい性格も手伝って引き籠ることもなく普通に生活を送っている。
それでも1番最初にその映像を見た時のことは今でもはっきりと覚えていて、ゆらゆら椅子に座って手袋を眺めている時や夜中なか寝つけずにいる時などによくその時のことを思い出す。
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