にじゅうはっ粒め。

「大人に贈りたいクリスマスにまつわるお話」という、企画に参加したいと思ったが、逆算して間に合わない。

 二十五日後締め切りなのだ。

 いまから案を練ってたのでは完結できまい。

 諦めるしかない。


 はっきりした性格の妹がいるのだが、この妹の息子たちを面倒みるために午後を妹宅ですごした。

 すごいのよ。

 一番下の子がね、テーブルの上にちゃぶ台を乗せたいっていうの。

 もちろん二歳児だから、言葉は全て「あ! あ、あ!!」なんだけども。

 テーブルの上に乗せたくてのせたくて、ちゃぶ台をお尻で押し上げようとして、なんかの拍子に足の上にちゃぶ台の縁をぶっつけて。

 ちゃぶ台はひっくり返ってるんだけど、なにがあったのか、とっさにはわからないわたし。

 泣いているから、足の指を手で押さえて、さすってあげる。

 冷凍庫の保冷剤をティッシュにつつんで押し当ててあげる。

 骨折してたら大変だ!

 思っていると、やはり彼は指差して「あ、あ!! あ」と……。

 えー? 本当に乗っける気なの!? どうして!?!

 わけは乗せて、見たらわかった。

 これは彼に目線をあわせるとわかった。

 ちょうど子供席から見ると、ちゃぶ台は舞台のステージのようなのだ。

 そのちゃぶ台の上で「あんぱんまん」が運転する重機(ショベルカー)のおもちゃを何度も何度も、ネジ巻きせがんで、乗せて、くるくる転がるのを見てはしゃいでいる。

 落っこちると奇声を出して(喜んでいるらしい)激しいので、おとさないように手を差しのべると、これも喜ぶ。

 しかし、そう簡単には満足しなくて、そのうち自分でシチュエーションを演出し始めた。

 重機が向きを変え(少し進んだら左へ回転する、それを繰り返すのだ)落っこちる寸前のところで、大興奮。

 そこで重機が止まったりするとスリルなのか、なんなのか、指差して下からジーッと見てははしゃぐ。

 この子、映画監督になりそうな気がする……。

 一人遊びに観客を巻きこむところが器が違うと感じる。


 真ん中の子は、お教室から帰るなり、「アイカツフレンド録画みる」というから、なれないリモコンで、教わりながらTVをつける。

 一番上の子がゲームした痕跡が残っていたので、それを指摘した上で「録画はここ押せば自然に出てくるから」と男前に教えてくれる。

 そして……

「アイ・カツ! アイ・カツ!!」

 で、アイドル歌手二人が並んで、番組を始める口上を述べるのだが、一言一句たがわず、裏声でそっくりそのまままねるのだ。

 笑いそうになったけど、我慢。


 一番上の子は、大変厳しく育てられ、ママにホウレンソウを忘れない。

 報告、連絡、相談だ。

 今日は宿題がない、と言うのですかさずママは(妹だ)「オバQの練習をしなさい」と言う。

 なんのことかと思うかもしれないが、オバケのQ太郎の漫画を英文にした英語劇の主役を張るというのだ。

 わあお!

 後で見せてもらったら、女の子にスタイルをどうこう言われてエクササイズを始めたQ太郎が、風呂に入って体をぎゅっと絞ったら……体重が全部なくなったというお話。

 うーん、子供にスタイルを気にする気持ちがわかるのかなあ。

 でも、自分の知らないところで噂されてたら気にする気持ち、はわかるかも。

 でもそんなこと気にするなんておかしなことだ、という結論も出ているし、みんな、気にしなくていいんだよと言ってるみたい。

 漫画は偉大だなあ。


 そして……帰り際に、真ん中の子に貸していた「ミラクルちゅーんず!」のDVD最終巻を返してもらいに、妹のいるところまでのっこのっこ出向いた。

 もう、真っ暗な駐車場で、車の中にあるから、と言われて……。

「わたし、クリスマスはミラクルチューンズ! 観て過ごそうと思って」

 と言うと、妹は、

「寂しいね」

 と言うから、

「はっきり言うね」

 と返したら、はあっ!? という顔をして、戻っていった。

 なんだろうな。

 自分の気にいる返答じゃない、という意味か。

 それとも、わたしがなにか言い返すとは思ってもみなかったとか。

 大体そんな感じだ。


 妹宅はすでにクリスマスの飾りつけを居間に施していて、それはわたしの部屋も同じなのだが、過ごす人数が多分違う。

 わたしの部屋は……まあ、作業場兼、寝室だしね。

 そう親しくない人を招き入れる予定もない。

 居間でミラクルちゅーんず! 観ていて悪いことはなんにもないと思う。

 大体、そんな感じだ。

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