じゅうよん粒め。

 なんだか直通ベルがリンリンなってるけれど、わたしはソファにうつぶせてノートPCに向かっている。

 先ほどまで、ユメセカイにアクセスしてたのだ。

 今日のトリップは

 赤城クロ氏の世界『スライム、売ります』のヒロインたちに接近!

 → https://kakuyomu.jp/works/1177354054887206567


 リーンちゃん、リーンちゃん。

 ほわっと眩しい笑顔のリーンちゃん。

 わたしは事前に、彼女のキャラが作者の理想の奥さん、とのインスピレーションを得ていたので、その旨伝える。

 リーン「うれしい! うれしいー!!」

 と、そこらをぴょんぴょんしてます。

 ローグさんはなかなか出てきてくれないけれど、作者さんの分身であることは確かだと思うので、もう、ここは

 赤城クロ氏に出てきてもらおうと。

 召喚しました。

 天の神!

 わたしがまずい発言をしたらツッコミを入れてくれます。

 これで、シノちゃんの様子をウォッチできまあす。

 シノちゃん恋の悩みで悶絶しそう。

 話してる途中、シノちゃんは三度も顔に血を昇らせ、鼻血を吹いてしまいましたので、おしぼりを渡し、ソファに横になってもらいました。

 落ちつこう。

 赤城氏のキャラクターらしくない様子に、いや、ギャップに驚くわたしです。

 シノちゃんは横になりながらも、漫画チックに顔面崩壊して腹筋しながら牙剥いて訴えようとします。

 あかん、それでは天の神に出現していただこう。

「シノちゃんが、なにか言いたいことがあるそうです」

 そして事の次第を見守るように天の神の背中を見つめた。

 …

 天の神「こんなに苦しいなら、いっそ……逃走」

 え? わたしはソファを見た。

 確かにシノちゃんの姿はない。

 天の神「ベランダに行ったよ」

 ベランダ?

 そういえば、こちらに背を向けて黄昏る姿が……見えるような気がする!

 わたしが傍観してるうちに、シノちゃんの姿が、別のカメラで撮ったように、マンションのベランダから黒い影となって落下していくのが見えた!

 まずい! シノちゃん!!

「だめー! だめだよ、シノちゃん!! 考え直して!!!」

 シノちゃんは一見落ちついてはいるようだ。

 いや、落ち込んでるのか?

「ローグさんは、いつもシノちゃんに逢いにお店に来るじゃない! 困ったときはシノちゃんに連絡してくるじゃない!! もう、奥さん同様じゃない!!!」

 シノちゃんは少し顔をあげる。

「もうね、夫婦同然だよ? ローグさん、シノちゃんとの関係が居心地よすぎて、安心しきってるんだよ! ハッピーエンドを信じて!!」

 わたしが言うと、シノちゃん、笑顔になってこくんと頷いた。

 よかった!

 部屋に戻ってくれたよ。

 そしてソファに横になって掛け布団にくるまって……。

 疲れちゃったんだろうな。

 そっとしとこお。


 で、天の神にわたし、聞いたの。

「なんで理想の奥さんと、理想の女がバラバラに存在するんですか?」

 天の神「いいなあと思う女の子と、一途に思われたい、という女の子がいるから」

「バラバラに?」

 天の神「バラバラに」

「リーンちゃんとシノちゃん、本妻はどっちなわけ?」

 天の神「シノちゃん」

 まあ、こういう欲張りな願望が存在するから、世の中からハーレムラノベが滅びないわけで……それはそれでうらやましい思考をしてるな、と思う。

「夢があっていいですねえ」

 天の神「ゲフンゲフン」

「天の神、恋の決着はどうつけるんですか?」

 天の神「後で……」

 ふむ。

 しばらくシノちゃんの懊悩は続きそうだ。

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