第2話 四大貴族
「さてとォ。僕ちゃんの上司にあたる四大貴族の一家:ド・レイ家が管理する浮島にようこそなんだよォ。ハジュンさまがキミたちがやってくるのを首を長くして待っているんだよォ」
さっそくとばかりにセイ=ゲンドーがロージーとクロードをハジュンが住む屋敷に案内すると言い出すのであった。その前にロージーは母親であるオルタンシア=オベールを救ってくれたこの眼の前の男に御礼申し上げ、頭を下げるのであった。しかしセイ=ゲンドーはたいして気にした様子もなく
「僕ちゃん、困ったヒトは放っておけない
「い、いえ……。ママにとっては返って良かったことだと思います。生まれ故郷で養生できるようになりましたし……。これもセイさまのお働きあってのことだと、わたしは思っています……」
「いやァ? そんなに大したことは出来てないから、恩を感じる必要は無いんだよォ? そこのクロードくんにオルタンシアさまを任せてくれと豪語してたのに、結局、オルタンシアさまを手放してしまったんだからねェ?」
セイ=ゲンドーはあくまでも自分に頭を下げなくて良いと、改めて、自分の無礼を詫びるかのような発言をするのであった。ロージーはこのヒトは立派な大人なのね……と感心せざるをえないのであった。
一通りの挨拶を終えた後、
ポメラニア帝国にある4つの浮島はどれも直径10キロメートルほどの歪んだ円形となっている。その上に四大貴族たちは豪奢な屋敷を建てたり、放牧地を敷設していたり、果樹園を設けていたりする。
ハジュン=ド・レイは牛乳が特にお気に入りのために、搾りたての牛乳を飲みたいがばかりに
「うわあ……。ロージーには浮島には色々あるって聞かされていたけど、まさかこんなところに牧草地帯があるなんて予想もしてなかった……」
「そうね、クロ。わたしが行ったことがある浮島はボサツ家の管理下のところだったし。ボサツ家はそこら中に噴水付きの色々な花が咲き乱れる庭園を造っていたわ。エヌル=ボサツさまは特に菖蒲が好きだったから、大きな菖蒲園を造っていたわ。もちろん、他の花でも庭園を造っていたけど」
ロージーの説明に、へーーーと感心するばかりのクロードである。さらに追い打ちをかけるようにセイ=ゲンドーが口を開く。
「土の国:モンドラの実質的支配者であるオレンジ=フォゲットさまは果樹園ばかりを浮島の上に植樹しているんだよォ? まあ、柑橘類ばかり植えるもんだからあそこの浮島は甘酸っぱい匂いで充満しているんだよォ?」
「えっ? せっかくの果樹園なんだし、リンゴとか桃やブドウの木を植樹してたりしないんですか?」
クロードの疑問は当然と言えば当然であった。しかしだ。オレンジ=フォゲットはその果樹園で商いを行おうとしているわけでもない。それゆえ、趣味の一環として柑橘類ばかりを浮島の上に植樹しているだけなのである。クロードとしては土地の無駄遣いだよなあとあきれ果てるばかりである。
「まあまあ、そう言いなさんなァ。そんなことを言い出したら、こんな立派な牧草地を構えているのに、ハジュンさまは
セイ=ゲンドーが頬杖をつきながら、あきれ顔でそう言うのであった。オレンジ=フォゲットさまも趣味の柑橘類ばかりの果樹園なら、ハジュン=ド・レイさまも自分が搾りたての牛乳を飲みたいがための牧草地だ。四大貴族ってのは全員、金の無駄遣いが大好きなんだよォと嫌みたっぷりのセイ=ゲンドーである。
「まあ、それでも宰相:ツナ=ヨッシーが管轄する浮島よりかは、どこの四大貴族も遥かにマシに思えるんだけどねェ……」
「ちゅっちゅっちゅ。あいつは本当に宰相たる器を持っているとは思えないのでッチュウ。あんなのを重臣にしているシヴァ帝の気がしれないのでッチュウ」
セイ=ゲンドーとコッシローがあきれた表情で言うのも仕方がなかった。宰相:ツナ=ヨッシーは庭園にある総大理石の池を酒で満たし、さらにはそこら中に特大の焼肉台を設置している。宰相:ツナ=ヨッシーの浮島のテーマは【酒池肉林】であったのだ。
そして、宰相:ツナ=ヨッシーは仕事がない休日には風の国:オソロシアのサーカス団や美女を抱える舞子団を呼び寄せ、夜遅くまで続く宴を開くのである。
「仕事をほっぽらかして、酒池肉林とやらを楽しんでいるわけではないから、公然と非難しにくいところがあの御仁の厄介なところだよねェ……」
「ちゅっちゅっちゅ。その点では一癖も二癖もある人物でッチュウ。自分に瑕疵が無いように振る舞えることがあいつの最もたる才能なのでッチュウよ。結局、宰相にまで昇り詰めるだけの処世術を奴は自然と身に着けているでッチュウね。直情的なクロードとは大違いでッチュウ」
コッシローにいきなり批判されたクロードは、えっ!? と面食らうことになる。なんで、宰相:ツナ=ヨッシーの話から自分に飛び火するのか、意味がさっぱりわからないと言いたげな表情になるクロードである。
「おい、コッシロー。なんで、俺を引き合いに出すんだよ……。俺、なんかお前の気に障るようなことをしたっけ?」
「ちゅっちゅっちゅ。別に~でッチュウ。ただ単にクロードをからかったら面白い反応が見れると思って、名前を出しただけでッチュウよ? 他意は無いから安心して欲しいでッチュウ」
どこをどう安心しろというんだと文句をたっぷりと言いたげな表情に変わっていくクロードである。そんなクロードをなだめるかのようにロージーが口を開く。
「ほら、クロ。あなたは感情がすぐに表に出るから、コッシローから見たら、ちょうど良い遊び相手に見られちゃうのよ。まあ、わたしはそんなクロが好きだけどね? 何を考えているのかわからない貴族連中と付き合うより、よっぽどクロのほうがニンゲンとして出来が良いわよ? ねえ? コッシロー? そしてセイ=ゲンドーさま?」
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