第40話 王都へGO!!
爆走する馬車の中、アリーナは私を抱きかかえたままだった。
特に話す事もないので、私はただ黙って抱かれていたし、アリーナもまた窓の外をみていた。
「……私は別に魔法使いになりたくて、あの学校に入ったわけじゃない。ただ、堅苦しい家が嫌になって逃げただけだ。そしたら、その先に喋る猫がいるって聞いて、当然気になるだろ。絶対苦労するからって、できる限りの支援体制も敷いて、私自身もなんとかなれないかなって頑張ったつもりだぜ。触るのも怖かったんだぞ!!」
アリーナが私を撫でた。
「……なんか変な野郎がお節介焼いてくれるなとは思っていたけどさ。アリーナが魔法使いになりたいわけじゃないのは、態度をみてすぐに見抜いたぜ。なら、なんでここにいるんだって気になってるうちに、んな事どうでもよくなったけど。私だって、触られるのはいまだに怖いんだぞ。人見知りだからな!!」
アリーナは笑みを浮かべ、私を抱きしめた。
「なんだよ、これも怖いのかよ!!」
「……いや、別に」
アリーナに抱きしめられ、妙に落ち着いた気分で窓の外を見ていた。
「ホントに変わった友人が出来たぜ。間違っても、飼い猫じゃねぇからな!!」
アリーナは笑った。
「おい、この数どうすんだよ!!」
「全部ぶっ壊すしかねぇよ!!」
馬車が急停車したので何事かと思ったら、冬季限定の風物詩的な魔物であるスノーマンという魔物が街道をビッシリ埋め尽くしていた。
まあ、雪だるまに低級霊が憑依して自走するだけで、別になんの悪さもしてこないのだが、これだけ集結されるとただの交通障害でしかない。
「よし、なんかぶっ壊すならアリーナしかいねぇ。暴れろ!!」
「おうよ!!」
アリーナがメイスを抜き、片っ端からスノーマンをぶっ壊し始めた。
「……一応、対地攻撃魔法使えるけど、楽しそうだから黙っていよう」
しばらくみていたが、スノーマンの数はどんどん増えていた。
「……な、なにが起きたんだ。こんな集まるなんて」
「おい、キリがねぇ。なんかないの!?」
アリーナが叫んだ。
私は笑みを浮かべ、呪文を唱えた。
「対地攻撃魔法!!」
ズバババと発射された光の槍が、スノーマンの群れにばらまかれて爆発した。
「い、いつそんなの作ったんだよ!!」
「いつの間にか作っている。それが、私だ!!」
しかし、この程度ではまるで役に立たない数だった。
「よし、もうこれでゴリ押しだ。アリーナ、暴れまくれ!!」
「この野郎!!」
アリーナがバカスカぶん殴り始めノリにノリ始めた時、私は笑みを浮かべた。
呪文を唱えると、青白い光が周囲を覆い、無数のスノーマンが一瞬で崩壊した。
「……おい、なにやった?」
アリーナが私を睨んだ。
「イリュージョン!!」
私は両手を広げて叫んだ。
「……」
アリーナはメイスの先端を私の顔面に、ゴリッと押し付けた。
「……馬鹿野郎、相手は低級霊だぞ。浄化しちまえば、一撃必殺だ」
私は笑った。
「……浄化魔法、私も使えた気がするぜ」
アリーナがメイスの先端を、さらに私の顔にめり込ませた。
「……なんで、最初から教えてくれないの?」
「……いつ気がつくかなって。やっぱ、アリーナは魔法使いには向いてないかもね!!」
アリーナがメイスの先端をグリッと捻った。
「お前、タチが悪くなったな。まあ、いいけど……」
アリーナは私を抱えて馬車に乗った。
こうして、思わぬ障害はあったが、私たちは王都に向けて再び突っ走り始めたのだった。
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