魔法公証人 ルロイ・フェヘールの事件簿
紫仙
死霊使いは証文に微笑む
プロローグ 冥府の泉
冒険者が集うダンジョンとしてはありふれた洞窟型のもので、
今は下位アンデットたちの残骸が散乱している。
数日前に私とパーティを組んだばかりの冒険者たちはがめついようで、
下位のモンスターからも取れるものは取りつくすつもりのようだ。
「しけてやがる。めぼしいモンはなさそうだ」
野太い声が洞内に響く、
パーティを組んだ仲間たちがスケルトンやらゾンビ犬の遺体を乱暴に漁っては放り投げている。
解体してアイテムになりそうなモノを物色しているのだ。
「アナ、そろそろずらかるぞ」
短気そうな声が響く。
こちらもこちらで探し物がようやく見つかったのだ。
かすかに残った死者の念を辿り、
その念が糸のように巻き付き蠢いているのが分かる。
「――――ついに」
少しばかり満足な余韻に浸っていたかったが、
そうもいかないようだった。
「すっ、すみません!すぐに済みますから」
手に取ったそれをカンテラに近づける。
光に照らし出され、その表面が鈍く煌めく。
言い伝え通り
自分が長らく求めてきたもの。
その名は、
「う――――」
カンテラの光のせいで目がチカチカしたと思った。
後頭部を殴られたような鈍い痛み、
何者かの攻撃だと気づいたころにはもう手遅れだった。
「汝の……をよこせ」
何かの囁きが耳を通り抜けてゆく。
「おい大丈夫か!しっかりしろ――――」
遠くで仲間たちが私を呼ぶ声がする。
それを最後に、
私の意識は赤黒い闇へと
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