第二話:イースポーツ戦国時代へ
イースポーツ、それは端的に表現すればコンピューターゲームを扱うスポーツである。海外では対戦格闘やFPSといったジャンルが爆発的に人気となっている一方で、日本は出遅れていた。そこで、国の方も動き出そうとしたのだが――これには様々な業界から反発が出た結果として白紙になったという。
様々な考察等がSNS上には存在する。その一方で、一部の考察は広告で稼ぐ為のフェイクニュースと言う情報もある位だ。そうしたフェイクニュースによるSNS炎上の影響を直撃した結果として、日本はイースポーツ分野で大きく出遅れたのである。
これを大きな損失と言う者もいれば、超有名アイドルコンテンツだけで日本は充分と言う芸能事務所の様な意見もあった。それだけ、過去に起きたSNS炎上を初めとした事件の爪痕が大きく残っていると言えるだろう。
【どう考えてもイースポーツが日本で流行る要素が見当たらない】
【単純にゲームメーカーの主導しているアレでは?】
【メーカー主導と言うよりは、芸能事務所が――】
【違うな。芸能事務所のライバルつぶしでは?】
【どちらにしても、真相が分からない】
様々なコメントが書かれているサイトだが、サイト自体は既に閉鎖されているので新規の書き込みが出来ないようになっている。その理由は不明だが、何者かの通報があって閉鎖された説が高い。このサイトは本来であれば閉鎖されれば真っ白のサイトになっているはずだが、ログが残っている形である。果たして、このサイトに価値があるのか定かではないが、第三者に反面教師である事を伝える為に残している説が高い。
そうしたSNS論争の時代に暗躍していた組織、それがダークフォースと呼ばれていた。彼らの行動は、過去にSNSで問題視されていたゲームハード論争――通称ゲハ論争を起こし、一歩間違えれば無差別テロと同じ規模の事件にまで発展させようとした歴史がある。
ただし、ここで言及されているダークフォースは都市伝説と化しており、本当に存在した組織なのかも疑わしい。ダークフォースに関してはWEB小説の題材になる程の存在だったのは言うまでもないが、それ程の実力を持っていたのかも疑われていた。それ程に彼らの行動は正確なソースもないので、一種の都市伝説、SNS炎上勢力のプロパガンダ、パリピが目立つ為の道具等の扱われ方が多い。
「これは何と言う――格好の題材ではないか」
SNSのまとめサイトと思わしき物をパソコンでチェックしていた男性、彼はゲームメーカーのスタッフと思わしきIDカードを机の上に置いている。そして、密かに情報収集をサーバールームで行っていたのだが、何故にサーバールームで行っているのかは定かではない。
(既に計画は実行されているが、ここは利用してみるか――)
彼の名はヒュベリオン、後に大きなキーパーソンとなる人物でもある。全ては、彼のシナリオ通りに進んでしまうのか?
その日の夜、草加市のゲーセンでネットサーフィンをしていたのはビスマルクだった。バイトの件に関しては数日後に結果が出るという事なので、それとは別件で訪れたのである。
「やはり、あの動画は違っていたのか?」
ビスマルクが気にしていたのは、午後六時頃から拡散している動画の事だ。その内容はヒーローブレイカーの動画なのだが、上位ランカーと有名プロゲーマーの対決と言う事で拡散しているらしい。動画を見たビスマルクの印象は、これが例の動画なのか疑問に残るの一言である。他のユーザーはそのようには思っていないのだが、一部のユーザーはビスマルクと同意見だった。
「これじゃない」
「実際に見ても、何かしっくりこないな」
「確かに上級者同士の対決だが、何か違和感がある」
「チートぷ異例や不正の類ではないのに、何かが矛盾しているような」
「本当に同じゲームか? まるで、違うハードでプレイしている感覚に見えるが」
センターモニターで見ていたギャラリーの一言を聞き、ビスマルクは違和感の理由が分かった。
(確か、VR版も稼働しているという話があったような気が――)
半分はフェイクと思って流していた一件、これが事実だったというのも衝撃ではある。しかし、そうでなければあの対決で微妙な挙動の違いを証明できる物がない。何か証明できるような物がないか、そう思っていたビスマルクが周囲を見回すと、そこには四台の筺体が視界に入る。
筺体の形状としては、FPSゲームの筺体にありがちな二本のスティックで操作するタイプ、むしろロボット物にあるような形状をしていた。その筺体は起動しておらず、別のゲームに入れ替えている可能性も高い。気になったビスマルクは、その巨応対の場所まで近づき――。
「この筺体は?」
「明日には新機種に入れ替えるので、準備をしている所さ」
「入れ替え?」
「八台の内、半分を入れ替えるという話だが、これが人気機種なのかは分からないな」
「どのようなタイトルですか?」
「あれだよ」
ビスマルクがタイトルを尋ねると、男性スタッフは近くにあったポスターを指さす。そして、そこに書かれていたタイトルは『ヒーローブレイカー』と書かれていた。まさかの展開と言わざるを得ない。
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