死んでもいいから

容子

星の中へと入ってゆく

昔々 星が流れ落ちて驚いたの


その方角へ自転車を走らせて

寒くて息が白い


でも

何もなかったから


私は今度は寒さをかみしめるように夜道を自転車をおして帰ったの


見上げると

この土地にしてはまあまあの星の数だった


私は1つ離れて赤く光る星に目をやったの


温度が低いのかな

違ったかな

そんなふうにも考えた


異質にみえた

異質なのになぜかそれほど目立たないのは

光が弱いせいじゃないかと思って


今でもごくたまに赤い星を見かけるけれど

あれほど鮮明な赤じゃないから

ほとんど目を配らないの


あなたが赤なら私は青だって

言い合いになったでしょう


子どもだったから


でもあの頃の私には多くの星がどこか青白く見えたわ


それは澄んだ空には映えてたけど

そそられなかった


赤い星の行方が気になるの

いつ消えてしまうのか

そわそわしてた


少し下を向いている間に姿が消えたこともあったの


私はそのとき

私も死んでもいいのにって


生まれて初めて感じたの


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