触手だからって女の子とHしたいと思うなよ
とくがわ
第1話 触手だからって人間と子供ができると思うなよ
絹を裂くような悲鳴で俺の意識は覚醒した。全身で周囲を感知できることに気がつく。ここは薄暗い部屋の中のようだ。目の前には……確か……ニンゲン、という生物のメスがいる。メスは震えているようだ。寒いのか?そういえば人間というのは毛がないから服を着ているはずなのに、服がないではないか。それは寒かろう。
それにしても観察すればするほど、実に気持ちの悪い生物だな人間って。だいたい全身に触手が生えてない。毛もほとんどない。おまけになんかコブみたいなものが身体に付いている。よく観察するとコブの先にデキモノみたいなのがあるじゃないか。なんか赤いし病気みたいな気がする。気持ち悪いだろ。
おっ、部屋の外に触手が伸ばせそうだ。あそこに人間の……服があるじゃないか。寒いの解決できるんじゃないか?俺はそう思って人間の服を取ってやった。そして人間のメスに渡す。早く服とやらを着てくれ気持ち悪いから。
「えっ、何もしないの?」
……なんか理解できる。なんでだ?どうやら対話ができそうだ。体表を振動させることで音波を発生させられるようだな俺。
「いいから早く服とやらを着てくれ」
「は、はい」
人間のメスは手渡した服を着はじめた。コブの先のデキモノがキモい。
「うわっ……キモいな……早く隠してほしい……」
「ちょっと!キモいって誰のことですか!」
いかん、思わず本音を漏らしてしまった。人間のメスがこちらを睨みつける。いいから服を早く着なさい。
「そりゃそっちのことだよ人間。気持ち悪いデキモノを出さないでほしい」
「気持ち悪いデキモノってなんのことですか?そんなのないですよ!」
「えっ、そういうものなの?じゃあそのコブの先のやつは?」
「……?これですか?」
指さすのやめてほしい。でもデキモノじゃないのかそれ、じゃあなんなんだよ。
「そうそれ」
「乳首ですよ」
「なんでそんなのあるの」
「それは……赤ちゃんできたら母乳をあげるために……」
「母乳……あ、哺乳動物の分泌液か。そんなもんで成長するとか不気味な生き物だな哺乳動物」
「酷い言われ方されてる気がします」
いいから早くその乳首をしまってほしい。どうしてもコブの先のデキモノに思えて仕方がない。
「とにかく早くしまってくれ」
「別に感染したりしませんから大丈夫ですよ」
「いやでもなんか嫌」
「……なんか納得がいかない」
人間のメスは渋々といった表情で服を着た。さっさと着てくれれば良かったのに。やれやれ。これで気持ち悪いもの見ずに済む。
「それで?なんだってこんなところに服も着ずにいたんだ」
「村から魔物に攫われてきました。気がついたら服を脱がされてここに放置されています」
「なるほど。俺も今さっき喋れることに気がついた。そしてよくわからないが、ここに閉じ込められてることもわかった」
「状況は同じですか……」
「そうだな」
俺たちはしばらく部屋を見回した。人間のメスによると、目の前にある部屋を仕切ってる棒を鉄格子と呼ぶらしい。どうやら閉じ込められているようだ。
「しかし俺たちを閉じ込めたやつは何がしたいんだ」
「多分私を陵辱したいんだと思ったんですが」
「陵辱ってどういうことだ?」
「あなたの触手で身体じゅう撫でまわしたり、その……あそこをいじったり……」
「はぁ!?」
顔を赤らめる人間のメスに対して、俺は思わず声を荒げた。
「俺たちをこんなところに閉じこめたやつはバカなんじゃないのか?」
「えっ?」
「考えてみろ。俺がそんなことするわけないだろうが。同種でもないのに繁殖できると思うか!?」
「でも触手が人間を苗床にって話を聞いたことが……」
俺は触手を振り回して反論する。
「仮にだ、繁殖のための苗床が必要っていうならそもそも相手がいるだろ相手が。俺一人でどうしろと」
「オスなんですか、触手さんは」
「あぁ。とにかく、繁殖もしないのに苗床にしたり、意味なく身体を撫でまわしたりしない。俺をなんだと思ってるんだ」
「……良かった……でも、何故か納得できないのは何故でしょうか」
いやそこは納得しろよ。そもそも無理矢理別種の生物に陵辱されなくて良かったじゃないか。俺だってつるつるの表面触るのとか、変な穴とかに触手突っ込むのとか気持ち悪いからできればやりたくない。
そんなことを思っていたら、紫色の体表を持つ小さな何かがこちらに近づいてきた。
「ん?なんで陵辱していないんじゃ?この触手は?」
「おいこら、なんで俺がそんなことしなければならんのだ」
「ゲェッ!喋ったじゃと!?どの改造が原因じゃ?」
「あぁっ!私を村から攫った魔物と一緒にいた!」
こいつか。人間を攫う悪いヤツは。そして俺に人間姦という変態行為をさせようとした悪は。ふつふつと怒りが湧いてきた。
「なんじゃ、せっかく脱がしたのにまた服を着ておるじゃないか。陵辱実験のレポートを出さねばならんのに……」
「おいこら紫の、何で俺に人間姦を強制させようとする!?」
「決まっておろう。触手といえば触手プレイと。そして触手プレイで人間を陵辱し尽くし奴らの心を折り、人間どもを滅ぼすためよ」
「ふざけんな!」
俺は鉄格子に触手を絡めた。そのまま力を込めて鉄格子を捻じ曲げる。
「なっ……拳程の太さの鉄格子じゃぞ!?こやつ……強化しすぎたか……」
「さぁ、大人しく俺たちを解放しろよ。さもないと……」
「舐めた真似を。ミノタウルス!ワシは研究があるからな!後は任せたぞ!」
そういうが早いか、紫の小さい存在は逃げ出した。くそ、待てよ!しかし俺の目の前には牛?だったかのアタマをした筋肉質の怪物がいる。どうやらこいつは用心棒か。
「人間の。下がってろ」
「ミーア」
「ん?」
「私の名前です。そう呼んでください」
「わかったミーア。こいつは俺がなんとかする」
牛アタマは俺を睨みつけている。そんな目で見られてもこっちだって困る。ヤツが棍棒を振り下ろす。なんとか躱せる。こっちもそんなに動きが速いわけじゃないが、相手は所詮牛だ。ノロノロ同士、のんびり行かせてもらうだけだ。
振り下ろす棍棒を躱しつつ、足の間をくぐって背後をとろうとする。牛は結構後方が見えるのか、棍棒を後ろ手で振り回す。迂闊に近寄れない。
「くそっ、あまり使いたくない手だが!」
「触手さんっ!!」
ミーアの叫びも虚しく、牛の棍棒で俺はのされて……変形してうまく躱すことに成功した。変形したら元に戻るの大変なんだよなぁ。さておき、そのまま棍棒に絡み付き、そして腕にも絡む。
牛がモーモー言いつつ俺を振り払おうとするが、残念だな牛、俺の触手力は結構強いからな!牛の指を変な方向に曲げる。悶絶する牛。首筋にまとわりつき、俺はそのまま牛の首を絞め上げた。激しく暴れまわったものの、とうとう牛は泡を吹いて倒れ込んでしまった。
「さぁ、逃げるぞミーア」
「はいっ!」
俺たちはこうして、牢から逃げ出すことに成功したのだった。牢から通路を進んでいく。触手や女の子がほかにいないか確認しながら進むも、他には誰もいない。触手の残骸みたいなものは結構あった。酷い話だ。それ以外にはめぼしいものはなく、もぬけのからである。小一時間通路を進んで、ようやく俺とミーアは外に出ることに成功した。結局紫のヤツはどこかに姿を消してしまったようである。
「やっと出れましたね」
「そうだな。これからどうする?」
「私は村に帰るつもりですが、触手さんはどうします?」
「まずは君を村の近くにまで送って行こう。まさかと思うが魔物が村にいる可能性もある。もっとも俺が村まで行くと村の人たちに攻撃されそうではあるが」
「……それはないとはいえないですね……村まではよろしくおねがいします」
「ん、こちらこそな」
こうして俺はミーアを村まで送っていくことにした。その一方で俺はふと思った。なんかキモいの見たから可愛いメスの触手に癒されたいなあと。いや、ミーアが悪いわけじゃないんだけどな。悪いのはあの紫野郎なわけだが。
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