第25話 生きる目的
会長さんは重傷を負ったものの、何とか一命をとりとめました。治癒院でそのことを聞いて、ロックさんが深く息を吐きだしました。安心して緊張が解けたようです。
ロックさんはこのまま治癒院で会長さんが目覚めるのを待つそうです。私はロックさんと別れると警察署に向かいました。衛兵や憲兵をまとめる本部です。
私は衛兵から、出頭して事情説明するように言われていました。
署につくと会議室に通されました。即席で用意したのでしょうか、魔人対策本部と書きなぐられた紙が貼ってあります。
中に入ると警察機構のお偉いさんがそろっていました。え、私この中に入るのですか……。私だけ場違い感が半端ないのですが。帰りたい。
「来たか、お前の席はここだ」
声がした方を見ると、ギルマスもいました。それだけ今回の件が重大ということでしょう。隣の空席を叩いています。着席以外の選択肢がありません。私はそこに座りました。
「これより、突如街に現れた魔人についての対策会議を行う!」
私の着席を以て、会議が始まりました。
否、会議ではありませんでした。私への尋問でした。お偉いさんが寄ってたかって私の魔人との遭遇の証言にケチをつけてきました。
なぜ魔人は私が商会から出た直後に現れたのか、なぜ私は魔人から見逃されたのか、なぜ装備を整えていなかったのか、次から次へと詰問されます。そして私の返答はことごとく批判されました。
最終的にはなぜ私は生きているのかという話までケチがつきました。会議室から解放された時、私は軽く鬱状態でした。
「私は何のために生きているのでしょう……」
「生きる目的を見つけるためだ」
ギルマスが答えます。
「見つからなかったら」
「死ぬまで探し続ればいい」
ストイック過ぎませんか、それ。
「さっきの会議は何だったんですか」
「以前お前の無罪釈放をもぎ取ったことへのいやがらせだろう。そうしないとメンツを保てないのだ。彼らのような人間は」
「偉い人にはなりたくないですね。心が荒みそうです……」
もしあの会議がもっと長く続いていたら、温厚で平和主義で慈愛に満ちた私でもブチ切れて暴れ出していたでしょう。
「では次の会議に行くぞ」
「え!?」
「魔人の捜査の実質的な会議は現場の人間達が別の場所で行っている。ついてこい」
私はまだ会議から逃れられそうにありませんでした。
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