第23話 私はまだ10代です
生物は瘴気に多量にさらされると魔物となります。往々にして、巨大化、狂暴化、凶悪化します。なら、人間は例外でしょうか。そんなことはありません。人間も瘴気によって魔物化することはあり得ます。
そして、その魔物化した人間のことを私たちは魔人と呼びます。
魔人も魔物と同じく瘴気を生み出すようになります。魔人がいる限り魔物が生まれ続け、人間は脅威にさらされます。ゆえに人間は歴史の中で魔人を排除してきました。
対話が可能であるにもかかわらず、魔人と人間は相容れることはありません。
「あれは……、坊ちゃま!?」
ロックさんがとんでもないことを言いました。
「ええ!?」
私はキャッシュさんの似顔絵と見比べました。どう見ても別人ですよあれ。
「いえ、間違いありません! あれは坊ちゃまです!」
なぜ行方不明者が魔人に。いえ、それよりも現状を何とかしないといけません。
「そこの魔人のあなた、今の爆発はあなたの仕業ですか! その人を放しなさい!」
私は魔人に向かって声を張り上げました。早く治療しないと会長さんが危険です。しかしそのためにはまず魔人を何とかしないといけません。状況から考えて、魔人の目的は会長さんでしょう。なんとか引き離さないと。
「うるさいババア! 邪魔するな!」
盛大に罵倒が返ってきました。非常に興奮状態にあるようです。というか、だれがババアですか誰が。
「坊ちゃま!」
ロックさんが二人のもとへと走り出しました。
「ちょ、危ないですよ!」
私はロックさんを止めました。
「坊ちゃま! どうされたのですか!? なぜこのようなことを!」
ロックさんが叫ぶように言いました。
「こいつはクズだ! 病気になったとたん僕を邪魔者扱いして、僕を閉じ込めて、僕をいなかったことにして弟を大事にするようなクズだ。殺して後悔させてやるんだ!」
「いけません! 坊ちゃまにとって世界に一人しかいない実の父親なのですよ!?」
「こんな父親ならいないほうがましだ!」
魔人が会長さんにとどめを刺そうとしました。まずいです。止めなければ。しかし、武器は護身用の鉈しか持って来ていません。
投げる……。いえ、間違って会長さんに当たるかもしれません。
その時、何者かがすごい速度で魔人のもとに飛び込みました。ボン! と小爆発が起き魔人が吹き飛ばされます。
土煙が収まると会長さんの姿が見えました。どうやら無事のようです。そして会長さんを助けた人物も見えました。
その人物を私は以前見たことがありました。制服を着こんだその人物は、以前フルーさんを逃がすときに見た、風使いの衛兵でした。
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