第20話 酔いどれ勇者共と保護者は魔王です

 酒場でのんびり飲んでいたら、勇者達に見つかってしまった


「やっと見つけたぜバルト」


「腕はもう生えてたんだねぇ。苦労したのに元気そうじゃないか」


 少し落ち着いた女勇者はもぎ取った腕と私の腕を見比べながらぼやいている


「私がフックでもつけていると思ったか女海賊」


「いいえ、全然。ここいいかい」


 奴らは当たり前のように私の席に勝手に座った、もう何も言うまい、ごねられたら面倒だ


「追って来たのか勇者共め、なぜ一緒に行動している」


「ああ、フランが海で溺れれたところを、俺が引き上げてやったんだよ」


「そっから、同じ追われる身のよしみでトムと一緒に行動する事にしたのさ。反逆罪がかかっちまったからね」


 なるほど、下手にばらけるよりも固まった方が互いに動きやすいというところか。特に女勇者は陸地での活動には慣れてない、対して勇者は要領が悪いからな…絶望的に、彼女の指揮能力は欲しいだろう・・・・、指揮能力といえば


「他の海賊共はどうした?」


「アンタのお陰で、誰が反逆に関与したのかうやむやになっちまったからね。地下に潜ってるか、正規軍に取りいったりと上手くやってるよ。首謀者のあたしは除いて…。まあ、アンタには感謝してるよ」


「ほう、私に嫌味を言う為にわざわざ来たのか」


 私の言葉を聞いて、女勇者はグラスの酒を一気に飲んでから答えた


「本音と嫌味半々、どの道いつか海賊業は畳まなきゃならなかったからね、最後まで船と運命を共にするか、足を洗うかで身内で結構もめてたのさ。その問題も良くも悪くもアンタが消し飛ばしてくれたから、結果的には多くの奴らの命が助かってるよ、そう言った意味じゃ感謝もしてる」


 助かっている? 良く考えればそれもそうか


「ふむ…、あのまま貴様ら海賊があの国と戦争を始めていたら港は封鎖され補給もままならず、兵糧と物資不足からの持久戦で士気も低下、その弱みに付け込んで隣国が海賊共に取り入り、国対国の戦争に巻き込まれただろうな、捨て駒として」


 不満を抱えた武装勢力など利用しやすからな。用済みになった海賊などいいカモだろう


「お、察しが良いね。こう言っちゃなんだけど魔族ってのは力押しの集団で、戦略や政治にはうといと思ってたよ」


 実に耳の痛い話だ


「そう思うのも当然だな、実際にそう言った愚者も多く捨て駒として積極的に前に出していた。足手まといを間引く事も出来る上に、多くの同胞の血が流れるのを見せる事によって自制心を植え付けさせる事も出来る、・・・・はずだったがこちらが優勢になり過ぎた故に愚者が蔓延り人類側に恥をさらしてしまった」


 私の言葉を聞き勇者は大笑いしたが、女勇者は青い顔して頭を押さえてしまった


「アハハハ、総大将から見ても目の上のたんこぶだったて訳だ! ハハハハ!」


「あはは…、その雑魚だけでアタシら押されてたって言うんだから怖い話だね…」


 この二人、そろって勇者のくせにタイプが全く違うようだな。今後人間を操る事になった時の為の参考に遊んでみるのも悪くないかもしれん・・・。ん?


「おい、私の酒が減っているぞ」


「悪い、ちょっとはいしゃくしてビールに混ぜた、バルト居るなら多少酔っても平気だろうし」


「なぜ私が面倒を見る前提になっている」


「酒飲んでも酔えないだろ? え、酔えるの?」


 勇者はもう頬を赤くしている


「悪酔いはしないが、お前が酔ってるのはよくわかった」


「え、オレそんなに酔ってる感じ? お、おお? なんか緑の妖精が俺の周りをヒラヒラと・・・って!これ普通の酒じゃねえな!?」


「精霊術師が使う霊酒だそうだ、これを飲むと精霊が見えるようになるらしい。店主に無理を言って出してもらった、金で」


「なんつうもん飲んでるんだ…、嗜好品として飲むもんじゃないだろ」


「魔王だからな、アルコールだけでは物足りん」


 勇者と話してると女勇者が割り込んで来た、不愉快な物をヒラヒラさせながら


「いざとなったら私が手を貸すよ。ほらほら」


「私の腕で遊ぶな!」


「返して欲しい?」


「もういらん! 捨ててしまえ!」


 私のだった腕をひっつかんで取ろうとしたが女勇者は抵抗して来た


「いやよ!せっかく名前つけたのに! 腐る様子も無いし、後で私の能力で動かして遊ぶんだい!」


「余計気色が悪いわ! その残虐性、貴様本当に人間か!?」


 「ブチッ」


 腕は手首のところで千切れてしまった


「マリアンヌ!なんてこと・・・・。千切れて半分になったから名前はマリにしよ」


「やめろ」


「アンヌの方が良かった?」


「そう言う意味ではない!」


「じゃあアンヌで。ほらほら、指で歩いてダンスしてる!」


「さっそく遊ぶな!」


 机の上でダンスしている手首を虚ろな目で見ながら勇者はぼやいた


「ああクソ…、妖精が手首のに座って遊んでやがる・・・趣味悪りぃな」


「なに!? この妖精羽虫め! 大人しく赤ん坊でもさらって遊んでいろ!こうしてくれる!」


 私が妖精共を一匹づつ瓶につめていると女勇者はとんでもないことを言い出した


「なに、なんか面白そうな事になってるみたいね。あたしにもそのお酒ちょ~だい」


「貴様はこれ以上の飲むな!!」


 こうして勇者共の乱痴気騒ぎがしばらく続いたのだった

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