第3話 食う者、喰われる者

 私がティータイムを楽しんでいると人間共が飢えたと騒ぎ出し、道端のニワトリに槍を投げたがニワトリは無傷で鳴きだした。何を言っているか分からないか? 前回を読め


「な、なんだ?」


 人間共はニワトリの鳴き声に動揺している。それもそのはず


「段々大きくなってねえか? 鳴き声」


 そう、鳴き声のこだまはまだ鳴り響いており、その鳴き声は段々と大きくなっていった。奴らは混乱しているようだが理由は簡単だ、単に鳴き声が反響音ではなく、他のニワトリがさっきのニワトリの鳴き声に応えてながら接近してきているだけだ


「「コケゴケゴ~ォオ!」」


 ニワトリの軍団がイナゴの様に飛び回り、人間共を啄んでいく


「なッ!この!離れやがれ!」


「ひぃ、このぉ!」


「うわ~! 食われてたまるか!」


「これ、ほんとにニワトリか!?」


 このニワトリの凶暴性・・・、間違いなく勇者の手先だろう。昔にあの勇者の活動していた辺りに居た魔族部隊から報告を聞いた事が有る・・・・・





 ”村のを襲撃したさいにニワトリと遭遇、部隊の1人が戯れでニワトリを攻撃したが目立った外傷はできずニワトリは鳴き声を上げるだけにとどまる”


 ”しかしどこからかニワトリの増援が現れ攻撃した者を殺害、こちらも応戦するもニワトリの勢いは止まらず、建物の屋内に退避するまでニワトリの増援は止まらなかかった”


 ”部隊の生き残り全員が屋内に入ると、最初に攻撃したニワトリを残し増援部隊は消えていた。この奇妙なニワトリに対する注意勧告を該当地域に活動する全部隊に行う事を具申します”





 ・・・・などと言う報告が何件も上がっていた。あのニワトリに対する唯一の対抗策は屋内に避難す事だが、ここでは無理だろう。人間達も直感的に悟ったのか全力で走り始めた。私もスピードを上げる事にしよう


「くそ!キリがねえ!」


「このまま古城まで逃げるぞ!」


 だがしかし…、ニワトリの他にも黒く丸っとした犬のようなモノに襲われたり、怒涛の勢いで押し寄せてくる羊の群れに幹部クラスの魔族がひき殺されたと言う報告まであった。勇者は動物を操る能力でもあるのだろうか?


「古城が見えたぞ!」


「もうすぐだ!がんば・・・」


「ぐえッ」


 奴等の1人がニワトリの攻撃を受けて倒れた、首をやられてどうやら致命傷のようだ。・・・・紅茶をお代わりしよう


「おい!しっかりしろ!」


「俺はもうダメだ・・・、どうやらお迎えが来たようだしな」


「お迎え?」


「紅茶を啜る死神が、俺を冷たい目で見降ろしてるんだ・・・・。もう長くはない」


 この男、死の間際に私の姿を視認できたようだ。まあ、今更どうでもいい事だが。他の連中は気づいていない様だしな


「がく・・・」


 私が紅茶を飲み干すのを待たずに息絶えたか。ニワトリにやられるとは情けない、軟弱者めが


「ちくしょーう! この鳥公どもをなぶり殺してやる!」


「おい!賞金首は!?」


「俺達の敵は顔を合わせた事の無いどこぞの誰かか? 違う!今ここで仲間の命を奪ったニワトリだろう!」


 素所も知れぬ獲物より、目の前の敵と言う事か? 理屈は分からんではないが・・・、お前はそれで良いのか?


「そうだな・・・」


「最後まで付き合ってやるぞ!」


 他の奴らもそれでいい様だ


「いくぞお前ら!」


「「おう!」」


 愚かな人間共とニワトリの壮絶な戦闘が始まった!こうご期待! と言いたい所だが


「「「コケエエ!」」」


「「「うおおお!」」」


 まあ、数の暴力で直ぐに人類の敗北で終わったよ。ご苦労様だ虫けらども


「ココ…コケコ・・・」


 ニワトリ共に無残に啄まれる人間達。茶番が終わった所で私はティーセットを

片付けて立ち上がりひと息つく


「ふぅ、普段は人間に飼われ食われるだけの存在に人間共を食わせる、なかなか良い志向だが・・・、これでは戦力差があり過ぎてつまらんな・・・・」


「コケ・・・」


 私はニワトリの一匹を鷲掴みにし


「後続の討伐隊もこいつ等に殺られても面白くない・・・・、絶滅してもらうぞ」


「ゴゲッェ!」


 私は黒き炎で捕食者気取りの家畜共を焼き払う事にした


「ブォォォン!」


 一瞬で真っ黒に焼き上がるニワトリ、そのニワトリに周りのニワトリが一瞬目を合わせた後、私を睨んで一斉に襲い掛かって来た


「「ゴケェゴケッ!!」」


「捕食者気取りの家畜風情が頭が高いわ!」


 倒せば倒すほど増えてくる家畜共。だが無限と言う訳ではなくもう品切れの様だ


「まったく、数ばかり多くて時間がかかってしまった」


 群がるニワトリ共を駆逐し、ひと息ついていると。近づいて来る者達の気配を感じて私は振り返る


「次の勇者討伐隊か・・・、思ったよりも早く来たな」


 辺り一面に広がる、夕焼けに照らされたニワトリの焼死体を見ながら私は首をかしげ考えた


「この散らかりようは流石にまずいか? 警戒されて帰られても困るしな・・・」


 取りあえず人間四人の死体とまとめて焼死体を森に追いやったが


「鳥臭いな、これでは別の意味で怪しい。何かで密封できればいいのだが・・・」


 仮にここに巨大な鳥塚を作ったとしよう、もしそんな事をすれば不審に思った勇者おもちゃに逃げられてしまう恐れがある


「ふむ・・・・」


 どうしたものかと悩んでいると、あるアイディアが頭に浮かんだ


「この古城の中に隠してしまおう。なに、人間基準なら少々古い建造物だが、中の構造などたかが知れている」


 私は焼死体を持って古城の中の至る所に隠したのだが


「む、意外と早いな」


 焼死体を隠すのは成功したが、もう討伐隊が到着してしまった。しかたがないので私も壁の中に隠れることにした


「よしお前ら!7000万を取りに行くぞ!」


「一山当てて、牧場でも始めるか」


「はは、俺は酒場が良いな」


「さっさと行こうぜ」


 また4人のパーティーの様だ。前の連中よりは期待できそうではあるが…、どうかな?

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