第13話 武具製作(鎧兜)

 とりあえず、手始めにドヴェルグが着用している鎧を参考にしてみようと思う。

 ドヴェルグに普及している鎧は革鎧と呼ばれるもので、鞣した動物又は魔物の皮を用いた軽く柔軟性が有る鎧である。

 ドヴェルグ以外にも他種族(主に人間)の駆け出し冒険者や下級兵士が使用していたりするポピュラーなものである。

 とはいえ自前の鱗があるリザードマンや戦闘時に鎧を着用しないエルフなどには馴染みがないものなのでドヴェルグと人間にはポピュラーであるといった方が正しいのだが。


 さて、そんな革鎧の利点だが先程も述べたように軽くて柔軟性があることが上げられるが、最大の利点と言って良いのは何より値段が安いことにある。

 その年の物価の変動によって異なるがだいたい鉄で造られた一枚板の鎧一着で一番安い革鎧が約百着ほど買えると言ったらその安さが理解できるだろう。


 ではそんな革鎧だが、欠点は何であろうか?

 それは脆弱性と補修がきかないという点につきるだろう。

 革鎧は剣や槍などの鋭利な武器に簡単に切り裂かれてしまう。硬化処理を施せばある程度耐えられるようになるが、そうなると一気に値段が跳ね上がるため革鎧の一番の利点である安さが損なわれてしまう。

 自作する場合、費用は抑えられるかといえばそうではない。

 硬化処理に使用される液体自体が錬金術師たちが秘匿している方法で製造されている為、高価な代物なのである。

 それ故、俺のような木っ端鍛治師では手が出ないものなのである。

 次に補修がきかないという点だが、これは鎧そのものというよりも主原料である革の方に問題があるのである。

 前世において革製品が補修がきくかどうかは知らないが今世において使用されている革というものは一度穴が開くなり切れ目が付くとそこを起点として破れてしまうという性質を持っている。

 新しい革や布で保証してもその性質は変わらないため一度壊れてしまった場合は新しいものに買い替えるしか方法がない。


 現在俺は鍛冶師と冒険者の二足の草鞋を履いている状態なわけだが、鍛冶師のほうは客もおらず収入はなく、冒険者の稼ぎで生活をしている状態である。

 そのような訳でいくら革鎧が安い代物とはいえ俺には都度鎧を購入するような金銭的余裕はないのである。

 まして、この前のように不意に魔物と戦闘になった場合革鎧では心もとなさすぎる。


 だが、この鈍重なドヴェルグの体では金属でできた鎧は重過ぎる。

 つまり前置きが長きなったが、今回俺が造ろうとしているのは革鎧のように軽く、革鎧よりも防御力と補修性に優れた鎧なのである。

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