第3話
今日はよく行く回数の多い西隣の街の店での仕事。
この日は寒い日だった。
いつもの駐車場に車を停めて、私は店の事務所に向かう。
「お早うございますっ。警備員の者です。」
「お早うございますー。よろしくお願いします。」
お店の人が返事を返す。
そして今日も開始の時間。
有線が流れる〜! 歌謡曲が流れる。
「あっ、お早うございますぅ。」
知らない人が挨拶してくる。
あれは業者の人達か。初めて見る人が忙しそうにバックヤードを歩いて来る男女の姿。
店には色んな人がいるなぁ、優子は思う。
今日も頑張って行こ!
午前中はこれと言い何も無い日。
お昼を食べ終わり、五分後に日誌に書いて、と。
何も無いが小さな事でも思い付いた事は何でも書くのだ。
そして休憩が終わるまで今しばらく目を瞑る。
昨夜は良く眠れた。
朝までぐっすりだった。
母親に軽くイビキをかいていた、と言われたな、朝起きて台所で聞いた。
最近あまり眠れなかったから、昨夜はよく寝たのだろう。
優子はあっと言う間に終わる休憩に少し不満があった、あと十五分くらい長くしてもらえないかなぁ。。
腕時計を見ながら、事務所の店員に御礼を言う。
そして又店内へ戻る。
そして二時間位が経った。
見た事が無い人が台車に段ボール箱を載せて歩いている。
そして裏口から出て行った。
その人と目が合い相手が軽く会釈をした。
優子もつられて頭を下げた。
カー用品コーナー辺りを歩いていた時又その人が来てカーナビ売り場辺りで、商品が置いてある箱などを選び運ぼうとしている。
優子はそれをボーっと見ていた。
そして又沢山積んで裏口に出て行く。よく見ていたら、その台車を駐車場迄運んでいた。
そして車に載せて出て行った。
もしかして、あれはー!
泥棒ー?!
優子は事務所まで行き居た店員にすぐさま事情を説明した。
店員もその男に会釈していたからそれを見ていた。
後からもしかして泥棒。。
お店側は大騒ぎする。
警備員が見ている目の前でーー!と会社の上の方に電話で話をしている。
優子は会社に連絡していたが又携帯が鳴った、、、。
慌てて電話に出る優子。
そしてそれが窃盗犯だと後で大騒ぎになる。
他店でも県外の店でも盗みを繰り返していた男。
ある日優子は警備会社から直ぐ会社に寄る様に、と電話があった。
優子は会社でその日あった事を話していた。
そして数日経って。
警察の方が来ています、と仕事中事務所に呼ばれた。
挨拶をして、警察から見た男の写真を見た。
正にその男で、優子は又ビックリした。
他店でも盗みを重ね総額三千万円位にまで達したとの事、会社から連絡があり、新聞にも掲載されたらしい。
優子はただ唖然とした。
人相だけでは本当分からないものだ。
それにしても店側も気が付かなかった。
白昼堂々との犯行には店側の防犯又は、優子の様な警備員も徹底して警備にあたって欲しいと、警備会社にも連絡があり、その日の一件は忘れる事は無かった。
そして数日後、西隣の店に警備に入った日。
そこでは、軽い薬が置いてあった。
胃腸薬、頭痛薬程度だが、薬コーナーがあった。
その店で優子は既に何回か捕まえていたのだが。
肌寒い日の事、優子が店内を歩いていたら、先輩警備員が優子を見つけ歩いて来た。
「優子ちゃん、、元気そうね。」
優子の肩を軽く叩く先輩警備員が、
「この薬コーナーのあの咳止め薬、、覚醒剤に似た様な症状が出るから、たまに盗んで行くお客さんがいるの、あなたも気をつけて警備にあたってねー。」
優子は怖くなった。
覚醒剤?!そんなの売ってるの?
ビックリしたり怖くなったりこの仕事気が休まる時が無いわー!
かなり甘く見ていた感じの優子Gメンは何回ビックリすれば良いのだろうか、、、
つくづく色んな人達がいるなぁ〜!
いつもの何十倍も難しく荷の重い大変な職業だろうと思った。
そしてこの店にはこんな商品、あの店にはあんな商品が狙われるなどなど優子は日誌を書きながら思っていた。
そして先輩警備員が帰って行った。
優子は薬コーナーから出入り口前に立っていた時だった。
「すいませーん。」と薬コーナー担当らしき店員が声をかけて来た。
「あっ、はい!」
「さっき入って来たドカタ姿のあの大柄な男の人、咳き止め何回も持ってかれていて、よく警備お願いします。」
軽く頭を下げる女性店員は直ぐに持ち場で途中までの仕事に戻った。
優子はその男の雰囲気を記憶しようと必死だった。
その日その男性は薬コーナーに寄らなかった。
優子は毎日同じ店内を歩く同じ事をしてるが波乱にとんでいる日々を過ごしていた。
会社では優子は鋭い警備員らしいと思われているのかそうでは無いのか、用事で会社に寄る日は、上司が、
「どう? 頑張っているねー! 」
「少し慣れて来たと、、思いますが、、」
「今日何かあった?」
優子は中々睡眠不足の事を言えずにいた。
このまま放っておいたら不眠症、もう既に不眠症?どうしたら良いのだろうか〜。と悩んでいた。
会社では優子より少し若い警備の子が気を病んで辞めたと聞いていた。
あの子そんな風に見えなかったなぁ〜。優子はこの日会社には何も言えずにいた。
睡眠不足位大したことない。軽く考える自分がいた。
給料は金額的に多いとは言えないし、仕事内容も精神的にかなり強く無いと出来ないのだ。
Gメン警備員このまま続けるべきか早六ヶ月が過ぎていた。
当初仕事に向いてはいないとか真面目に考えていたが、自分の中ではもう疲れが溜まる一方。
体は段々とこのままでは危険かも知れない。
学生時代とは違う、睡眠不足を甘く見ている優子だった。
それに自分の周りの友達はどんどん結婚して子供がいる。
私も早く子供欲しいなぁ〜。でも相手いないし、、
家で布団に入りボーっと考えていたが、いつの間にか寝てしまったのか気が付いたらもう朝六時だった。
そして今日はどの店か、、今日は確か休みだなぁ〜、まだ眠い、後もう少しだけ…。と優子はまだ布団の中に入っていたいのだった。
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