第76話
そんなこんなで、白月から投影機の作り方について教わった俺たちは、約3時間ほどこの作業に没頭している。
今は、それぞれに手渡されたボール紙に夏を代表する星座を描いていき、その星座を作っている星の等級ごとに、サイズと色分けをしているところで、俺はその中でも特に重要な夏の大三角形付近の星座を任された。
白鳥座、琴座、鷲座、アンドロメダ座、ペルセウス座、カシオペア座、ヘルクレス座……
事前に予習していた成果もあって、少しは名前と形が一致するようにはなっているが、それでも細かい部分の知識は全然足りない。
だから俺は葉原に教わった通り、図鑑を確認しながら丁寧に作業を行っていく。
デネブは1等星だから赤、ベガとアルタイルは0等星だから青……
と、夏の大三角形を織り成す3つの星に印を付けたところで、正面に座る白月が突然パンッと手を叩いた。
その音で俺と葉原は作業する手を止め、白月に目を向ける。
「今日はこの辺にしておきましょう。葉原さんも皇くんもキリのいいところまで進んだみたいですしね」
「まぁ、休憩できるのは有難いんだが、まだ天体観測の時間まで結構あるだろ。これからどうするんだ?」
俺は持っていたペンをテーブルに置いて尋ねる。窓の外はまだ随分と明るい。天体観測が出来るのは、早くても20時くらいだろう。まだ4時間近くも時間があるが、その間何をして過ごすと言うのだろうか。
そんな疑問を覚えつつ白月に返すと、隣に座る葉原もグッと伸びをしてから、同じような疑問を投げかけた。
「もしかして、自由時間? 漫画とか読んでもいいの?」
「葉原さん、これは合宿よ。遊びではないの。…………だから、漫画は合宿所に着いてからにしましょうね」
そう言って白月は葉原に優しく笑みを返す。
こいつ、葉原に対して甘すぎるだろ。
なんか、ちゃっかり自分も漫画持ってきてるみたいだし。お泊まり会にし来てんじゃねぇんだぞ。
「……で、何するんだよ」
そんなことを思いつつ、繰り返し白月に問う。すると白月は、テーブル脇に置かれた自分のバッグから財布を取り出して言った。
「これから夕食を買いに行くわよ。夕食を済ませた後は、合宿所のお風呂に入って暗くなるまで部屋で待機。時間は有限。2人も早く準備しなさい。天体観測する時間がなくなるわよ」
「あっ、おい。ちょっと——」
俺と葉原は質問する間もなく、そう白月に急かされ、それぞれ自分のバッグから財布を取り出すと、そのままスタスタと部室を出て行った白月の後を急いで追いかけた。
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