第22話

今日は朝からずっと雨が降っていた。



誰だって連休明けの月曜日は憂鬱になり、学校や仕事には行きたくなくなる。


そんな人々の落ち込んだ気分が、天気として表れているかのようなそんな大雨。



俺は一番窓側、後ろから2列目にある自分の席に座りながら、野球部員が毎日丁寧に均しているグラウンドに雨がじわじわと染み込んでいく様子を眺めていた。


もちろん午前の授業の内容は、ほとんど頭に入って来なかった。


各教科の担当教師が何かを話している声は聞こえていたが、それはあくまで『音』として聞こえていただけで、『言葉』として頭に入って来ることはなかった。



昼休みにはいつも通り、輝彦と誠と3人で昼食を摂った。


2人は上の空で心ここに在らずといった様子の俺を心配しながらも、楽しげに4連休中の出来事を話して聞かせてくれた。


「昨日観に行った映画、傑作だったな」

「あのシリーズにハズレはないよ」

「晴人も一緒に来れば良かったのによ」


2人は俺が同時刻に同じ劇場にいたことなど露知らず、「あの場面が良かった」「あのシーンは感動した」などと感想を含めながら丁寧にあらましを教えてくれた。


映画館では映画が始まってすぐに眠りについてしまったため、ラストがどうなったのかちょうど気になっていたし、2人から話を聞けたのは素直に良かったと思う。


けれど、そんな2人の話を聞いている時も、俺の意識はずっと別の方向を向いていた。



廊下側、前から2列目。

いつも白月蒼子が座っている席。


白月はいつも午前の授業が終わって昼休みになると、弁当箱を持ってふらふらと教室を出て行く。そして、昼休み終了のチャイムが鳴ると同時にまた教室に戻ってくる。


だから、俺が見た時にあいつが教室にいなかったのも、別に珍しいことじゃなかった。


***


昼食を食べ終えてしばらくすると、昼休み終了のチャイムと同時に白月が教室に入ってきた。


午後の授業が始まる前に何か声をかけるべきかと悩みはしたが、結局のところなんと声をかければいいのか分からず、周りのクラスメイトと同じように静かに午後の授業の準備に移った。


午後になっても雨脚が弱まる気配はまるでなく、ボツボツと一定のリズムを刻みながら辺りを濡らしていく。


昼食を摂った後という事もあり、窓の外から聞こえる淡々とした雨音は、睡魔を誘うには十分な要素だった。


それでもなんとか居眠りすることなく午後の授業を乗り越え、無事放課後を迎えることができた。

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