第44話 矢沢永吉〜E'

 新年あけましておめでとうございます。

 昨年は色々あった年でしたね。なんか暗いニュースが多かった気もします。


 そういう中で、年の節目に気持ちの切り替えて、2021年は明るい年にするぞー、と気合を入れるのが重要であります。

 よく子供の頃母親に、1月1日っていうのは、どういう1年になるか決まっちゃう日だって迷信みたいなものを聞かされたもんです。

 1月1日にお金を使うと1年中お金を使う年になってしまうとか、1月1日に寝坊するとその1年ずっとだらしない1年になってしまうとか。多分、お年玉を貰ってすぐに使っちゃうなとか、だらだらしてないで早く起きろ、って言いたかっただけだと思うんですが、どうも40超えてもそのことを気にしちゃうんですね。

 だからなるべく1月1日はお金を使わないようにし、なるべく普通の時間に起きるようにして(二度寝したので結局遅かったですが)、今日やること1つ1つを、今年1年のやることとして良いことが悪いことかを考えてしまう癖がついてしまってるんですねー。


 まあ皆さんも、これが今年初の風呂とか、今年初のビールとか、やることなすこと全て「今年初の」みたいなこと、やっちゃいませんか。結構、それが特別で、なんとなく崇高な行いのように(って言っても普通のことなんですが)感じてしまうのが1月1日の行為。結構2日以降から、その気はだんだん薄れていってしまうのですが。


 それでやっぱり大事なのが、今年初のCDを何にするか。


 昨年2020年に、どハマりした米津玄師かKing Gnuか。それとも昨年末から突然流行りに乗って、ダンスの振付をYouTubeを見ながら練習し出して、体が追いつかなくて足を捻ったきっかけになってしまったBTSの『ダイナマイト』か。岡村ちゃんか、デュランデュランか。


 CDは朝起きてからではなく、0時のカウントダウンしてから1番最初に入れるCD。それが何かが重要です。テレビから流れてきた音楽はカウントしません。新年を迎え、今年こそはと抱負を考え、眠る前に厳選してと、CDデッキに入れることに意味があります。ちなみにCDじゃなくて、耳に入った今年最初の音楽は「笑ってはいけない...」を見ていたので、倖田來未の「愛のうた」の替え歌になってしまいます。今年もちゃんと「おもしろ荘」まで見終えて、ベットに入る前に聴くCDは、昨年から決めておりました。(ちなみに、ただ耳に入れる『聞く』と、好んでその音楽に敬意を払って『聴く』を、漢字を使い分けております)


 CDデッキに挿入し、ベッドの淵に腰をかけて流れてくるのを待つ。入れたCDは矢沢永吉の『E'』。2021年最初の曲は矢沢永吉の『逃亡者』と決めておりました。


 1曲目(トラック1)は『スタイナー』というインストのトラック2の『逃亡者』のイントロ的な音楽で、歌詞は全く新年の気持ちと関係ないのですが、ちょっと幻想的なイントロからリフに繋がる部分が、なんとなく初日の出のような感じがするので、個人的に1番初めの曲はこれにしたかった。

 このアルバムは好きな曲が多いんです。『逃亡者』でしょ。『O,Oh』でしょ。『BALL AND CHAIN』でしょ。それに『罪なデマ』でしょ。これ、小学生の頃から好きで、僕が小学4年生くらいに流行り出したウォークマンで、いつも聴いてましたよ。他にも矢沢のアルバムは『YOKOHAMA二十才まえ』と『共犯者』が好きで、『浮気な午後の雨』でしょ。『TAKE IT TIME』でしょ。『YOKOHAMA二十才(ハタチ)まえ』でしょ。『苦い雨』でしょ。『共犯者』でしょ。『少年・パートIII』でしょ。『Let's Make Love Tonight』でしょ。『キャンディ』でしょ。

 この辺りの曲を、親父のカセットテープからダビングして、聴いてる小学生。


 家族の夏の旅行では必ず車でかける曲は、矢沢。サザンや柳ジョージ、ポールマッカートニーを聴くんですけど、小さい頃は嫌だったのが、何回も聴くうちにその中でもこれなら嫌じゃない曲がみつかってくるんです。そして続けて聴くうちに、だんだん覚えてきちゃうんですね。そのうち好きになってきてしまう。

 それでみんながマイケルジャクソンやブルーハーツ、ジブリの曲なんかを聴いてる中、「りゅうくんのウォークマン、何入れてんの?」なんて聞かれて、「ん?矢沢」なんて答える小学生でした。

 みんなポカンとしてたくせに、中学生になったら矢沢の『SOMEBODY'S NIGHT』が流行って、みんなが矢沢、矢沢と言い出した時には面白くなかったのを覚えています。まあ『SOMEBODY'S NIGHT』が収録されている『情事』も好きなアルバムなんですけど。


 なんとなく刃向かったしまうのですが、やっぱり親父の影響っていうのは結構受けていて、わりと親父が聴いてたものが好きになってるんですよね。小さい頃嫌いだったものも、大人になってくると聴くようになってたり。レッドツェッペリンやZZTOPなんかも、親父の影響で聴くようになってました。


 だだ、やっぱり矢沢は別格です。「永ちゃん」の呼ぶのは照れ臭くて、むかしから生意気にも「矢沢」と呼び捨てしてしまうのですが、もし犯人目の前にしたら心臓が止まってしまうかもしれません。むかし働いていたアパレルブランドで、本社の偉い人がいて、まだ僕がアパレル業界に入って間もないペーペーだったのですが、たまたま静岡にいらっしゃった時、仕事終わりに彼女(今の奥さんです)と待ち合わせしてたら、新幹線の時間まで飲みに行くぞ、と何故かその偉い人と僕と彼女の3人で飲みに行くことになって。あとで上司に、そんな偉い人と飲みに行くなんて、と怒られたことがあります。その本社の偉い人は、雑誌の撮影で、自社ブランドの広告で矢沢永吉さんに着てもらった時に、矢沢永吉さんに紅茶を出した手の震えが止まらなかったとおっしゃっておりました。羨ましい過ぎる、と思ったのを覚えています。


 話を戻すと、むかし深夜に時々やっていたライブ番組で、矢沢の特集で丸々ライブ映像が放送されました。小学生の僕はそれをビデオ予約して、何回も何回も見ました。映像は楽屋のインタビューから始まって、楽屋から出て、廊下には会場の歓声が響き渡っています。曲のイントロが流れ、ステージ裏では矢沢が声出しをしながら階段を登っています。「hey、ワン、トゥー!hey、ワン、トゥー!」。それがカッコよくて。

 だから高校入ってから、自分のバンドのライブでは、「hey、ワン、トゥー!hey、ワン、トゥー!」と声出しするわけです。ボーカルでもないのに。ちなみにコーラスマイクもありません。

 そのライブ映像で印象的だったのは、黒人ベーシストが『少年・パートIII』のイントロ後、唸るような音を出していたのです。その頃、まだギターとベースの区別もつかなかったけど、なんだかカッコいい。しかも、そのライブではバックミュージシャンが全て外国人というのも、矢沢って凄え人なんだ、と小学生の僕に驚きと感動を与えてくれました。

 ギターをやっている親父に小さな反抗でベースを選んだのもありますが、、もしかしたら子供の頃に見た、あの黒人ベーシストの影響で、自然とベースを選んだのかもしれません。

 色んなCD聴いてきましたが、音楽を好きになった原点は、僕にとって矢沢なのです。


 矢沢ファンの方たちは、初期の頃のロックな矢沢が好きな人が多いと思います。『黒く塗りつぶせ』や、『アイラブユーO.K.』『時間よ止まれ』、もちろん好きです。ご自身のカバーアルバム『サブウェイ特急』でも新たなアレンジで聴けるし、原曲もどっちも好きです。僕よりも上の人たちは、キャロル時代から好き、というでしょう。でも、僕は初めてキャロルを聴いた時、ショックでした。

 僕はキャロルよりも、矢沢のキャロル時代のセルフカバーアルバム『TEN YEARS AGO』の方を先に聴いてしまったのです。


 わりと最近のインタビューで、むかしはロックってギターとベースとドラムがあってあとは魂で歌えばいいと思っていたけど、サディスティックミカバンドのライブを見て、アレンジにこだわるようになった、というようなことをおっしゃってました。

 全部を通して曲は大好きなのですが、やっぱり中期の、ワーナーパイオニア後期からEMI初期の頃に出したアルバムのアレンジが好きなのかもしれません。矢沢の書籍「アーユー、ハッピー?」には、あまりワーナーパイオニアにいい思い出がないようですが、その時にできた曲は素晴らしく、またその後にEMIで出した3枚のアルバム『共犯者』『情事』『永吉』は、今でもよく聴くアルバムです。


 僕如きが矢沢を語るのは100万年早いと思いますが、どんな流行りの曲や、突然ハマってしまうものが出現したとしても、矢沢はきっと死ぬまで聴くミュージシャンだと思い、この年の節目にパワーをいただいて、2021年の目標に向かって頑張りたい!そういう意味での今年の1曲目は、矢沢でした。O.K.。

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