ブラインドライト そのⅤ
「どうだ?」
俺は、さっきまでいたところを見下ろした。そこではレンガが持ち上がって、そして地面に落ちて砕け散っていた。この位置からでは、開の姿を見ることができた。
「相手の目の位置を認識していないと、アイツの超能力は意味がないらしいな…。俺の現在位置がわからなければ、光を曲げても…って感じか。だがこれでホッとしたぜ」
遠くからなら、開を狙うことが可能。どうやら勝利が見えてきたぜ!
俺は、武炉との戦いで使った大型のウォーターガンを出現させると、構えた。これを外しては、せっかくテレポートした意味がなくなる。
よく狙え…。この大きさなら、一発で仕留められる。多少ズレたとしても、俺の超能力で補正すればいい。
俺を見失った開は、キョロキョロしている。一瞬だけ顔がこちらを向いたので、俺はしゃがんだ。だがバレていなさそうだったので、すぐに立ち上がる。
「一瞬だけかなり、焦ったぜ。でもよ、流石に予想外の方向からの攻撃には、備えられないだろう? もらったぜ…」
俺はトリガーに指をかけた。開が首を振っている間に、当ててやる。
「終わりだぜ、くらえ!」
思わず俺は声に出していた。でもこの距離じゃあ、聞こえない。そして水の球を発射した。狙った着弾点は、背中だ。これは確実に行ける。
だが、そうはならなかった。開は、着弾前に消えた。
「何? また超能力を使われた? 光に手を加え…」
いや、それはない。俺がここにいることを開は知らない。わかっていなければ、光を操作しても意味がない。だとすると……。
「アイツもテレポート…。まあ、超能力者なら当たり前か」
開が何をしたのかは簡単に想像がついた。だが肝心なのはどこに行ったのか、だ。俺は開のことを探しているし、開もそうだ。どちらか先にたどり着けた方が勝ち。
どこだ、どこに行った…? そう遠くに行ってはないはずだが…?
焦って探す俺の後ろから、足音が聞こえた。
「まさか…うお!」
振り向くと、開がそこにいた。先を越された!
「目標ヲ捕捉…」
一体どうやって、俺がここにいることに気がついたのか。それは多分語ってはくれないだろうから、知ることはできそうにない。どこか俺が、隙を見せちまったと納得するしかねえ…。今は開とどう戦うかを考えなければ!
俺の目の前で、開の姿が消える。まただ。また光を屈折させて、俺の目に届かないようにされた。
だがそれは、もう攻略できる。俺は、開が出して俺が真っ二つに切った木製のまな板をアポーツで出すと、パイロキネシスで火をつけた。
一瞬、開の顔が見えた。そこか!
「クッ!」
反応が少し遅れてしまったために、水の量はそこまで多くなかった。だが、当てることはできたようだ。
「もう光を細工しても無意味だぜ! この火で空気の温度が変わって、光は歪む。お前がいくら努力してもな、俺はお前の姿を捉えることができる。対するお前は、隠れてなければまともな勝負を仕掛けられない!」
俺は勝ち誇りながら言った。煽っても意味がないことはわかっているが、反論してこないので言いたい放題言わせてもらう。
俺は、周囲を注意深く見る。開を捉えることができるとは言っても、空気の揺らぎはほんの一瞬だ。それを逃すと、こちらも厳しい。
不意に、開の手が見えた。
「そこか!」
俺は水の球をその方向に撃ち込んだ。だが、手ごたえがない。
また違う方向で、足がちらりと見えた。そっちにも撃ち込むが、やはり当たった感じがしない。
「どういうことだ?」
俺は疑問に感じながらも、開を見つけようとする。
頭が見えた。俺はウォーターガンを構えた。発射はしない。逆に俺は、後ろを向いた。
俺の後ろから、瓦が一枚飛んできた。それを俺は、水で撃ち落とした。瓦は砕けた。
「やはりな、開…。お前、ワザと俺に光を届けさせているだろう?」
火で空気が温まっていることを承知で、それをあえて利用してくるとはな…。光の歪みを計算に入れて、自分の位置を誤魔化している。
「光で物理的な攻撃をしてくるんじゃくて、俺の視覚を邪魔するとは…。やってくれるじゃねえか。だが、俺も対抗手段がないわけじゃないぜ?」
俺はウォーターガンを構えた。そして次に行うべきことは…火を消すこと。俺は、まな板に向けて水を発射。真沙子が操っているわけでもなく、火はもちろん、消える。
「目標ガ不可解ナ行動ヲ発現…。理解不可能、理解不可能…」
「それは違う。これで空気が温められなくなった」
だから空気の揺らぎは消える。そうすると、屈折を計算に入れて偽の情報を送っていた開は…。
「そこだ!」
俺はトリガーを引いた。焦ってしまった分、開をかすっただけだった。
だが驚いたのか、開は一歩下がった。
「作戦ヲ変更…。目標ヲ撃破スベク、最終作戦ヲ起動スル…!」
最終作戦? 一体なんだそれは? 全く想像できないが、まだ何か、あるっ言うのか?
次の瞬間、俺の目の前は真っ暗になった。
「!」
これは比喩ではない。本当に何も、見えないのだ。いきなり夜中になってしかも明かりが何もないような感じだ。
「何が起きた? これは、どうなっている?」
俺が叫ぶが、それでも何も見えない。もはや瞼を閉じているのかそうではないのか、自分でもわからないくらいだ。
「うぐっ!」
俺の足に、激痛が走る。何かが刺さった。だがそれが何なのか、見えないからわからない。痛みを感じる部分に手をやると、刺さったであろうものを触ることができた。これは錐か!
この工具の持ち主には悪いが、二度も刺されるわけにはいかない。水の刃で切り裂いた。その時、自分の足も少し、切ってしまった。手元が見えないから、仕方ないことだ。
「チッ今まで無血だったのに、それが破られちまうとはな…」
だが、開の最終作戦とやらが段々見えてきたぜ。おっとこれは比喩だが。
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