到着

空港に着くと、土方さんのハイヤーが迎えに来ていた。

「やあ、みんなお疲れ様。よく頑張ったね」

乗り継ぎ含め19時間のフライトは大人の僕でもキツかった。

「じいじ!」

末っ子のテンが駆け寄る。

「私も!」

次女のナナも駆け寄り、手を繋ぐ。

「テンちゃんも、ナナちゃんも、来てくれてありがとう」

「こんにちは」

長男のジンと長女のリョウカは大きな荷物を運転手に渡した。

「お兄ちゃん、お姉ちゃんもご苦労様。来てくれて嬉しいよ」


土方会長は子供達の心をすっかり掴んでいた。

出来上がった衣装を土方さんのご自宅で合わせた時のこと。

その時は奥さまもいらっしゃって、お二人は子供達をほんとうに可愛がってくださった──沢山のオモチャを用意して。元々、お年寄り好きな子供達なのですぐに打ち解け、広いお屋敷にオモチャに大ハシャギだった。帰り際「きっとまた来てね」と、奥様は少し涙ぐまれていた。


しかし驚いたのはさくらのドレスだった。

大胆にスリットが入ったセクシードレス。

「こ、これを着るんですか!?」

夫婦で声を揃えて言ってしまった。

「大丈夫、きっと似合うよ」

土方会長はウィンクして言った。


ヘアメイクをしてもらい、ドレスを纏ったさくらは素晴らしかった。


「ママキレイ!」


子供達に誉められ、恥ずかしそうに笑う。


「し、下着は?着けてるの?」思わず聞いた。ちょっとセクシー過ぎやしないか?


「うん、すごく小さいの着けてる」


初めて見る妻の姿にドキドキしてしまった。

こ、こんど家でも着てもらおう。





ハイヤーで海岸近くのホテルへ向かう。

プライベートビーチのあるそのホテルの1階、テラスから直接ビーチに出られるメゾネットの部屋が用意されていた。



「すげー!直接海に出られるよ!」



最近、親と出掛けることを嫌がる年頃になったジンまで興奮している。



「みんな水着は持って来た?出掛けるまで時間があるから、泳いでいいよ」



土方さんは、本当に人を喜ばせる天才だ。

財力はもちろんだけど、それだけで出来ることではない。

テラスの扉を開けると、ビーチと地続きになる。最早、ビーチの中に部屋がある感じ。僕達はビーチが見えるように置いてあるデイベッドに座り、冷えたビールを飲みながら海で遊ぶ子供達を見守る。風がベッドの天蓋を揺らすのが心地よい。さくらのひざまくらで寛ぐ。海を眺め、何も言わなくても充実した時が流れる。ただそれだけで十分に幸せだ。お互いにそう思っているのが分かる。いつまでもこうしていたい──



「そろそろ行ってきます」



さくらは仕上げのエステへ向かった。



「パパー!埋めるからこっち来て!」



「はいはい…」

ナナ、お願いがおかしいでしょ?

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