冥王星の騎士
有原ハリアー
本編
冥王星の騎士
複数の惑星間による連合体にして様々な人種が集う、アルマ帝国が帝都リゲルにて。
暗闇に、青いアイバイザーの光が灯る。
濃い紫を基調にしつつ、黒と銀が混ざって斑模様となった機体――リナリア・ゼスティアーゼ――は、眼前の獲物達を睨み付けていた。
「さて、貴方達」
リナリア・ゼスティアーゼから、女性の声が響く。
「旧型とはいえ鋼鉄人形を盗み、このような狼藉を働いたのです。お覚悟は、よろしいですね?」
ゼクローザス、インスパイア、ブルーネクサス、オレンジネクサスの計4機は、蛇に睨まれた蛙のように固まる。
だが、覚悟を決めた……いや、単にヤケクソを起こした4機は、戦略も何も無しに携行する47mm速射砲を連射する。
「お下品ね」
リナリア・ゼスティアーゼは何もせず、ただ前進する。
それだけで、47mm砲弾は容易く、自らの速度で自身を粉砕した。
「とはいえ、攻撃は攻撃。それも義理とはいえ、アルマ帝国現皇帝の孫に対して。
皆様、その罪がいかなるものか、ご存知ですわよね?」
リナリア・ゼスティアーゼを駆る女性は、微笑んだ声で、しかし容赦なくイメージを送る。
リナリア・ゼスティアーゼが、大剣を前に差し出した。
「その首、もらい受けますわ」
リナリア・ゼスティアーゼに備え付けられた翼状のブースターから、銀色の光が噴射される。
通り抜けざまに大剣で、インスパイアの胴体を両断した。
「まずは一つ」
インスパイアが爆発する音を聞きながら、勢いをそのまま脚部に乗せる。オレンジネクサスが蹴りを受け、胸部がひしゃげた。
「二つ」
ゼクローザスが慌ててブルーネクサスに指示する。
47mm砲を構えなおすブルーネクサスだったが、奇妙な事が起こった。
リナリア・ゼスティアーゼの盾が奇妙な形の剣と化したのだ。
その形状は、冥王星の惑星記号(“♀”に近い側)に類似していたのだ。
「遅いですわよ?」
そして、剣と化した盾はゼクローザスの土手っ腹を貫いた。ゼクローザスが膝から崩れ落ち、擱座する。
それを見ていたブルーネクサスは、身も世も無く逃げ出した。
「あら、狼藉を働いて逃げおおせるとお思い?」
しかし、リナリア・ゼスティアーゼに追い付かれてしまう。
無理もない。最大速度はマッハ4.5(5,508km/時)、しかも瞬発力も桁違いだ。
「終わりですわ」
無慈悲な女性の言葉と同時に、ブルーネクサスは盾に貫かれて擱座した。
「ふぅっ、終わりですわね。
それにしても、“冥王星の騎士”と名付けられたこの子……。相変わらず、うっとりする程の実力ね❤」
女性ことグレイス・アルマ・ウェーバーは、リナリア・ゼスティアーゼに乗ったまま、笑みを浮かべた。
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