第18話 18歳の誕生祝い
今日は3月20日(月)春分の日、私は18歳になった。朝起きるとすぐにおじさんが「誕生日おめでとう」と言ってくれた。私が18歳になるのを待っていたみたいだ。なぜなら、これで淫行条例に触れなくなるからだ。
私はずっと休日もアルバイトをしている。働けば働くほど収入が増えるのが分かっているからだ。おじさんは「アルバイトもいいが、無理をして身体を壊さないように気を付けて」と心配してくれる。
おじさんは今日、会社が休みだ。今日のシフトを聞かれた。今日は9時から5時までだった。終わったら外で食事をしようと誘ってくれた。ささやかだけど誕生祝いをしてくれると言う。お礼を言った。
お昼に部屋に戻るとおじさんは私にもう一度確認してから、この前に行った雪谷大塚の駅の近くのイタリアンレストランに電話して6時から2名の予約を入れてくれた。
5時に部屋に戻るとおじさんが待っていてくれた。少し休んでから二人で、電車に乗って出かけた。店ではもう2組が食事をしていた。二人は窓際の席に案内された。おじさんはビールを、私はジンジャエールを頼んだ。料理が運ばれてくる。
「18歳の誕生日おめでとう」
「ありがとう」
「これで淫行にはならなくなる」
おじさんが小声で言う。
「ごめんなさい。あの時、嘘をついて、どうしても住まわせてほしかったから」
「分かっているが、信用した俺が迂闊だった。つい目先のことばかりに囚われていたからだ。親父さんに脅されるとは思わなかった」
「身体で返します」
「今それを言うな」
ずっと小声で話す。
「親父さんのことどう思っているんだ?」
「どうって」
「本当に嫌いか?」
「父は母が亡くなってから変わったんです。それまで両親は仲が良くてお互いに頼りにしていました。父は仕事がうまくいかなくてそれを悔やんでいました」
「お母さんが亡くなったことが、お父さんには相当に堪えたんだね」
「支えてくれる人がいなくなって、それは悲しんでいました」
「それからお父さんの生活がすさんでいった?」
私は頷いた。
「私が傍にいると母を思い出すみたいで、私に辛く当ったんだと思います。私がそばにいると父は立ち直れないと思いました。それも家出の理由の一つです」
「そうか、何とか立ち直ってくれればいいけど」
「4月から復学するけど、学校から連絡は来ているのか?」
「4月6日(木)が始業式だと手紙が届いています」
「教科書とか、準備できているのか、制服も大丈夫か?」
「私の荷物にすべて入っていたので、大丈夫です」
「この前も言ったとおり、授業料と定期代、それに食事代は俺が出す。文房具などは自分で買えるか?」
「アルバイトのお給料で買えますから大丈夫です。定期は通学経路を決めてからにします」
「決まったら言ってくれ」
「安い行き方を考えているところです」
「それから、18歳になったのでスマホをプレゼントしたい」
「スマホですか?」
「アパートの部屋には固定電話がないし、未希と連絡が取りづらいから格安スマホを買ってやろう。俺から連絡するためだから、機体代と基本料金は俺が払ってやる。それ以上の通話分は未希がアルバイト代で払ったらいい、引落しは未希の口座からでいいね」
「分かった」
「今度の土日、未希の空いた時間に近くのショップに買いに行こう」
「はい」
携帯を持ってみたかったから私は嬉しかった。
デザートに蝋燭を1本灯した誕生祝いの小さなケーキが出てきた。おじさんが頼んでくれていた。小さなチョコの字で「ミキ誕生日おめでとう」と書いてあった。
私がそっと蝋燭を吹き消して、二人でケーキを分けて食べた。「誕生会ありがとう」とおじさんにお礼を言った。おじさんは「気にするな」と言っただけだった。
私はおじさんに歩いて帰りたいと言って、二人で手を繋いで帰ってきた。アパートに帰ってきたときにもお礼をいった。
お風呂に入ってから、おじさんは私を好きなようにした。私はおじさんに抱きついていた。おじさんに自分から抱きついたのはこれが2回目だったかもしれない。誕生会が嬉しかったのでお礼の気持ちもあった。
おじさんのなすがままになっているけど、このごろは、不快感はもうない。どちらかと言うと気持ちがいい。おじさんの気のすむようにすればいいのだと思っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます