デッドマンズ・フレイム

詠村 ハミア

はじめに

教典『ダイアードの叙事文』より要約

 世界とは、すなわち全てである。かつては強大な万物の集いであった世界は、幾多の争いの果てに五つに分けられ、平安を保った。分裂に際し、虚無となったこの地には大いなる力を持った者たちが干渉し、多くの生命を生み出した。彼らは後に“Natuwoナトゥウォ”──すなわち精霊と呼ばれ、人間達は彼らを畏れ敬った。これは偶然か、あるいは運命さだめであったのか……。


 その秩序は、一人の人間が楽園を求めたことにより崩壊した。それは、永久なる力と命を手に入れ、数多あまたの悪魔が生まれたのである。精霊に仕える人間たちは、悪魔の脅威に立ち向かった。「精霊」と「悪魔」の戦い──。終結の後にてこれを、「霊魔れいま戦争」と呼んだ。


 この戦の結末は、紛うことなき救世主、偉大なる神によってもたらされた。そう考えざるを得ないだろう。神は木枯らしのように颯爽と現れ、悪魔を打ち倒すべく、その猛威を奮った。そして我が友に、未だ蔓延る悪魔どもから逃れる術を伝え、この地に希望を振りまきながら、遥か天上の世界に帰したのである。


 悪魔の力は衰えず、いまだ人々に恐怖を刻み込んでいる。しかし、我らに救いの手を差し伸べるのは、正しく聖なる御方である。


 魔に扮するは恥ではなく、我が友の気高き行いである。願わくは、全ての子らに平穏あり、悪しき魂の猛攻が、善によりついえて行くことのあるように。その悪しき魂に、神の許しと救いの御手みてがあるように。

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