第43話 持つべきものは友 ②

 国枝の小父さん(利沙のお父さん)が手配してくれた

 部屋はシェアハウスと言っても従来の雑居型の物

 ではなく。

 集合玄関・LDK・バストイレ・ランドリー、等の

 共有スペースもあるけど。

 個人の居室にもワンルームマンションの設備がある

 タイプの物だった。


 最寄り駅にも商店街にも近いし、

 ここなら出発まで快適に過ごせそうだと思った。


 それに何より、私が注目したのは、

 入居者の約8割が留学生でその気になれば

 共有LDKで生の英語が学べるって事だ。


 今朝、マンションから宅急便で送った荷物は

 国枝家経由で部屋へ届けられていた。

  

 利沙・あつしと私は、近所のコンビニで

 弁当と酒の肴を買い、部屋で酒盛りを始めた。



「……けどさ~、宇佐見さんは大人しく引き下がる

 かねぇ~」



 と、彼なりに私を心配していたあつし。

 

 

「……結婚すれば……時が経てば、

 私の事なんかきっと忘れる」


「話しを聞いた限りじゃ、

 かなりあんたに入れ込んでるみたいじゃん?」



 利沙。

 


「……」


「本当のところ、和巴はどう思ってたん? 

 彼との事は遊びだった?」


「……いっそ遊びだって割り切れてたら、

 どんなに良かったかって思えるくらい、好きだった」



 しばらく間をおいて、あつしが呟いた。



「……胸、貸してやってもいいぜ」


「あ? 何しに?」


「お前、泣きそうな顔してるから」


「!!……」


「ガキの頃から人一倍泣き虫のくせして、

 こんな時だけやせ我慢すんじゃねぇよ」


「……」



 これまで必死にひた隠し、

 抑え込んでいた感情があつしの「やせ我慢するな」

 のひと言で、一気に溢れ出た。


 あつしは利沙と一緒に号泣する私を、

 子供の頃みたいにガシっと力強く抱き止めて

 くれた。


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