土橋桂介のレシピ
小山空
牛ランプの漬け丼
「さて、どうしたもんかな……」
普段一〇〇グラムあたり三〇〇円以上するオーストラリア産牛のランプブロックが、広告価格で一七九円と豚のブロックより安くなっていたから思わず買ってしまったのだが、
「五三二グラムか……」
かなり大きい。一人暮らしで消費期限内に使いきれるかは実に不安だ。まあ冷凍しとけばしばらく大丈夫か。
幸いブロックで買っているからまあまあ用途は広い。しかし、断面が狭いから何にでもできるわけではない。
「断面的には焼肉ならちょうどいいんだけどなぁ……」
ランプは脂身が少なく、さっぱりした部位だ。しかし、オーストラリア産となると単に焼いただけでは少し赤味臭いと感じるかもしれない。
「さて、どうしたもんかな……」
本日二度目となるこのセリフに答えてくれる者は一人暮らしのこの家にはいない。
うーむ。困ったものだ。多少我慢しても普通に焼くか。いや、せっかく安く買ったんだから目一杯美味しく食べてコスパをさらにあげたい。
赤身、赤身、赤身、赤身、…………。
「赤身か! よっしゃいいこと思いついたぞ!」
俺はさっそく調理を始めることにした。
まずはこのブロック肉を焼肉と同じくらいの厚さにスライスする。オーストラリア産のは硬いからちょっと薄めを意識した。
そしてビニール袋に、酒大さじ二、みりん大さじ二、しょうゆ大さじ三、砂糖大さじ一を投入し、かき混ぜる。馴染んだところでスライスした牛肉も投入。しっかり揉み込んでから口を結んで冷蔵庫で寝かせる。
肉を寝かせている間にタマネギの準備だ。
パリパリと割れてしまって皮を剥くのがめんどくさいが諦めずになんとか剥きおえ、頭を落とし根をくり抜いて半分に切り分ける。一方はラップに包んで冷蔵庫へポイ。今日は使わないからな。そしてもう一方はスライスして水にさらしておく。
準備はこんなもんだな。あとは肉に味が染み込むのを待ってからだ。
二十分後。
「そろそろいいかな」
誰もいない部屋に言葉を投げてキッチンに戻る。
冷蔵庫から肉を取り出し、水にさらしていたタマネギをザルにあげてキッチンペーパーで水気を切る。
フライパンを熱して油を垂らす。全体に油を回して、まずはタマネギをイン。
「あっ、っあっちいな!」
バチバチと跳ねる油に地味にダメージを受ける。タマネギの水気はもっとよく切った方がよかったのかもしれない。まあ後の祭りだが。
焦げ目がつき、色が変わってきたところで一旦タマネギは皿に避けておく。
そのままフライパンに肉をつけダレごとイン。ジュワジュワと泡がたくさん出るが、さっきのように跳ねたりはしてこない。
パチッ!
「あっちぃ!」
前言は撤回させてもらおう……。
それはさておき、肉を焼きすぎないように注意しつつ、みりんと酒のアルコール分をしっかり飛ばしてタマネギを戻す。
タマネギにもつけダレがよく絡むように混ぜたら火を止める。
「よしっ、あとは盛り付けだけだな」
丼にご飯を盛り、レタスを少しちぎって彩りを加える。その上に肉を並べて、全体にタレを回し掛けて、
「牛ランプの漬け丼、完成!」
我ながらなかなかの出来栄えだ。あとは食うだけ。
肉とタマネギとレタスとご飯をスプーンに乗せ、口に運ぶ。
やはりちょっと肉がもそもそする感じがあるが充分うまい。硬いのはオーストラリア産ならこんなもんだろう。赤身臭さがちゃんと取れているのが大きい。
赤身部位ってことで、マグロの赤身の漬け丼に着想を得て試しにやってみたが、なかなかのもんだ。また今度作ってみよう。
〜今回使った材料〜
・Au産牛もも(ランプ)100gくらい
・つけダレ
砂糖…………大さじ1
しょうゆ……大さじ3
酒……………大さじ2
みりん………大さじ2
・タマネギ半個分
・レタス2、3枚
・ご飯テキトー
〜洗い物〜
フライパン、ボウル、ザル、包丁、菜箸、スプーン、丼
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます