元厨二病な俺、異世界に召喚される!

回復師

水神殿編

1-1 龍馬、異世界に召喚される!

 いつものギルドメンバーとボイスチャットを使って、某MMOでダンジョン攻略をしてたはずなのだが……なにやら耳元で声がする。


 なんだ? 俺、また寝落ちしたのか? クラメンどもがお怒りか?―――などと思っていた。


 ダンジョン攻略中に回復職の俺がいなくなってしまうと、パーティーの全滅がその時点で確定する。こういう時はどうにかして起こそうと、パーティーメンバーはボイスチャットで呼びかけてくるのだ。



「創主様、はやく起きてくださいまし」

「御主人様、おきて~」

「あるじさま、はやく遊んでください」


 あ~~五月蠅い……でも、女の子の声???

 徐々にまどろみから目覚め、うっすら目を開けると、真っ白な眩い光の中に三人の少女が居た……いや、少女と呼ぶにはまだ幼い?


 だんだんと光に目が馴染んできたのでゆっくりと周囲を見渡す。

 どうやら俺はベッドに寝かされていて、両サイドから幼女たちに囲まれ、上からジーっと見守られているような状態だ。なぜか全裸で腰まわりにもうしわけ程度にシーツがかけられている。


 なんだこれ? どゆ事?

 ここどこだ? ゲームをしていたと思うのだが……夢の中か? 寝落ちして未だ夢の中?


 うん……やはり10歳ぐらいの幼女が三人居る。ベッドを挟んで右に二人、左に一人。

 俺が目覚めたからか満面の笑顔でこちらを見ている。


 クランの仲間に起こされていると思っていたのは間違いのようだが、これはどういう状況なのだろう?

 早々に自己では理解不能と判断し、幼女たちに直接聞いてみることにした。


 だが、その前に―――


「あの~、ここはどこ? 私はだ~れ?……分からない……」


 ここはお約束として、お決まりのボケをかましてみた。


 すると美幼女たちは凄く慌てた顔をして「えっ、まさか記憶が!」一人が泣きそうな顔で「ああ~、どうしましょう……なにかミスをしたのでしょうか」左側にいた女の子がなにか言ってるようだったが、途中であることに気づき俺は叫んだ―――


「あーっ! 俺、痩せてる!!」


 こちらでボケをふっておいていきなり話をぶった切る……だって全盛期の頃の(17歳くらい?)体型になっていたんだもん! 割れた腹筋、キュッと引き締まった太ももとふくらはぎ。体重56Kgぐらいかな? 100mを12秒前半のタイムで走ってた頃の俺だ……クソッ、これってやっぱ夢だよな~有り得んわ。


 最近メタボ体型を気にしてたから、余計に夢落ちとか腹が立つ……非常に残念だ。

 そう思いながらベッドに起き上がり幼女たちの方を見た。


「ふぁっ!」


 俺はまた叫んでいた。見てはいけないモノを見つけてしまったのだ。

 右側にいる幼女の頭の上にあってはならないモノが。


「獣ミミー!」


 寝ていた時には気づかなかったのだが、ベッドに起き上がると高さが変わり、イイ位置でそれが目に入ったのだ。


 ヤベッ、テンション上がってきたー!


「ヒャホー! 獣ミミ最高ー! むしろ夢落ちで全然OKだ! 嬢ちゃん、ちょっとだけ俺にその耳モフらせろ!」


 夢じゃなかったら、全裸でヒャッホ~状態で幼女に向かって触らせろとか言ったら間違いなく捕まる。

 獣耳幼女は、俺の奇行な言動でびくつきながらも目をウルウルさせて心配そうにこっちを見ている。


 うっ、そんな目で見ないでください―――


 少し冷静になる。


 あまりの純真な眼差しに居た堪れず、獣耳幼女から視線を外す……逸らした視線の先には―――


「エルフ!」


 真っ白い肌にピンッと尖ったやや長い耳、だが、エルフらしき幼女は俺の発言に対しこっちをを見ながら首をフルフルと横に振った。そしてバサッっと背中から黒いコウモリのような羽を生やし尻尾が伸びてきた。


「ヒェッ、悪魔!」


 ちょっとビビッて、ベッドの上で後ずさりながら隣の獣耳幼女を見た俺はあるモノに気付いた。

 そして確認のため悪魔幼女のほうを見てそれは確信に変わる。


 なるほどね……だがどういうことだろう? やはり夢落ちか?


 状況はまだ理解できてないが、にっこり笑って俺は悪魔幼女に向かってこう言ったのだ。


「やぁ、アウラ。悪魔とか言っちゃってごめんね」


 そう、アウラは悪魔じゃなく魔神、つまり女神様なのだ。

 俺に名を呼ばれたアウラは涙ぐんで俺の腰にしがみついてきた。


 うわっ! 可愛い……言っておくが俺は決してロリコンじゃないからね。

 あと、アウラさん、あんま動かないでね。シーツずれると見えちゃうから。

 俺は腰にしがみつくアウラの頭を撫でながら獣耳幼女に問いかけた。


「君は獣神のベルルかな?」 


 ベルルはうんうんと首を縦に振って頷くと、満面の笑顔で俺の胸に飛び込んできた。


 ドスッ!


「うっ!」


 かなりの衝撃だったがなんとか受け止め、ベルルの獣ミミをさり気なくモフモフしまくり堪能した。

 ベルルは俺の胸に顔をスリスリしながらクンクン匂いを嗅いで、短めの尻尾をせわしなくフリフリさせている。


 うん、犬だな―――


 くっ、可愛すぎる!


 再度言うが、俺はロリコンじゃないからな!


 左に視線を移すと期待したような目で最後に残った女の子がこっちを見ていた。

 人神のアリアだな……この子も名前を言ってほしいのかな?


 だがしかーし、ここはやっぱお約束でしょう。


「えーと、誰だっけ?」


 フッ、言ってやった……。  


「ビィエーン!」 


 ゲッ! ヤバッ……アリアをマジ泣きさせてしまった。


「ごめんアリア! ちょっとからかうつもりだったんだ」


 もう必死で俺は謝ったよ……そりゃ幼女にマジ泣きされたらおっちゃんどうしていいか分からんよ。

 女の子なんか泣かせていたら『おまわりさ~ん! この人です!』って今の時代、すぐ通報されちゃうからね。


 数分泣きじゃくったアリアだが、今は俺の足元にしがみついてヒックヒックと肩をひくつかせて泣き止みつつある。


 うん、これはこれで可愛いな……俺、ロリじゃないけどね。



 肩をしゃくらせ泣いているアリアの頭を優しく撫でながら、俺は今の状況を考察してみた。

 最後の記憶はやっぱMMOでダンジョン攻略をしていた時のものだ……そこから考えられることは―――


1、MMOプレイ中に寝落ち……今現在は夢の中

2、MMOプレイ中に寝落ち……今現在は原因不明だが、俺の知る異世界に転移・転生もしくは召還

3、MMOプレイ中に何らかの事故にて死亡……俺の知る異世界に転移・転生もしくは召還


 う~ん、どう考えても1しかないな……この世界、色々とおかしいし。



 おっ、アリアが落ち着いたので聞いてみるか。


「アリア悪かった、ごめんね。ちょっとこっち側に三人で並んでくれるか?」


 アリアをベッドの右側に移動させ三人立たせた。

 色々と可笑しなとこだらけで、突っ込みどころ満載なのだが、とりあえずこれからだな。


「えっと……なんで皆、超ミニのゴスロリメイド服?」


 みんな可愛いんだけど、変だろ?


「創主様の好みでは?」


 うん、好みだけど……。


 でも、創主様? アリア何言ってるんだ?


「夜もご奉仕です、御主人様~」


 アウラ、意味わからん。


「あるじ様の為に作りました~、褒めて、褒めて~」


 メイド服作ったのはベルルか……クオリティーめっちゃ高い、いい仕事してる。

 はぁ、まあいい。話が進まないからそろそろ真面目に聞くとしよう―――


「アリア、今の俺の状況を簡潔に説明してくれるかな? 夢とは思うのだけど、夢にしてはあまりにもリアル過ぎる……」


 姿勢を正し説明を求めた。


「はい、この世界は創主様のお考えのとおり、過去に創主様が思い描いていた空想世界です。夢などではありません。現在、創主様は次元転移に成功し、こちらの世界の神域内で地上に顕現するための待機中です」


 そう、アリア・アウラ・ベルルは俺が中学一、二年の頃、授業中によく異世界的なことを妄想し、ノートなどに落書きして遊んでいたキャラなのだ。言っておくが俺は決して創造神とか神的な凄い存在ではない……極ありきたりなサラリーマンだ。



 でも、確か当時俺が考えたキャラ設定って幼女じゃなく17歳の美少女設定……13歳ぐらいの俺からすれば少し年上なお姉さん的な女神だったはずなのだが?


「創主様のお力が必要な事案が発生しましたので、こちらの時間で千年ほど準備をし、やっと今日お迎えすることができました」


 おいおいマジかよ……準備期間千年とか、ちょっと重いんですけど……。

 これが夢落ちじゃないと仮定して、俺、元の世界に帰れるのかな?



「俺の力がほしい事案とは? 凄く不安なんだけど? 俺、普通のサラリーマンだよ? 凄い力とかないよ?」

「すぐにどうこうということはまだないので、地上世界に送ってからゆっくり説明したいと思います」


 まぁ、千年の準備期間とか言ってる時点で急ぎではないよな……大事ではないのか?


「うーん、いまいち分からん。話を進めてくれ」

「創主様をこちら側に転移する際に、私たちの試算より多くのエネルギーが必要でした。集めた千年分のエネルギーでも少しばかり足らなくて……一度転移魔法を発動すると途中で止めるわけにもいかないのです。千年分のやっと溜まった神力が無駄になってしまいますからね。竜神たちも身を削って足らない分のエネルギー補充に充てて協力してくれたのですが、彼らは地上に顕現している身、あまり減ると肉体自体に影響が出ます。本当にギリギリまで提供してくれたのですがそれでも足らず、女神である我らも身を削り、それをエネルギーに変えてなんとか創主様を転移させることに成功しました」


 身を削るとか、肉体に影響とか……かなり無茶して召喚転移させたんだな。

 その事実が俺を不安にさせる――こちらに召喚するだけで千年分のエネルギーとか、やっぱ俺、元の世界に帰れないんじゃないか? 帰る分のエネルギーとか残してないんだよね?


「創主様の御要望では、私たちは永遠の17歳設定だったのですが……申し訳ありません。集めていた信仰心である神力がほぼ空になってしまいましたので、今後の消費をできるだけ少なくするために身の器を小さくし、このような幼子になってしまっています。本当に申し訳ありません」


 永遠の17歳設定とか言うのヤメテ~! 謝らないで! 俺の黒歴史をばらさないで!


「『身を削った』の意味がいまいち分からないが、神のエネルギーの元になるのが人々の信仰心で、溜めてあった神力をほぼ使い切っちゃったから燃費の良い体に自ら変えた……ということか?」


「はい、ここは創主様が空想され、創られた世界。人々の信仰心を糧に『電脳ユグドラシル』で管理された異世界です。私たちは女神であり、この世界の者たちの信仰の対象です。神力が溜まればいずれ元の姿に成長します」


「『身を削り』と表現しましたが『エネルギー体である自らを消費して』という方がより正しいのかもしれません」



 大体理解した。


 この世界は、昔、俺が空想していた世界が異世界として何者かの手によって具現化した? もしくは創造された? そのときの『俺設定』が色々とこの世界に影響しているんだな。



 竜神とか言っていたが、聞かなくてもなんとなく分かる。

 だって俺が過去にそういう設定にしたのだから……竜神が居るという世界に。


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 お読みくださりありがとうございます。


 この作品は『セリシール』というタイトルで最初公開していた私の処女作です。

 何度か改稿済みですが、処女作故にそれでも序盤のグダグダ感はまだ残っていますw

 今後も少しずつ手直しします。


 作者的にはグダグダ感の強い説明回のところはグッと堪えて、15話まで読んで頂きたいです。



 他作から覗きに来て下さった方に


 キャラ名・スキル等はこの作品から使いまわしているものも多いです。

 混同して感情移入しにくいという意見もありますが、ストーリー的に関係ないので、あまり気にせず読んでくださると有難いです。私が執筆した中では、この作品が一番ほのぼの系の作品だと思います。



 面白いと感じてくれた方はフォロー登録し、継読して下さると嬉しいです。

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