18.決断のスライム

「それで……ティナもメンバーに加えたいんだけど、良いかな?」


 答えは決まってるけど、一応ってやつだね!


『おっけおっけー!』


 ――ぽいい~ん♪


「は、はい……!」


「問題無い」


 二人(と一匹)の返事を聞いて、クリスはホッとしたみたいだ。

 仲良しの子を仲間外れにするなんて、そんな意地の悪い人はいないよぉ。


「良かった! 合流はまだ先になるだろうと思って何も説明していなかったから、ちょっと不安だったんだ」


「あら、すぐに追いかけますと言いましたのに」


「ティナはそう言ってたけど、おじさんの剣幕けんまくを見たら……ねぇ? 私ももっとかかると思ってたよ」


「いや、俺はこんなもんだと思ってた。こいつ、見た目よりしたたかだぜ」


「うふふ♪」


 特に否定はせず、か……中々のやり手だね?!


「お前、クラスは何だ」


「まだ言っていませんでしたね、修道士クレリックですわ。」


 回復や補助の魔法が使えるクラスだね!

 クレリックは武闘派の人もいるクラスだけど、ティナは戦わない方かな?

 モンスターを殴ったりしなさそうな感じだもんねぇ。


「なるほど。バランスの良いパーティーだな」


「だろ? 小さい頃から皆で冒険者ごっこをしたものさ」


 小さいクリス達の冒険者ごっこ……和むなぁ~。

 きっと冒険に憧れてたんだろうね。


「そんで、あとは前衛の火力職がいれば一番なんだがな」


「今は将来有望なフェリ君がいるじゃない! ねっ!」


「が……がんばり、ますっ!」


「あら、あの黒いスライムさん……ニイムちゃんって、強いんですの?」


 ん、ボク? 強くないよ!

 フェリってば、テイマーなのに従魔のボクより強くなってきてるもんね!

 ボクはマスコットキャラですのでー。


「いや、従魔の力じゃなくてフェリ自身がすごいんだ。つい数日前から双剣を使い始めたんだけど、もう基礎が出来てきててさ。努力家っていうのもあるけど、すごい才能だと思うよ!」


「まあまあ! まだお若いのに強いのですね!」


「い、いえ……みんなが、たくさん教えてくれる、ので……それで……」


 みんなに褒められて、嬉し恥ずかしテレテレのフェリちゃん。

 んふふ、お父さんであるボクも鼻が高いよ!


「それでは冒険の準備は万端ですわね! 明日から楽しみですわ~♪」


「いよっし、んじゃ今から飲みに行こうぜ! ファスールダンジョンの中ボス撃破と、ついでにティナが追いついた記念ってことでよ」


「まあっ! 中ボスのお話、聞きたいですわ!」


 ついで扱いされても全く怒らないねぇ、ティナは。


「歓迎会は俺も賛成だ。でも明日もダンジョンに行くんだから、あんまり飲みすぎないようにな?」


「わーってるって! ほれ、お前達も行こうぜ」


 シーロはアインとフェリを促し、夜の町に繰り出そうとしている。

 ボクは楽しそうなみんなを眺めながら、とある事を真剣に考えていた。


 歓迎会が始まっても、ずっと……たくさん、考えていた。




***




「わざわざ外に連れ出して……話とは何だ」


『んーとね、ちょっと相談? みたいな?』


 クリス達が寝静まった後、ボクはアインと宿の裏庭に出た。

 話を聞かれないよう念のため、ってやつね。


『前、お前の本当の望みは何だーって言ってたでしょ?』


「ああ、そんなことを言ったな」


 進化する前、強くなりたいって言ったボクにアインが尋ねた言葉だ。


『あれから考えたんだけどね、やっぱり……色んなものを見て周りたいなー、って』


 景色だったり人だったりモンスターだったり。

 とにかく、この世界のものをたくさん見てみたい。


「今のパーティーはどうするんだ?」


『ちょっと……いや、ものすごく悩んだけどね……抜けようかなって思ってる』

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