16.神とスライム
えっ…………。
ボク、神様……?
だって念じれば何でもできて、
「……ニイム?」
『あ、フェ……フェリ……』
不安そうな顔をしたフェリに抱き上げられた。
ボクがいきなり固まっちゃったから、心配してくれたんだろうな。
「どうしたの? 進化で……疲れた?」
『う、うん……そう、かも。そうみたい……』
「じゃあ……ぼくが運ぶ、ね? もうダンジョンは終わりだから、もうちょっと……ガマン、してて?」
『ありがとう、フェリ……』
フェリの優しさに甘えたい気分だ。
温かい腕の中でなら、この衝撃も上手く消化できそう……。
「疲れたら言え。俺が持ってやる」
「あ、ありがとうございます、アインさん。でもぼく、平気です……からっ!」
「そうか」
そうだ、アインだ。
あの会話の感じ。
『あ、フェリ! 君も疲れてるだろうから、今日はアインに運んでもらうよ!』
抱えてもらえば、こっそり話せる。
アインは護衛としてクリス達から少し距離を取って歩くから、丁度良いかもしれない。
フェリの温もりは惜しいけど、このチャンスを活かそう。
「え、でも……良いの? ぼくなら平気、だよ?」
『全然だいじょーぶ! もうアインとも仲良しになったからね。守ってくれてありがと、フェリ!』
「そう……それなら……アインさん、お願いします」
『よろしくね~』
「ああ」
そっと受け渡されるボク。
みんなと少し距離が開いたところで……よし、これでナイショ話もやり放題だ。
『ねぇねぇアイン! ちょっとナイショで話したいことがあるんだけどっ』
「何だ」
『ボク、さっきの進化でいっぱい思い出したんだ。アインのことも、たぶん……』
アインの指がピクリと動いた。
『アインって、一ノ神……だよね?』
「そうだ」
即答だね!
そっか、やっぱりそうなんだ……。
ってことはボクは二ノ神……神の一人だ。
名前の一部を思い出した時に『にの――』って聞こえたのは、これのことだったんだぁ……。
『ボク、自分が元・神だとは思わなかった……』
「正確には今もだ。今は一時的に
『そっか……』
じゃあ、望んだスキルが手に入ったり進化できたりするのも、神の力の影響なのかな。
モンスターにだって元々そういう特性があるけど、ちょっと都合良すぎたもん……ね。
『あ、リーリオも知ってるよね? アインも話せる?』
「俺からは呼び出せない。あれはお前の天使だからな」
『そっか、そうだよね……』
そう、リーリオはボクの天使。
神だった時に作り出した、ボクの使いだ。
「ただ、感知はできる。目の前で通信しているなら見聞きできるし、離れている場合でも通信していること自体は感じられる」
『おお、さすがはイチだね!』
イチは前のボクの呼び方だ。一ノ神だからイチ、二ノ神だからニノ。
お前とか君とかって呼ぶことが多かったけどね。基本的に二人だけだったしさ。
『そいじゃあリーリオ、かもーん!』
すっと静かに画面が浮き上がってきた。
登場時に静かなリーリオ、珍しい!
『お久しぶりです、一ノ神様。ニイムさん……いえ、二ノ神様も、御無事に記憶を取り戻されたようで、何よりです』
『そんな
『……はい!』
そういえば、リーリオって前はあんなハジけた感じじゃなかったよねぇ。
ボクが転生して居なくなったから変わったかな。
スライムのボクが可愛すぎて、愛の実がハジけちゃった系?
可愛さは罪だねっ!
「それで。これからどうするつもりだ?」
『このままフェリ達と一緒にいるかーってこと?』
「そうだ。お前は以前、人間達と深く関わるのは良くないと言っていただろう」
『うん、ボクのせいで何か影響が出たらヤだなーって思ってさ……』
何でもかんでも神様のせい、神様のおかげ~っていうのはちょっと……ねぇ?
『私は地上に降りられた以上、ニイムさんのお好きにされたら良いと思うんですけどねぇ。何か影響が出ても、それはそれ、ということで……』
『まぁね、元・神っていっても今はスライムだもん。大したことは出来ないし、影響が出たとしてもものすっごくちょびっとだと思うよ~』
「なら、このままパーティーに居続けるのか?」
……難しい問題、だなぁ。
『……アインは? 君こそどうするの?』
「俺はお前についていくさ。このパーティーの奴らも、嫌いじゃないがな」
んもー、ボクに丸投げだね?!
いやまぁ、最初に誘ったのはボクなんだけどさっ!
『私はどんな選択でもニイムさんを応援しますからっ! 例え魔王を目指すことになったとしても!』
いやいやいや、何で魔王を目指すのッ?!
言いたいことは分かるけど、おかしいよね?!
「まあ、今すぐに決めなくても良いだろう」
『そう、だね……ちゃんと考えるよ』
フェリのこと、クリス達のこと、ボクのこと。
……ホントに、ちゃんと考えなくちゃね。
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