5.申し訳なさスライム

「考えたことはなかったが……まぁ、好きか嫌いかで言えば好きかもしれんな」


「ぼ、ぼくもニイム、好きです。えっと……かわいい、ですもんね」


「可愛い……? これがか?」


 ちろり、と視線を寄越すアイン。

 失礼だなぁ、なんだよーボクってば可愛いじゃんかよー。

 色は黒くなっちゃったけど、このぷにぷにボディと愛らしい動きがベリキュー♪ でしょ?


 ――ぽい~ん、ぽよよ~ん♪


 ……っちぇ、アインってばピクリとも反応しないでやんの!


「長いこと見てきたが、可愛いとは思ったことがないな」


「長い、こと……?」


 えっ。

 や、やっぱりストーカーなの?!


「ああ。いつも変な事ばかりしていた。可愛いなどというものではない」


『へ、変ってなんだよー! テキトーに変なこと言わないでよっ』


「適当ではない。スライムになるなど、変以外の何だと言うんだ」


 え、ええー?! ボクの声が聞こえてる!

 っていうか『前のボク』の知り合い?!


「ニ、ニイムの声、聞こえるんですか……?」


「ああ」


『アインのばーかばーか、聞こえてるー?』


「おい……聞こえていると言ってるだろう。馬鹿はお前だ」


 ばっちり聞こえてるみたいだ。てへっ。


『アインって、前のボクの知り合い?』


「お前、記憶が無いのか?」


「ニイム……前のって、なに?」


 あ、しまった!

 転生したってこと、フェリには言ってなかったんだった。


「なんだオメーら、何の話してんだ?」


「何か問題でもあったのか?」


「なんだったら、私たちで相談に乗るよ?」


 わー! クリス達も聞いてるんだった!

 どうしよう……あんまり色んな人に言わない方が良いよね?


『アイン、こっち来て! フェリはみんなとちょっとだけ待ってて!』


「う、うん……」


 ――ぽいんぽいんぽいんっ


 アインと二人だけで部屋の隅に移動する。

 この位置なら話し声はそこまで聞こえない……はず!

 はたから見たらアインは、スライムと話し込む変な人だけど。

 まぁ、それはいいや。


「おい、記憶が無いのか?」


『ほんのちょっとはあるよ。前はスライムじゃない何かだったってこととか、自分の意思で転生したってこととか』


「周りにいた者の記憶は?」


『名前が分かるのはリーリオぐらいかなぁ』


 もう一人、中二病の真っ黒い人がいたけど……あの人の名前は分からない。

 でも顔が違うしダークエルフじゃないし、アインじゃないのは確かだね。


「……そうか」


 ちょっと残念そう、かな。

 アインってやっぱり前のボクの知り合いなんだ。


『わ、忘れてゴメンね? でも今ちょっとずつ思い出してるところだから! そのうちアインのことも思い出すはずだから!』


「別に、どちらでもいいさ」


『うぅ……ゴメンってばぁ~……』


 自分が覚えてるのに相手に忘れられてるなんて、悲しいよね……。


『また進化したときにドバーっと思い出すと思うから、もうちょっと待ってて! あっ、ネタバレしちゃダメだからね?! ボク、絶対アインのこと思い出すから!』


「……お前がそう言うのなら」


『良かった~。ゴメンね、ありがとう!』


 こうなったら気合入れてレベル上げないとね!

 まったりのんびりやってちゃ、アインに申し訳無さすぎるよぉ。

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