第1480話 ジッコとバッコ
何のことかわかります? 『ジッコ』と『バッコ』って。
これね、『お爺さん』と『お婆さん』です。秋田弁で、『お爺さん』と『お婆さん』を指す言葉です。
これはですね、宇部夫妻に起きた、『ジッコ&バッコ』絡みの事件(事件というほどでもない)のお話。まさか同日にそれぞれジッコとバッコに関する事件があろうとは。さすがは仲良し夫婦です。被るタイミングまで同じなのかよ。
仕事を終え、スーパーへGOです。その日は土曜日、例の玉子の日です。
早々と仕事を終えた旦那がですね、玉子を確保してくれまして、それで店内で待っててくれるというので、急ぐ必要はないんですけど、それでもやっぱり早く会いたいですからね、気持ち急ぎ足で店内を移動しておりました。
すると、見知らぬおばあちゃん(以下:バッコ)に「ちょっとすみません」と話しかけられました。人の顔を覚えないことに定評のある私です。やけに親し気に話しかけて来たものですから、もしかして知り合い? と足を止めました。
宇部「何でしょうか」
バッコ「牛乳売り場はどこ?」
宇部「(私、ここの店員じゃないんだけど……?)えっと、あっち、ですけど」
一応ね、行きつけのスーパーですから、牛乳売り場がどこかなんてわかってますとも。何ならそっちの方から来ましたし。これが自分の店で勤務中なら「ご案内しますねー」の流れなんですけど、さすがにそこまでする義理はねぇし、私は旦那を待たせている! そう思い、牛乳売り場の方を指差しました。特に難しいこともなく、通路をひたすら真っすぐ行ったところでしたし。
が、そのバッコ。ちょっと「は?」みたいな顔してるんですよ。何で案内してくれないの、とでも言いたげな顔とでも言いましょうか。まぁそう見えたってだけなんですけど。だけど、わかったんなら、「ありがとう」の一言でも言って牛乳売り場に行くじゃないですか。なのに、動かないんですよ、その場から。えっ、私にこれ以上何を求めてんの? そう思ったので、
宇部「あの、私、ここの店員じゃないです」
そう言ったわけです。だから、あなたのことを売り場まで案内したりはしませんよ、と。そういう意味を込めて。
そしたら。
バッコ「そんなのわかってるわよ! 知ってそうだから聞いたの!」
豹変ですよ。
何かいきなり怒られたんですよ。
そんでぷりぷりしながら牛乳コーナーに行ったんですよ。
いや、何これ。完全にもらい事故でしょ。私の行動で怒られる箇所あった? まだね? 「わからないから案内してくださる?」くらいのことを言われたらね? そうやってお願いされたら仕方ないから案内しましたよ。でも、そんな言葉もなかったんですよ。そんでもちろんありがとうの一言もなく、何なら怒られたわけです。しかもすぐ近くに店員さんいたんですよ。そりゃ私の方が近くにはいたけどね? 案内してほしかったんならそっちにお願いしてくださる!?
そんなこんなで旦那と合流する頃には何だかぐったりですよ。
で、それを旦那に話したらですね、
旦那「何か偶然だなぁ。いや、俺もさ、さっきジッコにやられて」
宇部「何、良夫さんはジッコにやられたの? 何やられたの?」
旦那「肘で殴られた」
宇部「殴られ……?! 傷害事件?!」
旦那「まぁ、殴られたは言い過ぎなんだけど、普通にぶつかったってだけなんだけど」
どうやら、お店(スーパーとは違う)から出ようをした時、ちょうど入店するところだったジッコとすれ違う形になったらしいのですが、その時、なぜかそのジッコはフードを被りながら歩いていたらしく。お店の出入り口なんて、まぁまぁ狭いわけです。さすがにすれ違う瞬間は肘を閉じる(割と脇を大きく開いていたそう)だろう、みたいな気持ちで油断していると、そんなことは一切なく、そのジッコの肘が旦那の肩辺りにぐっさりと刺さったそうで。
旦那「それが思った以上に強くてさ。なんかもう普通に『ヴッ、痛ってぇ!』とか声が出たんだよね」
宇部「大の大人が声を上げるほどの! それで? そのジッコはよ」
旦那「そのまま行っちゃった」
宇部「えっ? 謝罪もなし?!」
旦那「ないない。何なら『何だこいつ』くらいの顔された」
宇部「えっ、ジッコ的にはいきなり『ヴッ!』って叫んだ謎の男になってるってこと?」
旦那「思わず『ごめんなさいは?!』って叫ぶところだったよ、俺」
宇部「ウチの子に対するやつじゃん」
旦那「『わざとじゃなくてもごめんなさいでしょ!』って」
宇部「完全にウチの子に対するやつじゃん」
何でしょうね、こういうジッコとバッコばっかりじゃないってわかってはいるんですけど、こういう人ばっかりだったら老人に優しくしましょうとか言われても無理ですよ。宇部さんそこまで聖人じゃないから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます