第1455話 プロがそう言うんだから

 忘れるところでしたが、旦那と『大 乙嫁語おとよめがたり展』に行ってきたのでした。


 秋田県は横手市の増田というところにある、『横手市増田まんが美術館』で原画展をやる、ということで、車で1時間半くらいでしたかね。急ぐ旅でもありませんし(子ども達いないし)、のんびりのんびり向かった感じです。


 秋田県、私が知らなかっただけで、有名な漫画家さんたくさんいるんですよ。最近の若い方ですと、『チェンソーマン』の藤本タツキ先生が有名ですね。


 あと、大御所の先生ですと、何といっても


・高橋よしひろ先生……『銀河-流れ星 銀-』

・矢口高雄先生……『釣りキチ三平』


 このお二方でしょうか。たぶんどちらの作品も呼んだことはなくとも、絵を見たことがないって人はいないと思うんですよ。私もね、読んだことはないんですよ。でも、何か知ってる。銀の方はアニメをチラッと見たことがあるからかもしれませんが。


 とにかくまぁ、いたるところに高橋先生、矢口先生の絵があるわけです。とはいえ、それだけではなくて、色んな漫画が置いてあったり(自由に読める)、手書きの原稿が保管されていたりします。まさに美術館です。


 そんな『まんが美術館』に、乙嫁(の原画)が来たわけですね。写真OKのところはもうバッシャバッシャ撮りました。何せ原画ですので、近付いてよーく見ると、うっすら鉛筆の線とかあるんですよ。消した跡とか。ちょっと感動しますね。


 最近はデジタルで漫画を描く漫画家さんも増えたと思うんですけど、その場合って原画とかどういう扱いになるんでしょう。私もごく稀に絵を描く(例の将棋駒のやつです)んですけど、あんなクソみたいなイラストでもですね、実はいっちょ前にレイヤー的なものを駆使してるんですよ。


 レイヤーってなんぞ、って思われた方のためにちょっとご説明しますと、透明なフイルムを数枚重ねたものをイメージしていただけるとわかりやすいと思います。

 例えば一番下のフィルムに下書きをしまして、二枚目のフィルムでそれをなぞって清書。下書きのフィルムは取っ払ってしまえば消しゴムいらずです。そんでさらにその上のフィルムに色を塗るわけです。もしその下の清書した線の上に色を塗ってしまってもですよ、フィルムの位置を変えれば良いわけです。あっという間にくっきりした線が復活! 


 このレイヤーの何が便利って、全部重ねて出来上がったものは、パッと見、1枚の絵に見えるんですけど、行程別で全部違うフィルムに描いているので、あー、この小物ちょっと消そっかな、って思ったら、本当にそれだけ消せるわけです。色を塗ったところとかにも影響が出ない。


 というわけで、これを一度知ってしまうとですよ。アナログで絵を描く時になんかめちゃくちゃ緊張するんですよ。失敗出来ない、って。


 どっちが良いのかっていうのは置いといて、アナログにはアナログの良さもあるし、デジタルにはデジタルの便利さもあるよね、っていう。

 

 いや、今日言いたかったのはそこじゃないんですよ。

 お前よくもまぁ関係ないことを1200字も書いたな。しめしめ。


 その原画展、原画やお仕事道具などなどの展示以外にも、先生へのインタビューもありまして、その中で特に気になったものをご紹介出来ればな、と。写真OKのパネルに書かれていたものなのでここに書いてもOKなはず。


 それがこちらです。


『お嫁さんの話にはほとんど関係がないのですが、時々動物の話をねじ込む癖があり、それは完全に私の趣味です。中央アジアを描くためのひとつの視点と受取って、出てきたら、ああまた森が辛抱たまらなくなったんだな、思ってやってください。(原文ママ)』


 確かにですね、こう、番外編と言いますか、本編にはあまり関わらない感じのお話が挟まることがあって、それはそれはリアルな動物が登場したりするわけです。私なんかは「えっ、あの二人はどうなったの?!」とやきもきする気持ちはありつつも、まぁ先生にもお考え(構成とか、ページの関係とか)があるのだろうと読んでいたのですが、成る程、辛抱たまらなくなっていたわけですね。


 皆さんもありません? お話の本筋には関わって来ないような小物やら作中作にやたらと力入っちゃったりすること。私はね、あります。たくさんあります。


 でもね、プロの先生もそうやって自分の好きなことをやりながら頑張ってるんだな、って知れてね。まぁそもそも漫画は好きで描いてるんでしょうけども、だけど、プロだって「クソッ、本当はもっとここを描きたいのに!」みたいなのがあると思うんですよね。そういう時って、マジで辛抱たまらんかったら描いちゃうんだな、って思ってですね、ああ、この人も人間なんだな、って。


 もうね、プロがそう言うんだから、私も好きなように書こうって思いましたね。一緒にすんなよ、って話ですけど。

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