第1222話 お絵描き按摩さん

 あれですね、1222話っていうのはこれゾロ目なんですかね。222部分を見ればそりゃあゾロ目なんですけど、先頭の1が邪魔してきますよね。2222なら文句なしのゾロ目なんですけど。


 というわけで、そんなゾロ目ネタもないものですから、これは1が邪魔なので仕方ないということで、ゾロ目関係ない話書きますけど。


 実は先日ですね、身内に不幸がありまして。

 旦那の祖母なんですが、御年98で、持病もなく、老衰でした。大往生でしたね。というわけで、お別れは悲しかったですけれど、本当に98年間お疲れさまでした、という感じのお見送りになりまして。


 それでですね、まぁしんみりした部分は割愛させていただきますけども、ウチの子達が各々の分野で頑張って来ました、という話をしようかと。


 まずは息子君です。

 彼は続々とやって来る親戚の方々に対し、どういうわけだか「マッサージしましょうか」と声をかけていました。98歳の祖母の親戚の方ですから、もうほぼほぼ高齢者です。皆さんお優しく、軽い挨拶の後で突然謎のサービスを勧める息子にドン引きすることもなく、「あらあら、それじゃあお願いしようかしら」と言ってくださいました。ぶっちゃけ親(私)は冷や汗です。お前いきなり何言ってんだ、とヒヤヒヤしてました。


 というのも、ここ最近、息子がマッサージブームなんですね。何か買ってほしいもの(本か食玩)があると、パパに交渉するわけです。すると「それじゃあ今日から一週間お手伝いを頑張ったらご褒美として買ってあげる」となりまして。


 それじゃあ何のお手伝いをしようか、と考えた息子が提案したのが『お母さんの肩揉み』だったのです。それがちょうど私の首が治った直後のことだったので、子どもの力とはいえ、むしろ加減を知らない子どもの力だからこそ首付近をあれこれされるのは怖い、ということで『ハンドマッサージ』をお願いしたところ、その日から熱心に私の手を揉んでくれるようになったというわけで。なのでいま一時的に彼の中でマッサージが熱いんですよ。

 

 恐らくは彼なりの精一杯のおもてなしだったのでしょう。

 とにかく色んな人の肩を揉んでいました。そこはハンドマッサージじゃねぇんだ、とも思いましたが。


 さて、さんざん揉み倒した後は彼も休憩です。

 旦那の実家なので、ここは彼のホーム。いつものお絵描き道具を引っ張り出し、黙々とお絵描きをしておりますと、絵を見たお客さん達は口々にうまいうまいと褒めてくれます。息子も嬉しそうです。ありがとうございます。そして、そんな彼の絵を見た誰かが言いました。


「息子君、せっかくだから大ババ(曾祖母)の絵を描いて一緒に(棺桶に)入れてあげたらどうかしら」


 私はヒヤヒヤです。

 何せ息子はアーティスト。

 親が、これを描いて、とお願いしても余程興が乗らないと描いてくれない子です。我々の提案ならまだしも、お客さんです。何とか空気を読んで描いてくれ、息子! 祈るような思いで彼を見つめますと――、


「いいよ!」


 息子!

 お前!

 大人になったな!

 そういうの出来るようになったんだな!


 私の中の全私がスタンディングオベーションです。

 おい、誰かビール持って来いビール! もう優勝だろこれ! ビールかけしようぜ!


 息子は紙と鉛筆を持つと大ババの部屋に行き、遺影の前にちょこんと座ってさらさらと描き上げました。誰が見てもそっくりと唸るほどの出来でした。ちょっと福耳気味の耳も、ちょっとだけ跳ねているサイドの髪の毛までばっちりです。


 それを棺桶の中に入れてもらい、最後のお別れをしたわけですが、三人いる曾孫の中でやはり彼が一番泣いていました。年齢的な部分もあるんでしょうけど。普段からそこまでかかわりがあったわけではないのですが、それでもこの世から『いなくなる』というのが、彼には辛かったみたいです。


 娘の頑張りについては次回に持ち越させていただきます。

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