第1212話 妄想尻選手権

 またね、馬鹿みたいな夫婦の会話を載せておこうと思って。

 というのもですね、今回は「第1212話」じゃないですか。これね。宇部夫妻の結婚式を挙げた日なんですよ。我々、2010年の12月12日に式を挙げてるんですよ。予定では2011年の9月とかだったんですけど、挙げたかったところが年内で一旦改装のために閉めるってなってて、年内ならお安くなりますよ、っていうものですから。


 そんでほら、もし予定通りに翌年の9月にしてたら震災でそれどころじゃなかったはずなのでね、まぁ、そういう意味でも運が良かったな、って思うなど。


 まぁそれはいいです。


 ある夜、二人で洗濯物を干していた時のことです。息子のズボンを干そうとしてふと思ったんですよね。何か柔らかい素材のハーフパンツでした。こういう柔らかい素材のズボンを履いてる時の息子の尻はマジで最高なんだよなぁ、って。


宇部「……これ履いてる時の息子君の尻がさ、もうすんごいんだよね、ぷりんぷりんで」

旦那「わかる」

宇部「あいつ何であんなにぷりんぷりんなんだ」


 もう思いついたらすーぐ口にしちゃうから。特に同じ空間に旦那がいたらもう止まらないから。だって乗っかってくれるってわかってるから。


宇部「もうさ、マジで何らかの大会ないかな、って思うわ。尻選手権よ。全国の尻猛者共が集うやつ」

旦那「ほう」

宇部「そんでさ、その時の息子はあくまでも付き添いとか応援とかなんだけど、目をつけられちゃうわけ。かつて行き過ぎた指導とかで生徒を潰しちゃったとかそんな過去があって、いまは第一線を退いてる(尻だけに)伝説の元コーチとかに」

旦那「成る程」

宇部「こいつは光るものを持ってる! とか言ってさ。いかつい顔で禿げ頭で、そんでほっぺたに謎の傷跡とかある感じの(完全にあしたのジョーの丹下段平のイメージに引っ張られてる)」

旦那「ふんふん」

宇部「もうね、息子君の登下校時とかにね、自転車で追いかけ回すのよ『お前の尻なら世界をとれる!』とか言ってさ。そんでまぁ、子どもの方にアプローチしても駄目だ、ってことで、菓子折持ってウチに来るわけ」

旦那「よし、俺はその時こう(腕を組む)だな。目をつぶって、ううん、とか唸ってるわ」

宇部「いいね。それでね、もう土下座よ。そこでね、その彼が第一線を退くに至った過去エピなんかも涙ながらに語ったりしてね、そんで良夫さんも思わず涙よ。鬼の目にも涙か、っつってね、別に良夫さんそんなキャラじゃないんだけど。私もね『あ、あなた……』とか言ってね。普段『あなた』なんて言わないくせに」

旦那「これは手を取り合うね。よろしくお願いします! つってね」

宇部「そう。そこから始まる尻サクセスストーリーよね」

旦那「尻上りね。尻上るわけね」

宇部「――ブフォッ?!」

旦那「あれ? 違うの? 息子君が尻で尻上る尻サクセスストーリーなんでしょ?」

宇部「違わないけどさ。よくそこで『尻上る』とか出て来たよね」

旦那「えー? 出るでしょ。成り上がる的なノリで尻上るは出るでしょ」

宇部「少なくとも私には出なかったよ」


 夜の8時とかですよ。

 洗濯部屋でね、そんな会話してね、腹筋がはち切れるかと思いましたわ。


 この人の語彙力どうなってんだ。勝てない。旦那のこういう咄嗟の語彙力に勝てない。勝てる気がしない。畜生、無許可で丸パクリしてやるからな。いつか『尻上る』って自作で使ってやる。いつ使うんだこんなの。


 もう旦那が小説書け。コメディ小説お前が書けよ。

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