第1045話 ごめん、うどんで

 女性にはですね、まぁ月に一度、体内に仕掛けられた爆弾がどかんと爆発する時期があるんですね。個人差はあるんですけど。


 安定して(症状が)重い人もいれば、軽い人もいるし、先月は軽かったと油断していたら、今月はクッソ重かったりとか。


 私は月によってばらつきがある方で、痛みの方もさることながら、Bが良く出るパターンと逆に出るパターンなんていうのもあります。ただ、どんな時でも必ずあるのが、「いま運転してたら確実に事故ってる」レベルの眠気です。眠くなる成分が入ってる風邪薬とか飲んだ時くらいのやつですね。働いていても瞼が落ちてきます。レジを打ちながら寝落ちしそうになったこともあります。良かった、車の運転をしない人間で。


 それでですよ。

 今回はそれに加えて腹痛がすんごくてですね。普段は全然そんなことないものですから、たまにそういうのにあたると辛くて仕方がないわけです。痛みには強い方だと思ってたんですけどねぇ。


 ありがたいことに、そういう時は旦那がいつにも増して色々動いてくれるものですから、甘えまくって家にいる時は基本横になっているわけです。


 さて、そんな体内ボンバーマンがイキイキと活動しまくっているある日のこと。

 仕事が終わり、帰宅しました。休憩のLINEのやりとりで、本日の夕飯は旦那が作ってくれることになっています。何かお惣菜でも買ってこようか、という申し出もあったんですけど、どうしても使いたい食材(使いかけのきのこ類)があったので。


 とりあえずそれを使ってくれ、というのは伝えたものの、具体的にこれを作ってくれ、という指示は出せないまま休憩は終わりました。


 というわけで、「冷蔵庫にある使い掛けのきのこと何かを使って夕食を作る」ということだけが決定した状態で旦那が帰宅。私はのんきにぐうぐう寝ています。


 どうやら旦那は仕事中に、何を作ろうか、何が作れるだろうかとあれこれ考えていたようでした。彼は常日頃買い出しに関わっているので、冷蔵庫に何が入っているかなど、だいたいのことは頭に入っています。


「寒い寒いって言ってたから、温まるものが良いだろうな。とすると、鍋……? いや、明日の朝はパンだから、おじやもラーメンもアウト(宇部家では鍋の翌朝はそれを使ったおじややリゾット、ラーメンと決まっている)だしなぁ」


「ピコーン!)よし、鍋一杯にスープを作れば良いんだ! それなら明日のパンにも合うし! 確かこないだプチトマトを買ったんだよな。ホールトマトを買って来て、その中にプチトマトを刻んで入れて、ミネストローネとかどうだろう。玉ねぎもピーマンもあったし、それも刻んで入れて、きのこもそこに入れれば良いし。肉はウインナーがあるしな! それだ!」


「それじゃあご飯はどうしよう。まさかスープに白飯だけってのもなぁ。だけどスープで食材をたくさん使うし、ここにまたメインで肉料理ってのもなぁ。だったらご飯だけで食べられる感じのが良いかな。そうだ、ドリアにしよう! ご飯を炊く時にコンソメを入れて、それで(私の知ってるドリアと何か違う気が)……」


 とまぁ、こんな感じのことを考えて帰宅したそうです。


 で、まずは冷蔵庫のチェック。よしよし、このきのこだな、と食材を確認します。と、ここで旦那ははて、と思ったそうです。


「この鶏団子は何だ。それにこのうどんは……? 明日の夜ご飯用か? 鍋でも作るのかな? いや、明日は斜向かいのおばあちゃんのクリスマスお茶会に呼ばれてるから、ささっと食べられるものにする予定だし……。ここには温めるだけのサバ味噌もあるぞ? えっ? 朝ご飯か? いや、明日の朝はパンだし……これは一体……?!」


 そう、私は、旦那がまさかそこまで考えてくれているとは思わず、使いかけのきのこを使って鶏団子入りのおうどんを作ってもらう気だったのです。鶏団子とおうどんはそのためのもの。サバ味噌は「えー、これ便利じゃん、買っとこ!」とノリで買っただけのやつです。


 もう何が何だかわからなくなった旦那は、恐る恐る寝室へとやってきました。起こしてごめん、と申し訳なさそうでしたが、いやもう全然起こしてくださいな。


旦那「夜ご飯なんだけどさ」

宇部「ああ、そうそう。おうどん作ってもらおうと思って、色々買っといたんだ。お願いします」

旦那「おうどん!」

宇部「きのことさ、あと鶏団子入れる感じでお願いします」

旦那「了解!(何だ、めっちゃ簡単だったな)」


 で、食べた後に、「実は今日さ……」と上記のメニューを打ち明けられたと、そういうわけです。いや、申し訳ないことをしました。今度作ってもらうことにします。

 

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