第782話 相容れないところ

 長年、っていうほど長年でもないんですけど、旦那とはお付き合い期間も含めて約14年一緒にいるわけです。お付き合いと同時にほぼ同棲していた上、職場も同じだったので、もう下手したら23時間くらい(うち1時間はトイレなど)一緒の空間にいるんじゃね? ってこともしばしば。


 ちなみに、旦那は私の部屋に転がり込んでいたので、旦那の部屋の大家さんが「この部屋の水道メーター、全く動いてないけど大丈夫なのかしら」と心配になり、職場の事務さんに電話をかけてきたことがあります。別に社内恋愛は禁止とかではなかったんですけど、まぁいちいち言うことでもないかな、って思ってたんですが、それがきっかけで事務さんには申告しました。


 そう、それでですよ。

 我々宇部夫妻、仲良し夫婦ということで、狭いワンルームに住んでた時も不平不満もなく過ごしておりましてですね、まぁ、おならを我慢するのだけは辛かったですけど。ただ、う〇こは普通にしてましたね。それは恥ずかしくないんですよ。固体はOK。だって見えないところ(トイレ)で出すわけですし。


 だからいざ結婚ってなってファミリー用の物件に引っ越した時、何が違和感って、旦那が他の部屋にいる、という状況なんですね。といっても、旦那が寝室で寝てて、私が台所の方にいる、ってだけなんですけど。だってほら、数日前までは、食う寝るところがすべて一部屋でしたからね。どんな時でもすぐそばにいるわけですよ。


 その頃はもちろんカクヨムもなかったですし、小説も書いてませんから、秘密なんてございませんので、もうフルオープンですよ、おなら以外は。だから、別に「一人になりたいなぁ」なんてこともなかったというか。向こうがどう思っていたかはわかりませんが、いま現在も結局同じ部屋(居間)で過ごしている(エアコンがここにしかないというのもある)んで、たぶんそこまで不満はないんじゃないかと思われます。


 さて、そんな仲良し夫婦の我々ですけども、数ヶ月前にですね、旦那と会話をしていて、こんなことを言われたのです。


「その点については相容れない」と。


 そりゃあもちろん夫婦ったって他人ですからね。そういう部分はあってしかるべきなんですよ。ただ、よくよく考えてみたら、いままでそんなことって全然なかったな、って。幸いなことに、例えば育った環境が違い過ぎて、物事の許せる/許せないの基準が全然違うとか(ポイ捨てOKとか、咥えたばこはありかとか)、そういうのもなかったんですよ。子育てについてもほぼほぼ同じ考えだったので、そういうので衝突したこともなかったですし。金銭感覚とかもね、そこまで大幅に違うわけでもないですし。


 けれども、その一点だけは。

 その一点だけは、俺は松清子と相容れないんだ、と。


 うまい棒ね。


 わかります? 一本10円の駄菓子ですよ。

 私、これが別にめちゃくちゃ好きってわけではないんですけど、たまに無性に食べたくなる時があるんですよ。それもめんたい味(紫色のパッケージ)のみ。他の味には浮気しません。私は何だって一途なんだ(噓)。


 それで、たまに大量に(30本くらい)どかーっと買って、毎日2本ずつ(一日に食べて良いのは2本までと決めている)食べるのです。


 が。


宇部「やっぱりうまい棒はさ、2本連続で食べるものだよね」

旦那「えっ、2本? 連続で?!」

宇部「そう。1本じゃ足りないじゃん。だって大人だよ? 身体の大きさが違うんだから」


 と、そんな会話をしてですね。


旦那「いや、俺は1本で良い。2本連続では食えない」

宇部「待ってよ。ポテチなら1袋全部食べるのに、どうしてうまい棒は1本だけなの?」

旦那「ポテチは食える。うまい棒は無理」

宇部「嘘だ! イケるって」

旦那「いや、厳しい。もうこの点に関しては松清子とは相容れない」

宇部「マジかよ!」


 もちろんここから喧嘩に発展する、なんてことはなかったわけですが、これまで一緒に暮らしてきて初めて相容れなかったのがうまい棒の摂取量だった、っていう。ちょっと衝撃でしたね。

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