第538話 誕生日レポート

 8月最大のイベントって何かご存知ですか? といっても、もちろん宇部家限定の話ではありますが。ああ、あとはドラえもんガチ勢もですね。


 なんてったって、8月は愛すべきクズ(酷い)こと『のび太君』と、それから我が宇部家のスーパーアイドル、娘ちゃんの誕生日なのです!


 他のご家庭がどんな感じなのかはもちろんわからない(何せママ友がリアルで0)のですが、宇部家の場合、子ども達の誕生日は、


(息子の場合)

宇部「あー、いまごろ半狂乱で髪を振り乱してたなぁ」

旦那「いきなり帝王切開ってなったから慌てて実家に電話したんだよなぁ」

姑さん「○○(旦那)から電話が来た時、もう倒れるかと思ったわ!」


(娘の場合)

宇部「いやー、予定帝王切開だったから特に慌てることもなかったけど、この後腹切られるんだーって冷静に考えると逆に怖かったなぁ」

旦那「確かに娘ちゃんの時は全然慌てなかったなぁ」

姑さん「ねぇ! もう何時頃生まれたかも覚えてないわ! あっはっは!」


 といった感じで、その数年前、子ども達が生まれた時のことを思い出したりします。写真を引っ張り出したり、動画を見たり。そんで、皆で集まってワイワイご飯を食べて、ケーキを食べて、プレゼントもらって――っていう、まぁ、スタンダードなお誕生会をするわけです。


 普段からスーパー目立ちたがりの娘ちゃんですから、今日の主役は私だと、もう朝から絶好調です。おはようのあいさつもそこそこに、


「ママ、わたし、今日で5さいのおねえさんなの?」

「そうだよ、娘ちゃん。今日で5歳なんだよ、おめでとう」


 歓喜のあまり、どすどすと足を踏み鳴らしています。えっ、お前のイメージする5歳のお姉さんってそんな感じなの? 四股踏む感じなの? 


 そんな四股踏み系女子・娘ちゃんは、今年の誕生日にプリキュアの衣装が欲しいと言いまして。さすがに宇部さんが作れるのはバッグとかポーチどまりですから、衣装なんて作れるわけもなく、買いに行きましたよね。旦那が。もうね、目ん玉飛び出るかと思いましたよ。っけぇの。3000円くらいかな? って思ったらね、その倍以上したみたいで。おいマジかよ。


 というわけで、今期のプリキュア、『キュアアース(追加戦士、色は紫)』となった娘ちゃんは、狂ったようにシャッターを切る私のためにさまざまなポーズをとってくれました。どう考えても娘の性格的には桃キュア(主役。大抵一番元気いっぱいでトラブルメイカーっぽい)だと思うんですけど、何かこう……青キュア(清楚系)とか、紫キュア(ミステリアス路線)が好きなんですよ。まぁ私もどちらかというとそういう元気いっぱいキャラよりは、清楚系とかミステリアス路線の方が好きなんですけど、いや、娘よ、お前のそのぐいぐい行く感じ、完全に桃キュアだぜ?


 なんて思いつつも、とにかくもうそのキュア娘が可愛くてですね、パシャパシャやっておりましたら――、


 息子はね、その時、一人黙々と何かを書いてたんですけど、どうやらそれが書きあがったみたいでですね、それをサッと旦那に渡してきたんですよ。


 しまった! 娘ばっかり構ってたからちょっとすねちゃったかも! 抗議の手紙か!?


 背中にちょっと嫌な汗をかいておりますと、その紙を見た旦那が爆笑してるんですね。そんで、その紙を「ちょっと読んでみ、すごいから」と渡してくるのです。


 何、一体どんなすごいことが書かれているんだ?! と思いながら、それを見てみますと……、


『すごいおばあちゃん新聞』


 もうタイトルからしてすごさがあふれていました。何、すごいおばあちゃん、って。これ、ウチのおばあちゃん(お姑さん)ってこと?


 この『すごいおばあちゃん新聞』のトップニュースは、おばあちゃん(お姑さん)の二の腕が最近タプタプになってきた、というとんでもない内容でした。それが紙面の3分の2を占めておりまして、残りの3分の1は、謎のキャラクターと、そのキャラから発せられた「専用アプリをダウンロード!」という吹き出し、そして、2次元バーコードのつもりなんだろう、ただの四角い何か。すごい。今日日、新聞もアプリなんですよ。アプリの時代なんですよ。ただ、そのただの四角いやつではダウンロードはちょっと厳しそうです。


 というわけで、娘ちゃんの誕生日は最終的に息子君の『すごいおばあちゃん新聞』に全部持っていかれたという。安定の宇部家でした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る