第203話 それがすべてだよ
親の仕事が休みの時は、保育園もお休みでして。
そんなわけで、平日のお休みの日は娘と過ごすことが多いのです。とはいえ、午前中は掃除やら洗濯やらをし、天気の良い日は一緒に買い出しに出かけ、あっという間にお昼だー、ってお昼ご飯作って食べさせたらお昼寝なんですけど。
で、お昼寝が終わる頃には息子が帰ってきて、宿題を見て、おやつ食べさせて――っていうのがまぁまぁ定番の流れなわけです。
ウチの子達は基本的に寝かしつけに親を必要としないタイプでして、夜は夜でベッドまで見送ったら「はい、おやすみー」ですし、お昼寝もベッドまで見送ったら「はい、おやすみー」なんですよ。
で、だいたい2時間お昼寝してくれるので、その間にカクヨムしたり、おやつを食べたりするわけです。束の間の自由時間……!
さて、このお昼寝なんですが、いつからか『お昼寝の時はパパとママのベッド使用OK』という謎ルールが出来てまして、広いベッドでキャッキャしながら寝るのが娘は楽しみらしいのです。まぁ、いたずらされるわけでもないし(こないだ枕に吐かれたけど)、いっか、って許可してます。寝起きにぐずることも減りましたし。母の匂いがするからかい? 大丈夫? それ良い匂いってことで良い? というのは置いときまして。
そしたら珍しく2階から泣き声が聞こえましてね。えーん、とかじゃなくて、何かこうすすり泣きみたいな。おいおい真っ昼間から幽霊? 違うな、ウチの座敷わらしか。ってことでおーよしよししたわけなんですけど、その日の夜ですわ。
夕飯を食べ終えた後、娘が旦那にすりすりしながら甘えた声を出してるわけですよ
「わたしきょうねー、お昼寝してたんだけどねー、おきちゃってねー、寂しくなって泣いちゃってたらねー、ママが来てくれてねー、どうしたのって聞いてくれたんだけどー、そのこと聞いたー?」
って。
そしたら旦那も「えっ、何のこと?」って私に聞いてきますよ。ここから何かすごい話に発展するの? って。いや、「ママ、ちゃんと言ってくれたー?」って娘もこっち見てるけども。
いやいや、それがすべてだよ。
そこからの話なんて下に降りてビスケット食べてお茶を飲みました、めでたしめでたし、で〆だよ? その報告いる?! 確かにそのビスケットは旦那の好物のやつだけれども、言った方が良かった!? ごめんね? パパのアスパラガスビスケット食べちゃって!
だからね、言ってやりましたとも「言ってないけど?」って。だって、いまあなた自分で全部言ったからね?
そしたら、もー仕方ないなーって、またおんなじ説明するわけですよ。旦那も一応ちゃんと聞きますよね。もしかしたら私的にはアレがすべてだと思ってても、娘の方では違うかもしれない。本当はもっと早く来てほしかったとか、そもそもママと一緒に寝たかったとか、そういうのがあるかもしれない。愛娘からのSOSかもしれない! そんな気持ちで聞いたわけです。
「~でねー、ママが来てくれてねー、どうしたのって聞いてくれたのー」
「うんうん、そうかそうか(よし、最後まで聞いたぞ。さぁ、続きは……?)。それで? どうしたの、娘ちゃん……(ドキドキ」
緊張が走りますよ。
何せ、普段似たようなことがあってもこんな風に言いませんから。だけど今日これを言ったってことは、何かあるってことですから。逃すな、我が子のSOS!
「えー? あとはなんもないけど?」
「えっ、ないの?」
「ないよー? わたしねぇ、お昼寝してたのにおきちゃったの。それで泣いてたらママが来てくれたの」
「うん、そこはいま聞いたよ。えっ、それだけ? ほんとに?」
「うん!」
うん! じゃねぇわ!
無駄にハラハラしたわ!!
お前付き合いたての彼女かよ!
一から十まで私のことを知って&あなたのことも教えてね、って、付き合いたての彼女かよ!
今日ねあんなことがあってねこんなことがあってねってこれといったオチもない一日の出来事をすべて報告するタイプの女に仕上がったらどうしようって、母は心配しています。
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