第351話ボロ家
女について道を進む。鑑定での確認も当然行う、職人としてレベルの高いスキルを持っていることからそこそこの職人である事は嘘では無い様だ。
路地を奥へ奥へと進む、景色もどんどん整備された物からボロボロの物になりぎりぎりスラムとまでは言わない程度の風景になってきている。
「もうすぐ着くよ」
「アンタは腕の良い職人なんだよな? なら、何故こんな所に住んでいる? 普通なら良い立地の場所を求める物だと思うのだが」
「な~にアタイは自分の商品を卸す所を決めてあるからね、別に良い所に住む必要は無いのさ。代わりと言っちゃなんだけど、土地が安い分設備と防衛システムは万全だよ」
なるほど、そういう考え方もあるのか。
「ささ、ここがアタイの家さ、見た目はこんなんだが、入ればわかるよ」
中に入ってみると外見どおりの内装だ。だが、部屋に鍵をすると床に無造作に置かれている縄を引く。すると地下室への扉が開いた。
外見は完全にカモフラージュする為のものか。俺が人の事を言えた立場ではないが用心深いのだろう。
「当然この事は内密に頼むよ」
「どんな立場なんだよアンタ」
「さぁね、秘密だよ」
「まぁいいさ、そのとと様とやらは何処だ?」
進む先は本当に厳重だ。一目見ただけではそこに扉があるようには見えないし、ロジックを理解してなければあける事は非常に困難だろう。ゲームのダンジョンで謎解きを見てる気分だ。暮らす分には面倒以外の何物でも無いだろうに。
「最後に一つだけ聞かせてくれ、何故俺をここに連れて来る気になった。この生活に向かない場所は自身の工房もしくは親父を守る為の物だと勝手に思ってるが、初対面の俺を連れて来るのはどうにも理解できない」
「なに、簡単な事よ。おっと、その前にだ名前を教えておくれよ。アタイはショルさね」
「俺はダイスだ、妙なタイミングで名前を聞くもんだな」
「名前を教え合う行為は縁を繋ぐ行為だからねぇ。それじゃ本題に行こうかねぇ。ダイスの言うここが守るのはどちらも正解さね。だけどね、言い辛いからお前さんと呼ばせて貰うよ。お前さんの作品はここで作る物より上さね、ここで得る物なんて無いだろう?」
「流石にそれは言いすぎじゃないのか?」
「そんな事はないさね。アレはそれだけの出来さ。次にトト様の件で信用したのはアタイの同類か近い何かだと感じたからだよ。アタイは幼い頃に傷ついた精霊を傷が癒えるまで匿った時に少し好意と言って良いのかね。お前さんからはその比じゃない寵愛を感じるよ。今までに同類からは似たような事を言われた事があるんじゃないのかい?」
あるな、特にエルフなんかはその傾向が強い。
「そういう意味では同類なのかもな、それが信頼に値するかは疑問だが」
「さて、着いたよ。トト様を見てやってくんな」
またしても分かり辛い装置を使い扉を開く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます