第290話月夜の会話
何時の間にか雲は晴れ、月が出ている。まるでこの男を照らすかの如くだ。しかし、どうする?正直言えば目撃者は皆無で終わらせたかった。
「殺気立っているな?良い、許す。貴様の秘術なのであろう。だが、我にも貴様に問いたださねばならない事がある」
なんか勝手に語り出したんだが。とりあえず喋らせとくか。判断材料は多い方が良い。
「その秘術に似た物を我は知っている。この間、潰えた我らを力でまとめた小僧のそれだ。秘術を寄越せなどとは言わん。貴様が知る限りで良い。人間の領域へ侵攻しようとしていたあの小僧はどのように潰えた?」
「それを知ってどうする?」
「人間の出方が知りたいだけだ。我一族は向こう側にもいてな。基本的に不可侵。多少の友好があった。境界の領主とは血は繫がっている訳だしな」
吸血鬼の一族って事か。元々はそれなりの距離を取りながら人と魔族の摩擦を抑えていたのだろう。転生者の魔族に実権を取られてそれも崩れたってか。本当に碌な事をしやがらねぇ。
「人間側の頭のおかしな魔術師に拠点ごと吹き飛ばされたよ。お前の血族とやらは今でも辺境伯として健在だ。詳しくはそれに聞けば良いのではないか?」
「それが出来れば苦労はしない。一度失った物はそう簡単には取り戻せはしない。道理であろう?」
「然りだな。その機会をお前に与えればこの面倒な問答をしなくて良い。違うか?」
「ほぅ、当てがあるのだな」
「あるとも。しかし、俺は商人だ。後は分かるな?」
「面白い、不遜であるが許す」
「当然であるが時を貰うぞ? 向こうとて辺境伯、そうホイホイと都合は付かん」
「よかろう。10日後我はこの時間にここに来る。その時までに向こうの日時を決めるが良い。成功報酬は期待するが良い」
「我は当初の目的を果たすとしよう。加護を受けた人間よ、頼んだぞ」
それだけ言うと凄まじい速さで飛び去った。方向は打ち漏らしが逃げた方向だ。森で吸血鬼に追われるとか、まさにゴシックホラーである。
俺も帰るとするか。始末を付けたい案件が多すぎる。加護?
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