第271話やるべき事

「当然修練さ、ダイス君は強い。だけどその強さは特殊だよね? 水準が高い敵が出て、更に今回のような頼みの切り札の効果が薄い相手だと正直厳しい。予想するに、魔術適性が高そうな相手に初手からその切り札を切って返り討ち。違うかな」



 帰す言葉も無いくらい正解だ。俺は黙って頷く。



「ダイス君の冷静さが足らなかったのは間違いないね。君はあの土地の事になるとその辺が危うい。そこは自覚するべきだ。もし、魔術ありでの話ならまだ可能性はあった」



「確かに、事を急ぎすぎた。慎重さに欠けた」



 せめてステータスを見るだけでも全然違っただろうに。反省すべきだな。




 ルイはベッドに腰を下ろし、俺の頭を撫でる。励ましてるつもりなのかも知れないが、その見た目は止めて欲しい。そもそも俺も見た目こそ若くなってはいるが、いいおっさんなのだ。是非止めていただきたい。



「お互い実年齢を考えるべきだ。恥ずかしい事この上ない」



「確かに凄いシュールな絵になってるだろうね。では続きと行こう」




「今回の一番の敗因はやはり吟遊詩人ちゃんの部族のあり方だね。人間が原因であり方を変容させたというのが正解だけどね。奴隷狩りはエルフの魔術の精度の高さと空間把握能力の高さをどう攻略するか考え、魔術を封じる、もしくは枯渇させる、他にもあるだろうけども大きく成果を上げたのはこの二つだそうだよ」



「じゃあ、エルフはどうしたか?普通のエルフは固まって集落という防衛陣を敷き、守りを固めた。でも吟遊詩人ちゃんの部族は違った。その弱点を克服しようとしたんだよ。魔力枯渇状態での戦闘訓練。しかも、魔力濃度が極端に低い土地をわざわざ探し出してまでの徹底のしよう」




「ダイス君が一人でやっていた修練の下位互換と言いたい所だけどそうとは言い切れない。何故だろうね?」



 話の全容がようやく見えてきた。



「確かに環境としては俺の方が理想的だろうが、相手のいない武術の修練だけしてたんじゃな」



「そういう事だね。だからさ。ダイス君には吟遊詩人ちゃんの里まで行って鍛錬してきて貰おうと思うんだ。当然吟遊詩人ちゃんも了承済みだよ」



「ありがとうございます」



 ただ素直に感謝を述べた。俺に必要なことだという事はずっと前から分かっていたからだ。



「これは君に師として何も教える事ができない事へのせめてもの償いだよ気にしなくて良い。こちらでの顔見せだけ済ましたら行ってくると良い」



 そんな事気にしなくて良いのに。

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