第223話追跡者

 会社的に社員に休みを与えるのはパフォーマンスを上げる意味合いもあると思う。長期休暇なんかを与える事もアメリカなんかでは結構あるそうだ。



 さて何故こんな話をしているかと言うと。現在逃走中である。なにからか?教国の衛兵達からである。正直疲労困憊、注意散漫な状態で忍び込む場所ではなかった。



 敷地から逃げ出す事は容易だった。しかし、どうしても一人振り切れない。



 仕方ない。あしらってから再び逃げるとしよう。



 俺は止まって振り返る。相手も一定の距離まで来て構えを取る。



「あら?随分疲れてるのね。目のクマが酷いわよ」女が相手か、面倒だ。まずは確認を・・・出来ない。



 一瞬で認識を改める事になった。こいつはやばい奴だ。



「見逃してくれると助かるんだがね。ぼーとしててまずい場所に入った事は認めるさ。だが、いくらなんでも大げさすぎるだろう。別に忍び込んだ訳でもないんだぜ」



「そうですね。貴方は別にさしたる罪はありません。念の為記憶閲覧はさせて頂きますが」



「詳しく聞かせていただいても」距離を一定に保ちながら問う。



「簡単です。そういうスキルを持つ方に貴方の人生を見て頂き、問題なければ無罪放免です。簡単でしょう?」



「それは困りますな。知識は財産ってね、俺にとっては死活問題だ。しょうがねぇが押し通るか」



「構いませんよ。死体からでも記憶は抜き取れますから」



 ぞっとしねぇなこいつ。空間庫から武器を取り出す。刀を模した自作武器と銃だ。



「刀と銃ですか。ますます記憶が欲しいですね」



 この女、物騒じゃなければ凄い可愛いのに。見た目だけならどストライク。まぁこの流れだと殺すか殺されるかだからフラグなんてもんは立ちそうにない。



 さて撃ちこみますか。銃を構えるも、目の前には女。早すぎる。十分に間合いは空けた物のこの女には十分近接射程だったようだ。



 何とか初撃はかわしたが銃はお釈迦。



「あんたの宗教は見目麗しい女性程碌でなしなのか?」



「見目麗しいなんて、褒めても何にもでませんよ。それにしても良く捌きますね。なんか達人って感じでお兄さんもカッコいいですよ」



 会話だけ聞けば平和だが。俺は山刀ってのかマチェットで良いのだろうか?で襲われながらの会話だ。




「それでは厄介なのでここからは魔術禁止で」



 その言葉と同時に違和感を感じた。どうやら魔術を阻害する空間の様だ。魔術と関連しないスキルは使用できそうだ。どちらにしろ旗色は悪い。捌いてはいるが、それだけだ。



 疲労も既に限界に近い。

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