第87話いや~メデタイ
「一年で金貨7枚になります」結構な値段だ。
「因みに完全に買い取った場合は?」
ワイズは書類を見ながら、難しい顔で思案する。
「参考までに、お客様が購入された場合、どう扱うおつもりでしょうか?」
「店を開こうと思うんだが、まずかったりするのか?」
「いえいえ、商人用の税を払えば何の問題もありません。値段は年間金貨2枚、住民税が金貨1枚です」
「結構安いな」
「そうですとも、この町は出入りする商人には少しお高めですが、畜産業を守る為ですから仕方ありません。その代わりにここで住む分には非常に安いのですよ」
「そうそう、買い取った場合ですが、お客様に限り、金貨250枚でいいですよ」
「安いな、理由を聞いても?」
「単純な話です。良い目を持つお客様が商人であって、尚且つ商いをする。投資と思えばこそですよ」
妙に俺の評価が高い。物件自体は問題は無かったし(鑑定の乱用結果)
「仲間もいますので、一人で決める訳にもいきません。今日決断を出して、明日伺わせてもらいます」
「心よりお待ちしております」
どちらにしろ、二人に相談は必要だ。空の具合からして良い時間だろう、そろそろギルドに向うか。
ギルドに付いた時既に二人は席にいた。しかし、様子がおかしい。複雑な表情を浮かべている。
「待たせたか?」
「僕達も少し前に来た所だよ」
ミルはだんまりか。
「まぁ良い。とりあえず宿は確保した。そこでその、なんとも言えない複雑そうな面の理由でも聞こうかね」
命に関わる程の事ではないだろうが、間違いなく面倒ごとだ。
一応3部屋取っていたが、とりあえず俺の部屋に集まり事情を聞いた。
聞いた。そして俺は、顔を引き攣らせながらこういった「オメデトウ」
「本当にすまん、まさかこんな事になるなんて」
「やる事やってりゃ、そりゃ出来るに決まってんだろうが。出来た事自体はめでたい。しかしだ、どうするんだよこれから?」
「この町で仕事をして、生きていこうと思う」
「何をだよ?後先少しは考えろよ。生まれてくるガキが可哀想だろうが」
・・・はぁ、大きなため息を付き「お前等今全財産でいくらある?」
「僕はギルドに金貨120と手持ちに12枚。あと装備を売れば40枚くらいにはなるはず」
「ギルドに70枚と手持ちに5枚。売れば25枚にはなると思う」
「一応提案はあるがどうする?」
「是非聞かせてください」
「今日俺は不動産屋に行ってきた。立地や建物を見て良い、物件も見つけた。値段は金貨250枚だ。お前等は200枚出せ、俺は50枚出す。それから俺はそこで前の店のような事をするつもりだ」
「お前等はそこで働いて、料理を覚えてもらう。衣食住は保障するが、給料は出さない。1年後俺は出て行く、後はお前等でどうとでもできるだろう?」
「タダ働きって」
「ミル、違うよ。ダイスさんはね、一年しかいないのに金貨50も出して。しかもあの料理を僕達に教えてくれるんだ。その価値が分からないとはいわないよね?」
「本当にごめんなさい。そして、ありがとうございます」
昼に分かれた後二人は、ミルの具合が悪いため、病院にいったらしい。そこでおめでたいお話が聞けたようだ。
こいつ等は悪い人間ではない。しかし、俺の対人運は心底悪いようだ。来年からはまた、ソロと来たもんだ・・・ルイさんにハイペースで鍛えて貰うしかないだろうな。
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