第56話平穏は続かない

 どうにも、俺は自ら自分の平穏を崩すのが好きと見える。出す量は考えて生産、販売をさせるようにしてきたが。どうやら価値が付きすぎたようだ。



 過ぎたるは猶及ばざるが如し。俺としてはそんなつもりは無かったのだが、村の行商人がやりすぎた。何が起こったかって?シロップだ。こいつはもう黄金と変わりない。



 そうなれば今まで、悪党からみれば、奴隷としての価値に黄金が付いてくる。そんな感じなのだろう。厄介なのが、その悪党が女領主の隣に領地を持つ、評判の悪い領主だという事だ。



 事を知った村長たちはすぐさま行商をやめさせ、どうするべきか相談してきた。


「少数なら金級が来ても対応できる、しかしねぇ。大群となるとお手上げだ、村人を守れない。良い案は無いかい?」




 森と共に生きるエルフに、防御策をだせと言われても。結論から言うと、かなり無理がある。なぜなら、進軍を食い止める物、壁でも堀でもいいが、その類の物が一切ないのだ。無い事はないが受けいれられるか非常に怪しい。



「村長、こう言うのはどうでしょう?」俺はとりあえず案を提示した。内容は揺り篭を囲う形で砦を作る、それに伴って、砦周辺の木を切り倒す、それだけの事だ。



「命には代えられない、クレイドルが残るなら構わない。だが、それは本当に可能なのか?」



 相手がちょっかいを出しそうってだけで、出してはいない。ならば足止めを使うまで、どうやるかって?ギルドを使えば良い。



 簡単な事だ。ギルドに優先的にシロップを卸す。ただこういうだけで、勝手にやってくれるはず。ギルドって奴は、間違っても略奪は出来ない。全ての種族が交わる組織だからだ。内部を乱す行為はしない。



 その事を説明して、スロート、ミル、レイナ、リュートにガウの元へ行って貰う事にした。念のため羊皮紙の手紙を持たせて。



 これから忙しくなる。自分で招いた厄種だ、可能な限り事を成すのが筋だもんな。

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