第73話
「あのなぁ……まぁ、気持ちは分からないでもないが、そういう大事なことは真っ先に報告しろと、あと何度お前に言ったら良いんだ?」
既に兄は諦め顔ではあるが、言うべきことは言ったとばかりに、大きくため息をついた。
確かに、オレは喜ばしいことや重要なことほど、話の最後に持っていく悪癖があって、せっかちな兄に怒られるということを、それこそ子供の頃から繰り返している。
両親や妻は特に気にも留めないので、これを咎めるのは、兄と親友のうちの1人だけ……結果的にこの癖は直らず、こんな
……さて『魔法』について、ニュースで報じられた内容だが、茨城県土浦市の荒川沖という地域にあるダンジョンで見つかったワンドが、オレの見つけたモノと同様に、こちらは【火魔法】のスキルを使えるようになる魔杖だったというものだ。
威力についても、読み上げられたニュースを聞く限りでは、恐らくは同程度。
そして、数回も使うと
目眩は……オレが検証した限りでは、MP(マジックポイント)切れ特有の症状なのだが、それについては世間的には、まだ判明していないようだ。
もちろん【鑑定】や【鍛冶】などのスキル持ちの人などは、体感的に予測がついているだろうし、遅かれ早かれ、この現象についての情報も、出回るようになるだろう。
しかし……これは秘匿しておく意義は、ほぼ無い情報だ。
せいぜいが、現状でネタスクロールと言われている、スクロール(魔)の価値が劇的に変化するというぐらいだろう。
……けっこう
この後、ダンジョンに向かう兄達に、柏木さんへの伝言を頼むことにした。
柏木さんを通じて、もし可能ならば、ダンジョン探索者協同組合からの公式声明として発表して貰うことで、スクロール(魔)の価値が見直されると同時に、少しでも『魔法』を使いこなすことに
今回のダンジョン探索で得られた戦利品のうち、その最たるものは、何と言っても『
何せ、これを使う間は誰でも【風魔法】が使用可能になるのだから、使わない手はない。
兄は【短転移】にもMP(マジックポイント)を使うので、ほどほどにして貰うにしても、父と妻には、積極的に使って貰おう。
擬似的にでも純粋な後衛役を、今のうちに体験しておくのは良いことだと思うし。
今回、得られたスクロール(魔)は全部で8つ。
オレも今後は魔法で使うことを考えて、1つ貰うことにした。
今日は積極的に魔法を多用した分、ちょっと魔力切れを起こすのが早かったので、次からは考えて使おうと思う。
他は、兄が3つに、父と妻が2つずつ。
地道な強化だが、コツコツやっていくしかない。
次に挙げるべき戦利品だが、
『
電柱のようなサイズのムチとして、オレを苦しめた触腕の誇る打撃力を、武器本来の打撃力に加えて付与する護符ということなので、オレの鎗に付けられた槌頭が、早速強化できる。
盾持ちなら、盾に付けることでシールドバッシュ(盾による殴打)も強化できそうではあるが、オレ達の中には盾持ちはいない。
父の武器を、もし【
デスサイズからも3つ目となる
オレも今日は、鎗に新しく追加された月牙の、素の攻撃力だけで戦っていたものが、明確に強化されるのは、有難い限りだ。
ヘルスコーピオンからは、耐毒のネッカチーフを。
ギガントビートルからは、腕力向上剤を。
ドーピングアイテムは他にも、一般モンスターから得た腕力向上剤が2つで、合計3つ。
幸運向上剤が2つに、持久力向上剤も2つで、敏捷向上剤は4つも得られた。
分配は、腕力向上剤がオレ以外の3人。
幸運向上剤は、父と妻。
持久力向上剤は、オレと兄。
敏捷向上剤は仲良く1つずつ……ということになった。
今回はポテンシャルオーブも5つ得られたので、オレが2つで、後は皆1つずつ。
その他に、お菓子系アイテムも多数ドロップしたが、オーブを多く貰った分、オレの割り当ては多少、減らしておいてもらうことにした。
スタミナマフィンを、父が多めに。
ストレングスクッキーは、妻が多め。
兄とオレはバランス重視……だが、父と妻に分配されるアイテムが偏る分、結果的にクイックネスゼリーやポテンシャルキャンディが多めというのが、最近は定番化しつつある。
その他にも、アジリティの指輪(敏捷上昇アクセ)や、パワーチョーカー(腕力上昇)、
午後の探索は、それなりに時間が取れるとは言え、今日は数々のニュースに目と耳とが奪われた関係で、報告会も分配会議も多少いつもより時間が長く掛かってしまった。
兄の刀のメンテナンスと、父と妻の武器の新調を、それぞれ柏木さんに頼む都合上、少しばかり慌ただしい出発になってしまっているが、とにかく気を付けて行ってきて欲しい。
オレは食後のデザートとして、すっかり定着してきた、お菓子系ドーピングアイテムを頬張りながら、バタバタと出かけていく皆を見送っていた。
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