第44話
どうも【解析者】は、聞いて答えてくれる類いのスキルでは無いようで、字面から想定するしかないのがツラいところだ。
槍術のレベル上昇……これは別にそのまんまだから良いだろう。
レベルの上昇を境に、オレの頭で考えた訳でもない技が、まるで長らく使っていた技の様に感じられるようになる感覚。
以前と同じ技でも、技の冴えとでもいうべきが全く異なり、別モノに昇華されているという実感。
これらは以前にも経験しているので、そこまでの驚きは無い(もちろん凄いことでは有るが……)。
自習も理解できる。
単に自ら習うことを指す言葉なのだから、この場合は鎗の鍛練が該当したのも想像に
自得……自ら、得る……か。
それらの心得、うん。
まぁ……何となくは分かるな。
鍛練や学習した場合の習熟……熟練度上昇率の向上といったところだろう。
【解析者】のスキル能力が更に拡張と補強されたと思っておけば良さそうだ。
もともと努力するのは嫌いでは無いし、自分が凡才なのも痛いほど理解している。
凡庸な才能しか持たないなら、努力するのは当然だと思っているので、今さら苦にもならない。
努力したから必ずしも報われるなんて思ってもいなかったが、思いがけない巡り合わせで、努力の効果が保証されたのだ。
その労力を惜しむべきではないだろう。
気付いた時には、もうかなり汗だくになりながらも、
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昼食後の話し合いは、兄達の戦果報告から始まったのだが、オレが鍛練中に得たスキルについて報告し、先ほど見られてしまった醜態の弁明をしていると……
「ヒデちゃんって、昔からそういうところ有るのよね~」
妻が何を思い出しながら笑っているのか、心当たりが……いっぱい有るので、どれのことだか分からない。
料理?
日曜大工?
スノボ?
模様替え?
釣り?
マッサージ?
ゴルフ?
うーむ……やはり分からない。
「だな。良く飽きないな……ってぐらい同じゲームやってると思ったら、いつの間にか達人級になってたりとかな」
兄が言うのはアレのことか。
アレは兄に負けまくったのが悔しくて、毎日ひたすら練習したのだ。
大会にも出て、そこそこ良いところまでいった記憶がある。
「あぁ、ヒデ特訓とかな。マルセイユターンだっけか?」
父が言っているのは……マルセイユ式ルーレットのことか?
いや……クライフターン?
小さい頃は、サッカー少年だったからなぁ。
出来ない技があると、とことん練習するクセがあって、両親はそれを『ヒデ特訓』と名付けていた。
裏街道(※サッカーの技名)の特訓の時は、爺ちゃんにずっとディフェンダー役やらせちゃってたなぁ……。
「……いや、ゴメン。分かった。そろそろ時間も無いし、話し合いの続きしよう?」
どうにかこうにか、黒歴史(?)の掘り出し会になりかけた流れを断ち切り、話題を実務的な方向に戻す。
まず探索の結果として、今回の戦利品。
これの分配についてだ。
まずは、俗にいう本部鑑定から戻ってきていた謎の靴だが、これは新緑の靴という名の貴重な魔法の靴だった。
形状はブーツ。
常時、新緑のように(?)若々しい気持ちのまま探索が続けられるという、一種の精神疲労耐性の魔法が付与されたものだ。
さらに投射武器(弓、ボウガン、銃、チャクラム、ブーメランなど)の使用時に、普段の5割もの命中補正が付くらしいのだから、かなりの優れものだろう。
……まぁ、現状のオレ達の中には、投射武器の使い手が居ないのが残念なところではある。
しかし今後のことを考えれば、サブウェポンとして銃を持ったり、片手で扱える投擲武器を携行したりすることは有り得る話だし、全く不要な能力というわけでもない。
防御性能は炭素結合時のタングステン級……タングステンって何だっけ?
何かとても硬い金属だった気はするのだけど……門外漢なので、正確なところが分からない。
後で調べてみよう。
なお、自動サイズ可変は予想通り付与されていた。
これで存分に使い回せる。
今回の収穫の目玉は何と言ってもスキルブック……スキル【罠解除】の籠められた本だろう。
今回は【解析者】スキルでの成長も期待される形で、オレが得ることになった。
そして、ギガントビートルから再び得られた甲殻の護符。
これは父と妻の同時使用を基本とし、兄やオレの単独探索時は流用する。
他には……
ポテンシャルオーブとストレングスクッキーを妻が。
持久力向上剤を父が。
スタミナマフィンとポテンシャルキャンディを兄が。
オレは、何と8つものスクロール(魔)と、ポテンシャルオーブを1つ貰った。
兄達の方が浅い階層で活動しているのにも関わらず、モンスターの討伐数が多いからだろうか?
それともやはり、元々オレより兄の方が運が良いからなのか、ドロップアイテムの数や質で並ばれている気がする。
ここは気合いを入れて、第4層の攻略を開始しなきゃだなぁ。
デスサイズとの再戦を制し、新たな階層に挑む覚悟を胸に、オレは今日の探索に向かう。
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